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私の “引き出し” を全部使う会社に出会いました(笑)神田尚紀(レインメーカー株式会社)~Forkwellエンジニア成分研究所

レインメーカー株式会社。フランシス・フォード・コッポラ監督が1997年に公開した映画と同じ名を持ち、映画と同じく弁護士事務所が出自という異色の会社です。

しかし、同社が映画と大きく異なるのは、そのミッションにおいて。映画は「雨が降るように大金を稼ぐ弁護士」という意味でしたが、レインメーカー社のミッションは<需給をマッチングして「うるおい」を生み出す>こと。恵みの雨を降らせることをモットーに掲げる、慈しみにあふれた会社です。

その中でも今回ご紹介する神田尚紀さんは、いわば「同社内の」レインメーカーと呼べる存在でしょう。WEBアプリケーション開発からペンキ塗り、ホワイトボード設置からネジ穴の切り直しまで、ジャンルにとらわれない「エンジニア」である神田さんは、社内から厚い信頼を獲得しています。

異色の会社において、異色の経歴を持つ神田さんのインタビューをご覧ください。

アプリ開発からホワイトボード設置まで

――本連載では初登場となります、まず御社について教えてください。
 
神田 弊社は、9階にあるアトム法律事務所の代表が始めた会社です。弁護士業界は競争が激しいこともあり、より多くの人に知ってもらうためにWEBメディアを重視したスタイルになりました。そこからWEB制作チームができ、2016年に独立してレインメーカー株式会社になりました。最初は法律コンテンツに特化したメディアを運営し成果をあげ、2018年にアプリケーションを開発するプロジェクトを立ち上げました。

このアプリ開発の背景には、弁護士の相談業務で都市部にいなくても手軽に電話相談ができるサービスができないか、弁護士に限らず遠隔地の方々に通話による相談サービスを提供することができないか。そして相談費用の決済も簡単にできないかというニーズから始まりました。相談依頼があるとき、事務所に来てもらう場合は良いのですが、電話相談の場合だと送金方法の説明などを伝えたりで費用をいただくのが難しいんですね。電話が終わった後からもらうのは難しいし、かといって相談の前にいただくのも。そこで、通話した時間分だけ費用が発生するアプリを作りたいという代表の弁護士が故の開発が始まったんですね。

――なるほど、そうだったんですね。それにしても、これまで本連載で100社ぐらいインタビューさせていただいていますが、弁護士事務所から派生した会社さんは初めてです。

神田 代表は弁護士の中でもエッジが効いているというか、本当にアンテナを広く張っている人物で。「こんなことした方が良いんじゃないか」というアイデアが豊富に出てくるんですね。そのアイデアを形にするために、日々仕事をしています。

――弁護士の方でTwitterをやられている方は多いですが、自分の事業をドライブさせるためにエンジニアを雇う、という方は珍しいと思います。

神田 そうですね。最初は弁護士業務にプラスアルファする事業だったんですけど、今は社会的に良いこと、どれだけ便利なものを提供していけるかを追求しています。

事業内容としては、相談される方に向けたコンテンツ配信が主体ですね。そこは揺るぎないもので、そこにアプリケーション開発が乗っかって来ている形です。この先やりたいことも幾つかあり、卵を温めている状態です。

――その中で、神田さんはどういうお仕事をされているんですか?

神田 課金型アプリケーションの開発業務を行なっています。プレイングマネージャーじゃないですけど、段取りもすれば自分でコードも書くし、よろず相談所みたいな立ち位置ですね。ホワイトボードも付けますよ、みたいな。

広報・川村由美さん 弊社のちょっとした工事は、全部神田さんが引き受けてくれるんですよ。ペンキを塗ったり、ホワイトボードを設置されたり。

神田 元々建設会社にいたので、下地があるんですね。なんでも作ります。

――なんと。WEBに限定しない、まさしくエンジニアですね!

「こんな雰囲気で、本当に大丈夫なの(笑)?」

――続いて、神田さんのご経歴を伺えればと思います。

神田 大学は建築学部を出まして、その後は鎌倉の小さな建設会社、町場のゼネコンに勤めました。木造の新築から鉄骨造まで一通り経験しましたよ。でも、会社が倒産しちゃって。「明日からどうやって飯食うんだ」となった時に、自分ができることと言ったらプログラミングぐらいでした。

なので、プログラミングを仕事にしようと思って自営業を始め、ツテをたどっていろいろな仕事をしました。会員制サイトを作ったり、物流、在庫管理、販売管理をしたり。社会福祉法人向けの情報管理システムを作ったり、ファミレスとかで使っているポスレジを1人で作って納めてメンテナンスもして。

ただ、全部1人でやると疲れますよね。24時間365日ずっと働きっぱなしで「そろそろ疲たな」と30代前半で思って。それで、取引先の一つだった社会福祉施設の情報管理システム会社に入って、マネージャーのような仕事をしてました。
 
――かなり異色の経歴ですね。レインメーカーさんに入社されたのは、いつ頃なんですか?

神田 実は2018年6月なんですよ。こんなに偉そうに話してますけど、まだまだ新米なんです(苦笑)。

――それまでのお仕事でいうと、エンジニアと言ってもWEBがメインではなかったのですね。

神田 そうですね、なんでもやってました。PCが関わることは全部です。「PCが欲しい」と言われたら作りましたね。昔は組み立て式PCが流行りましたし、PCの調子が悪いからウイルスを除去してほしいとか、事務所にネットを引きたいとか。システム開発と建設をずっと2束のわらじでやっていました。

実は、建築関連の仕事は今でもやっています。弊社は副業が認められているので、月に1回工場に行ってカステラの型枠を作ったりしています。かなり流通しているカステラなのですが、実は私が作った型で焼かれているんです(笑)。

――すごいですね。経歴を全部伺っていると、今のお仕事の話が入らなくなりそうです(笑)。そもそも入社された経緯は、どういうものだったんですか?

神田 ある方にご紹介いただいたんですが、その方がかなり風呂敷を広げていただいたそうで(苦笑)。それで「私でよければ」と入社した形ですね。システム開発に疲れた時期でもあり、建設で食って行こうと思えば食えるので、システム開発に戻るのかどうか悩んでいたところでした。

ただ、体験入社させていただいたんですが、みなさん優しいんですよね。その優しさに触れて、「もしかしたらこの会社ならまた(システム開発を)やれるかもしれない」と思ったのが大きなきっかけです。

――「優しい」とはどういう感じだったんですか?

神田 本当に優しいんですよ。トゲトゲしてないというか、ゆとりがあるんですね。笑い声が絶えないというほどではないですが、仕事の邪魔にならない本当にアットホームな空気があります。居心地がいいので、ちょっと気を抜くと居眠りしちゃうかもしれない(笑)。

――せっかくご同席されているので、広報の川村さんにもお尋ねします。神田さんがおっしゃるような御社の社風は、どういう経緯で形成されたものなんですか?

川村 スタートメンバーの人柄が理由だと思います。代表の岡野、取締役の竹澤という者がいるのですが、この2人は日頃「フラットな職場を作りたい」と言っていて、考えや感じたことを伝えやすい会社なんです。2人と、2人のところに集まったメンバーは雰囲気が柔らかくて。会社として残業ゼロにしよう、やることはきちんとやろう、でも楽しんでね、という空気をずっと体現していますね。

神田 今まで取引先のいろんな会社を見てきましたけど、異質ですよね。「本当に、こんな優しい雰囲気で大丈夫なの?」と(笑)。

――「何か裏があるんじゃないの?」と(笑)。

神田 皆裏表もなく、フランクに話せますね。代表の方針なんですけど、ツリー型構造をできるだけ取らないスタイルなんです。「できるだけ得意分野を生かしてほしい」というスター型の組織で取り組んできました。だからフットワークも軽いし、いろんなことにチャレンジできるんです。ただ若干、プロジェクトが大きくなるとタスク管理が厳しくなるので、そこだけはある程度ツリー型構造にはなりますけど。でもそれぐらいですね。

「何かあったら、神田さんに(相談しよう)」

――今後、レインメーカーさんでどんなことを実現していきたいですか?

神田 私を拾ってくれた会社に、少しでも「神田が加わってよかった」と思ってもらうことですね。なかなかうまくいかないですけど、それが直近の目標です。

あとは、会社の人たちに私をどんどん利用してほしいと思います。何か困ったら聞いてみて、引き出しを開けてほしい、なんなら全部持って行ってほしい(笑)。抽象的すぎますかね。とはいえ、理想を語っておいた方が「やらなきゃ」となるので、私はずっとこのスタイルでやっています。

――神田さんはこんな感じで謙遜なさってますが、川村さんから見ていかがですか?

川村 本当に(笑)。「神田さんが来てくれて良かった」という話しか、聞いたことがないんですよ。私はおんぶに抱っこで、ブックスタンド一つにしても「ネジが合ってないんです」という話をしたらお忙しい中わざわざ自作してくださったり。

――えっ、ネジの自作もできるんですね!

神田 自作はできます(笑)。ブックスタンドのすり合わせというか、ネジのタップがちゃんと切られていなくて、しかもネジ山の中に塗装が入っちゃったんですね。だから、ドライバーが入らないんですよ。それで、タップをもんで下ネジを入れるようにしました。

川村 みんな「何かあったら神田さんに(相談しよう)」というのが深層心理にあります(笑)。

――いやあ、エンジニアとはまさにこれだなという気がします。次に、業務を行なう上で大事にしているモットーや好きな言葉があれば教えてください。

神田 「倒れるときは前のめり」、あとは「自分がやらなきゃ誰がやる」ですね。建設業の頃からずっと思ってます。

学生の頃、自分に甘すぎてなんでも中途半端にしてきたところがあって。もっと勉強しておけば良かった、と建設業の時に切実に感じました。

家って、なかなか買えないものじゃないですか。何千万もかかりますし、お客さんに引き渡しが終わって喜んでいても、自分の中でやりきれていない感覚があったりするんですよね。もちろん手抜きではないんですけど「もうちょっとこうすれば良かった」という部分が。

コンクリートで作った車庫が出来上がって、ちゃんと防水しておけば良かったんですけど、細かい浸み水が出てきてしまったとか。「あの時、あそこまでちゃんと手入れて(防水を)やっておけば良かった」とかね。もう土の中なので、元に戻せないんですよ。

職人に任せると管理しないといけないですけど、自分でやってれば自分の責任じゃないですか。だから「倒れるときは前のめり」、あとは「自分がやらなきゃ誰がやる」ですね。

――「倒れるときは前のめり」。新卒のガツガツした子が言いそうな言葉を、48歳の神田さんが言う。仕事に年齢は関係ないですね。

神田 年齢に負けちゃいけないと思っているので。もちろん、若い子たちの成長スピードはすごいなと思うし、悔しいと思うこともありますよ。「自分が若い頃、こんなに頑張ってなかったよな」とか。でも、後ろは向けませんから。

――本当にそうですね。後悔することもありますが、行動につながらない後悔は意味がないので。次に、ご自身の成長のために日々行なっていることがあれば教えてください。

神田 「それってなんだろう」と調べることですね。特に仕事とかIT系サービス、自分の興味あることは入ってきたら一通り調べます。浅く広く知っておけば、何かあった時に「そういえばこれ見たな」「こうすれば使えるんじゃない?」みたいになってきている実感があります。

「できること」で満たすと成長がないですから

――ここからは、神田さんが働く上で大切にしていることについて、「事業内容」「仲間」「会社愛」「お金」「専門性向上」「働き方自由度」の6つの項目から合計20点になるよう、点数を振り分けていただきます。

・専門性向上 3

本当に必要なことは、骨までしゃぶりたいんです。今、WEBではシステム開発のフレームワークがたくさん出ていて、それを使えばいろんなものができます。でも、基礎の基礎を知らないとトラブルが起きると対応できないんですね。建築をやってたからかもしれないですけど、基礎の基礎の地盤のところから自分で見て、どういう基礎で仕上がっているか理解したうえでフレームワークを使いたいです。

専門性というのは「このライブラリを知っている」「こんなことに使える」ではなく、「こういう仕掛けでできていて、こうなっているから、こう使えるんだよ」とバックグラウンドまで知っていること。その方が潰しが効くと思います。もちろん、今言ってることを100パーセントは実行できていないと思いますが、「そう思ってないとダメになるよ」と思います。

・仲間 5

仲間なんですよね、上司でも部下でもなく。仕事を一緒にする人は仲間なんです。何かの漫画みたいになっちゃうんですけど、仲間というのは一緒にプロジェクトに取り組み、同じ温度感を同じように話せる人たち。リスペクトしあえる関係。そういう人たちに僕は恵まれていますし、そう思ってもらえるようにしなきゃと思います。

・お金 1

お金は自分を評価してくれるものですし、もちろん欲しいですよ。けれど、特に20代の頃ですが、お金のために仕事をしてた時期は何にも残らなかったんですよね。こなしてるだけで実感がなかったというか。

会社にとっての利益を増やすこと、例えばいろいろ合理化するとか、経費を節減するとか、期間を短縮するといったバリューエンジニアリング的な意味でのお金は考えられるんですけど、インカムは会社が評価してくれるものですからね。それが目的で仕事を変えるというのは、違うんじゃないかなと。

・事業内容 5

ここに来るきっかけとしてもそうですが、事業内容に対して自分ができることは何かということですね。「こんな事業だったら、こんなことをやりたい」と言うのが具体的に思い描けるか。それが、事業内容を大事にしている理由です。

――40代になるとやりたいこととできることのバランスでは、「できること」8:「やりたいこと」2ぐらいの即戦力じゃないと話にならない部分があると思います。その辺り、神田さんのバランスはどのあたりですか?

神田 どうですかね……「できること」で満たしてしまうと成長がないというか、下降曲線しか辿らないと思っているので。できる限り「やりたいこと」を増やしていこうと思っています。守りに入りたくないんです。確固たるものの上に「やりたいこと」を乗っけていって「できること」を増やしていきたいですね。

・働き方自由度 2

エンジニアという仕事上、働き方の自由が叫ばれてますよね。フレックスタイムだとかリモートワークだとか。でも、それらは自分ができあがっている人だから使えるのかなと。スペシャリスト、「これで飯を食ってるんだぜ」と言い切れるぐらい自信持っている人に関しては自由に働いた方が良いと思うんです。ただなんとなく自由になりたい、という私みたいに甘い人間は難しいと思います。

・会社愛 4

会社愛って、持たなきゃと思って持つものじゃなくて、自然に愛着が出てくるものですよね。同じベクトルを向いていること、イコール会社愛と感じています。逆に、そこで持てないんだったら自分の役割ってないんじゃないの、何のために働いてるの、もっと言うとそもそもなんでその会社選んじゃったの? となっちゃうなと。

――最後に、キャリアに迷っているエンジニアの人たちに向けてメッセージをいただけますでしょうか?

神田 転職を考えている方は、「なぜ転職したくなったのか」を1度見直してほしいなと思いますね。「スキルアップしたい」というポジティブ面もあるでしょう。もしくは、こういうことが嫌だった、こういうことができなかった、というネガティブ面もあるでしょう。それは繰り返さないことが大事だと思います。仕事が気に入らないから転職するというのには少し疑問があります。その仕事をしようと選んだのはそもそも自分であって、なぜ気に入らないのだろうと。目標というか、その会社の中でどんな自分になるかというイメージを持って決めてないからなのかなと。

仕事に直接関係なくても、何らかのバックボーンを持つと人は堂々とできます。今の会社には勉強意欲がある人がたくさんいて、芯がある人が多いですね。悶々としてる人たちは、その会社でやり続けるメリットをもう1度フラットに見てほしいです。自分の市場価値を見て、自分を活かせる会社に入ることが良いと思います。アラフィフの私からのアドバイスですね。

私もレインメーカーに来る時、転職サイトに登録して、話を聞きに行って、「ああ、こういう使い方をしてもらえるんだ」という新しい発見がありました。いま切実に転職を希望してないとしても、すこし気になるようだったら、面接・面談に行くと良いかもしれないです。新たな視点で自身を見直すことができ、より今の仕事に取り組むことができるようになったり、新たな目標を持つことができるかもしれませんね。

<了>

ライター:澤山大輔


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