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「考えるべきは良いシステムを組むだけではなく、良いチームを組み、全チームの総力を最大化すること」張志鋒(株式会社LOB)~Forkwellエンジニア成分研究所

優れたエンジニアには、国籍問わず共通項があります

――張さんはずっと日本にいらっしゃるんですか?

張 日本に来たのは2010年で、日本の大学院に入りました。もともと中国では金融まわりの勉強をし、日本では金融資産のポートフォリオ最適化や機械学習の勉強をしました。

卒業後はNHN Playartに入社しました。名前はあまり知られていないのですが、LINEツムツムを開発した会社です。ただ、自分にはゲーム業界があまり合わないことに気付き、前職のアドテクの会社に入りまして。そこから2年間、マーケティングプラットフォームの開発経験を積んだ後、昨年の9月にLOBに入社して今に至ります。

――早速、簡潔に教えていただいてありがとうございます。しかし、日本語めちゃくちゃお上手ですね。これ、僕らにしてみれば英語でインタビューを受けるみたいなものですよね。

張 ええ、英語でもいいですよ(笑)。

――やめておきます(笑)。LOBさんではどういったお仕事をされているのか、教えていただけますでしょうか。

張 SSP(サプライサイド・プラットフォーム)という、メディア向けのプラットフォーム開発に関わっています。役職としてはテックリードで、開発部門も含めほぼフルスタックですね。メインはサーバーサイドですが、最近は若手社員の育成も担当していますし、色々やっていますね。

――いま、何人くらいのチームなんですか?

張 サーバー側は5人で、SSP全体では12名くらいです。おかげさまで最近は新しいメンバーがジョインしてくれるペースも早いので、流動的ですが、その時の開発状況に合わせてチームを編成しています。

――LOBさんのオフィスは楽天本社内にありますが、楽天さんといえば多国籍企業の印象があります。国籍の構成で言うと、どんな人たちがいるんですか?

張 LOBの中で言うと僕を含めて中国人が3名いまして、全社で37人います。(※本インタビュー後、新たに3名の外国籍社員の入社が決定)

――なるほど、中国人が3名でそれ以外は日本人なんですね。業務上は日本語を使われるのでしょうか?

張 私は仕事でアメリカとかインドなど多国籍の人とやりとりをするのが多いので、英語がメインですね。

――前回出演いただいた中村さんとお話しした時に「日本人なので海外との連携に難しさを感じる」という話がありましたが、張さんもそういう部分は感じますか?

張 多少ありますね。私も日本に来て8年が経つので、日本のワークスタイルに慣れてしまったところがあります。ただ、優秀なエンジニアの働き方ってだいたい一緒だと思うんです。日本人だから外国人だからという差は感じないですね。

――なるほど。優秀なエンジニアの働き方というのは、どんな共通点があるものなのですか?

張 例えば、いま日本だと「働き方改革」というワードが注目されていますが、優秀なエンジニアは最初から効率性を追求して仕事を進めますよね。通勤に時間がかかってしまうならリモートワークとか。とにかく効率性を追求していくことが大事だと思っています。

――なるほど。「効率よく働こう」というところは、どんなバックグラウンドがあっても一緒だと。

張 そうです。

――ありがとうございます。話は変わりますが、現在の1日のスケジュールは、どんな感じになるんですか?

張 その日の業務にもよりますけど、まず、タスクのチェックやレビューから1日が始まります。その後、同じチームのメンバーが集まってスクラムをやります。進捗共有や、その日のタスクの確認ですね。その他には自分がテックスペック(仕様書の様なもの)を作っている関係で、そのミーティングが朝に入ったりもします。

午後は「ミーティング」の時間と、「集中コーディング」の時間を明確に分けるよう心がけています。書くべきタスクがあれば「集中コーディング」の時間で消化できるようスケジュールを組んでいます。

私はアメリカとのやり取りが多いので、必然的に朝は早めに出勤していますね。最近は朝8時に出社し、その分夜は早めに帰っています。今はそれが一番効率よくプロジェクトを推進させられる働き方なので。

――日本と海外のスタッフ両方とのやり取りをするという事は、相対的に日本のメンバーが張さんの時間を確保するのが難しくなったりするのでは?

張 アメリカ以外にもパリの方とも連携しているのですが、向こうの方が夜中に働いてミーティングする事もあるので、日本サイドは苦もなく働けます(笑)。やはりミーティングじゃないと解決しづらい問題もありますし、グローバル開発の難しさですね。

――いやー、グローバル企業ならではですね。

張 そうですね、私も初めての経験ですけど(笑)。

「最適化の知識が大事だな」と感じました

――張さんが今の仕事で一番力をかけている所は何ですか?

張 効率とバランスですね。朝早く出社するなら夜早めに帰る、そうじゃないと勉強する時間があまり取れないですし、ゆっくりと考える時間を確保したいので。自分が今日一日何をやったのか、振り返る時間がないと効率よく仕事を回すことはできないと思っています。
前職では残業ばかりやった時期がありましたが、そうすると自分が進んでいる方向を見失ってしまう、ということはありました。考える時間を必ず用意して、効率を改善することを心がけています。

――効率化のために取り入れた施策はありますか?

張 自動化できる部分は、仕事でやらないようにしています。例えばの話で、楽天は無料のカフェテリアがあるのはご存知だと思いますが、日々変わるメニュー全てにカロリーとかが書いてあって、僕はそれを見ながら、何を食べようか決めるんですね。メニューを見るためには、本来は社内のシステムに入って確認しなくてはいけないのですが、毎日のその時間が勿体ないのでMicrosoftの「Flow」というサービスを使い、自動でSlackでメニューを送ってもらうようにしています。これは一例ですけど、自動化できることはなるべく自動化していますね。

――カフェテリアのメニュー表示を自動化!それはすごい徹底ぶりですね。なるほど、そうやって判断リソースを確保するのですね。

張 そうですね。エンジニアリングでも開発する時にできるだけ手戻りをしないやり方をモニターし、長期スパンで一番効率の良い方法を目指しています。

――なるほど。ありがとうございます。それではこれまでのご経歴について詳しく伺いたいのですが、大学を卒業されてから日本にいらっしゃったんですよね。

張 そうです。

――日本に来てからLOBに入社されるまでには何社くらい経験されたんですか?

張 日本の大学に来たときは修士でしたので、その他の期間でも3社のスタートアップを経験しています。最後の1社ではテックの責任者を務めました。大学卒業以降は、NHN Playart→ジーニー→LOBという流れです。インターンシップで3社、卒業してから3社なので、経験自体は6社ですね。

――大学ではどんなことをやられていたんですか?

張 大学では金融まわりの研究を行なっていました。金融取引の資格も持っています。当時はポートフォリオを最適化する研究を行なっていたので、修士ではその辺を突き詰めたいと思い日本に来て勉強しました。今の仕事は広告手法の一つに「RTB(リアルタイムビッディング)」というものがあるのですが、当時の研究内容が役立っています。

――研究に打ち込みつつ、インターンシップで色々な企業に在籍されていたんですね。

張 そうです、当時はWebサービスを提供する企業1社と、ゲーム企業2社でインターンをやっていました。まだUnityが黎明期で、2.0くらいから技術開拓をやってましたね。面白かったのですが、プロダクト面でいいゲームを作る才能は無いな、と感じました。

その後にジーニーに入り、マーケティングオートメーションの「MAJIN」など壮大なプロジェクトに入らせていただき、データまわりの仕事をいろいろやらせていただきましたね。

――就職活動の時には、本国(中国)に帰る選択肢も含め、たくさんのオファーがあったと思います。最初の企業を選ばれたのにはどういう理由があったんですか?

張 当時は金融系のIT企業に入りたかったんですけど、日本では当時FinTechが進んでいなかったので、技術を活かして金融に入るのが難しかったんですね。伝統的な日本企業に根付く企業文化は自分には向いていないと感じたので、ゲーム開発の知識を活かせるNHN Playartに入社しました。会社が創るプロダクトに対して、自分自身が共感できるかどうかという点は当時から大切にしています。

――最初の会社ではどういった事をされていたのですか?

張 NHN Playartでは、フルスタックでした。HTML5とWebGLを活かしたスマホゲームで、サーバーサイドとフロントの両方をやりました。韓国の関連会社では技術の研究所みたいなものがあり、その技術を活かして勉強出来ましたが、NHN Playartは日本法人ということもあってコミュニケーションコストが高かったですね。あまり技術を活かす事はできなかったので転職しました。

――それで、2社目のジーニーさんに。ここではどういったお仕事をされていたのですか?

張 ジーニー入社当初は、サーバーサイドのエンジニアとしてでしたが、結局フルスタックになりました(笑)。新規プロダクトの立ち上げなのでフルスタックができる人の方が重宝されるんです。それで、「MAJIN」というマーケティングオートメーションサービスの新規の立ち上げに関わり、リーダーを務めていました。

――今までの経験で最も自分の役に立っているものはありますか?

張 「最適化に対する知見は大事だな」と感じましたね。『確率思考 不確かな未来から利益を生みだす』という本があるんですがこれは勉強になりました。一つのタスクをこなすのにも、確率という考え方を取り込むべきだと。筆者はポーカーの世界で成功した人物で、最善の結果に到達するための思考法などが分かりやすく書かれています。

最適化は近年、機械学習などでよく使われるのですが、目標に対して一番良い結果を出すための方法を、どのように選ぶかを考えます。そのためには定義づけが大事です。例えば1年後の売り上げを向上させたい、という目標がある場合、どのようにリソースをかけ、どういう戦略を取ればいいか考えますよね。そのときに、リソースや戦略の組み合わせを考える方法が最適化問題です。リソースはこれだけある、使える戦略はこれ、いつまでに達成しないといけない、というのをあらかじめ定義しておけば、達成方法を細かく分けられるんですね。そうすれば、どう達成するかという筋道をいくつも考えることができます。そうすると、目標達成までの最適なルートを決めることができるのです。

――意思決定の効率を高めるに当たってどういった書籍で勉強されたのですか?

張 学校の教科書で(笑)。もちろん、いろいろ本はあったのですけど、先に述べた本はお勧めです。

技術は大事です。ビル・ゲイツも学部2年で論文を出しています

――ありがとうございます。逆に、一番大変だった経験はどういったものがありましたか?

張 前職で初めてリーダーを務めた時に、「残業すれば何とかなる」と思ってがむしゃらに仕事をしていました。でも、それだと良い仕事はできませんでした。立ち止まって自分が進むべき方向を考える時間が取れず、間違った方向に進んでしまった事がありました。正確にいうと、今でも間違った方向に進んでしまうときはあるのですが、立ち止まる時間を意識的に作っているので素早く軌道修正を行うことができるんです。それができていなかった当時は「自分は何をやってるんだ?」と自分を責め、リード力が無いのではと悩んだ時もありました。

そこでの学びは、「自分が考えるべきは良いシステムを組むことだけではなく、良いチームを組み、全チームの総力を最大化することだ」と気付けたことですね。例えば、短期の問題を解決するには残業という選択肢もあるかと思いますが、長期的にみるとエンジニア一人当たりの力を上げるのが大事で。自分の役割はエンジニアとしてだけでなくリーダーとしての役目であり、メンバーの底上げをすることが大事だと思って取り組みをしていました。今、LOBのチーム内で勉強会などの取り組みを始めているのですが、それもチーム全体がいい方向に進むようにするためです。

――上手くいかないな、という時はコミュニケーションの問題はなかったんですか?

張 少なからずあったと思います。ただ、チームが上手くいっていない時はコミュニケーションに問題があると安易に考えがちですが、その結論を出すのは問題点の洗い出しをしっかり行った後です。

――なるほど。そういった意味でも、一度立ち止まりチームの状況を冷静に捉えることは重要なんですね。話は変わりますが、張さんが尊敬する人ってどのような方ですか?

張 ビル・ゲイツは尊敬しています。エンジニアとしても凄いですが、それだけではなくビジネス的なスキルを持っている人には純粋にすごいなと感じますね。

――張さんは、今後どんなエンジニアになりたいと思っていますか?

張 専門性とリード力を兼ね揃えたエンジニアになりたいです。何をやるにも専門知識は大事だと思っていて、それが自分の武器になると思います。また、今のご時世、IT企業界隈でイケてる人になるには突出した専門性とリード力の両方がないとダメですよね。今のGAFAのCEO達も専門能力がかなり高いですし、あんまり知られていないのですが、ビル・ゲイツでも学部2年生の時に当時の指導教官とアルゴリズムに関する学術論文を出してるんですよね。もちろんそれだけではなくて問題を解決しようとする取り組み、人を巻き込む力も大事だと思います。

――ありがとうございます。業務を行う上で大事にしているモットーや好きな言葉あれば教えてください。

張 「最適化問題として定義しろ」という事です。理由は先ほど述べましたが、全体が何の問題を取り組んでいるのか分からないと前に進まないですし、自分が何をやりたいのか、というのをチームに定義する、考えるというのが大事なんだと。

――ご自身の成長の為に日々行っている事はありますか?

張 本を読む事が多いと思います。「積ん読」の本が500冊とかあります。

――自宅に置いてるのですか?

張 全部電子版です。どこでも読めますからね。本を読むことは大事だと思います。ウェブ記事でも最新情報を読みますが知識の密度が低いのでお勧めはしません。また、論文を読む事もあります。読み込むのには時間がかかりますが。

――本を読むのは技術書だったりですか?

張 技術書もそうですし、先程の「確率思考」のような本なんかも読みます。日本語、英語、中国語、全てで。英語の場合、中国語よりも読む速度は遅くなりますが、入ってくる知識の量は、比較的英語の方が濃かったりするので、英語で読む方が多いですね。「確率思考」の本は英語で読みました。他には小説も読みます。

会社愛よりは「事業愛」と呼んでも良いのでは、と思います

――ここからは、張さんが働く上で大切にしていることについて、「事業内容」「仲間」「会社愛」「お金」「専門性向上」「働き方自由度」の6つの項目から合計20点になるよう、点数を振り分けていただきます。

・専門性向上:5

技術力がないとエンジニアとして成り立たないですから。その時々で流行のテーマは移り変わっていくと思いますが、ディープラーニングだったりとか。そういった流行りを深掘りするにはエンジニアとしての専門性、つまり技術力が必要なので大事にしています。

・仲間:3

仲間は大事だと思います。自分たちはチームで開発しているので、チームとして最適化することが大事です。仲間とのコミュニケーションを通じて、なによりも価値観を共有できるチームでありたいと思っています。

・お金:3

必要最低限のお金は大事だと思っています。営利企業であるからには利益を追求するのが当然であるように、我々の給料も同じことです。「お金では測れない価値」というのもは無いわけではないですが、少ないと思っています。個人的にはお金にならない事業って本当に人間の役に立つの?と感じているので、お金に還元できる仕事はしたいと思っています。

・事業内容:5

Netflixのカルチャーデックの本に書かれていたことなのですが、事業内容が魅力的じゃないと組織を一つにまとめる事はできないと思うのですよね。少なくとも私は自分の好きな事業内容じゃないと働きたくないです。逆に自分の好きな事であれば情報収集するのも楽しいですし、自分自身の成長スピードも早いんですよね。

・働き方自由度:3

難しいところですが、自分の認識では働き方というのはソリューションの一部です。一番良いゴールを目指して、エンジニアのモチベーションをどうやって上げるか、リソースをどういう具合に組み合わせるか、というのを考えた時に働き方自由度と言うのはソリューションの一部に必ず入ってくると思います。ただ、「自由」自体が目的ではないです。

・会社愛:1

「会社の前に事業」という意味で1をつけています。会社の看板だけで判断するということは絶対にしません。目的ではないですからね。みんなが同じ方向を向いている仲間が集まれば、会社愛と言うのは自然と出てくるものだと思います。会社愛よりは「事業愛」と呼んでも良いのではないかと思っています。

――何がやりたいのか、というのが先にあって、そのために会社がある、と言う考え方ですね。

張 そうです。

――自分もフリーランスなので凄く分かります。会社を作ろうという話を友達ともするんですけど、自分の場合はその友達が好きかどうか、かつ彼らと面白い事が出来そうだから会社を作るという考えです。

張 そうです、そういう認識です。

――最後に、キャリアに迷っているエンジニアの人たちにメッセージを頂けますでしょうか。

張 「本当にやりたい仕事をやってください」ですね。自分も新卒の時に、入った会社の事業をそれほど愛していないことに悩みました。仕事を、自分のやっている事を愛せないと能力を活かせないと思います。

――本質的なお話をありがとうございました。

<了>

ライター:澤山大輔


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