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「我流でやらない、が大事です」阿久沢崇(株式会社ティー・アール・イー)~Forkwellエンジニア成分研究所

ディープラーニングのセミナー講師を担当しています

――本連載では初出となります、まずは株式会社ティー・アール・イーさまについて伺えますでしょうか?

阿久沢 弊社は、株式会社トライアルホールディングスの子会社です。トライアルHD社はディスカウントストアのチェーンを運営している会社で、弊社は主に流通企業向けの業務用ソフトウェアパッケージの開発、販売、サポート業務、さらに業務管理ソフトウェアの受託開発、サポート業務などを主に行なっています。
 
現在は親会社向け、店舗向け、物流センター向けにシステムを開発しています。それらは例えば店舗に商品が届いたかどうか、検品がきちんとできているか、補充や発注、アルバイトの管理、売上の分析等様々な部分で使われています。

トライアル社の特別なところは、IT技術を積極的に小売業に取り入れて成長してきたことです。2018年2月に福岡市の東にある「アイランドシティ」に中型の新しい店舗を出したのですが、そこでは700台のカメラを使って人の動き、商品の動きを隅々まで見ています。

――700台も!
 
阿久沢 全ての棚の商品を見るためには、これだけの台数が必要になったということですね。

見ている部分としては、商品をカートに入れたか/入れていないか、どれぐらいの時間見ていたか、手に取ったか/取っていないか……様々なデータを取っています。それによって何の商品がいつ必要なのか、補充のタイミングはいつなのか、売れ筋の商品は何なのか、等のデータが取れるわけですね。
 
――安売りだけがウリなのでなく、様々なIT技術を駆使されているのですね。その中で、阿久沢さんは現在どのような仕事をされているのでしょうか?

阿久沢 会社としては、先ほど説明したシステムを開発するのが主な仕事です。私はそこには直接関わっていません。私が担当しているのは、ディープラーニングのセミナー講師です。講師は私の他にもう一人います。

弊社は社内向けだけでなく、外部に対してもAIを活用できる人材の育成に取り組んでいます。講義内容は3日間の集中コースで(参照)、ディープラーニングの基本を学んでいただき、AIエンジニアとして最初に取り組むべきステップを確実に踏めるような講座になっています。

具体的にやっているのは、ディープラーニングの基本的な数学とプログラミングですね。分野には「画像処理」「時系列」「自然言語処理」という3つがあります。基本的に処理するデータ自体は同じなのですが、データの入り口が違うんですね。

その「データの入り口の違い」は何なのか、までを理解してもらえれば、あとは必要なものを学びながら事業で必要なシステム開発ができます。その基本の部分を、3日間でやります。(参照)このセミナーは、株式会社キカガクさんと一緒にやっています。

――キカガクさんは機械学習・人工知能・ディープラーニングの入門セミナーをする会社さんなんですね。受講者は、どういった会社の方が多いのでしょうか?

阿久沢 偏りはないですね、いろいろな会社さんがいらっしゃいます。規模も業種もけっこうバラバラですね。ただ工場のラインを持っている会社さんが、コスト削減などの目的で受講されるケースは典型例かもしれません。福岡では、これまでに6回セミナーを開催しています。現在は7回目の準備中です。

――質疑応答では、どういった質問が多いのでしょうか?

阿久沢 プログラミングの詳細に関する質問が多いですね。「どういう形になったらいいのか」「なんでこの形になるのか」というレベルの、細かいところが聞かれます。機械学習のプログラミング自体は、そこまで複雑ではないんですよ。行数も少ないですし、正確に書き方を習得すれば最初のステップは踏めると思います。

大学を中退し、トライアルカンパニー社に

――阿久沢さんのご経歴についても伺います。大阪府高槻市のご出身で、九州芸術工科大学に進学されたんですね。

阿久沢 そうです。高校までは大阪に住んでいて、大学への入学をきっかけに福岡に行きました。実は、ずっと1人暮らしがしたかったんですよ。でも(大阪北部の)高槻だと、京都・大阪・神戸はいずれも実家から通えてしまうんですね。それで、実家から通えない九州に行こうと思ったんです。

九州芸術工科大学を選んだ理由は、芸術に関わることをやりたかったからです。ただ絵を描く練習が嫌いなのと、「数学ならできそうだな」と思って芸術工学部・画像設計学科というところを選択しました(参照)。

――視覚学、視覚芸術学、画像工学が主なのですね。

阿久沢 画像に関わることに関しては、何でも取り扱う学科でした。映像デザイン、マルチ映像表現、グラフィックデザインなどに加え、コンピューターグラフィックスの授業もありました。

ただ、実は6年通ったのですが卒業せずに中退していまして。その頃、プログラミングのアルバイトをしていたのが、トライアルカンパニー社だったんです。「大学を中退することになった」と伝えたところ「じゃあ入社しないか」と言われて1999年に入社しました。

業務内容としては、プログラマーでした。当時はシステム部門の社員が15人しかいなかったのですが、私を含めさらに15人の新入社員が入りました。その研修のうち、プログラミング研修を担当しました。

――ご自身も新入社員にも関わらず、同じ新入社員に向けて研修を行なったんですね。

阿久沢 アルバイト時代からずっと教えていましたからね。もっとも、業務のメインは講師業ではなくプログラマーのほうでした。主にトライアル社の取引先で、商品管理システムを作っていました。

自分がやろうとしていることは、誰かがうまくやっている

――社歴が20年と長いですが、振り返って「この仕事が大変だったな」というものはありますか?

阿久沢 そうですね……やっぱり最近AIセミナーの講師になったことが一番大変だったかもしれないですね。2018年から講師になったんですが、とにかく準備が大変で。

――どうやって克服したんですか?

阿久沢 先ほどもご紹介したキカガクさんのセミナーを、徹底的に真似たことです。「守破離」ですね。講師の方の発言を全て記録し、徹底的に真似ました。これはもちろん仕事なので、社内でも練習しましたよ。最初は、本当にそのまんまをコピーしていました。

――マーケティングでも「徹底的にパクる(TTP)」といったフレーズがありますが、「最初は真似る」というのは非常に大事ですね。

阿久沢 そう思います。私の人生を振り返ったとき、失敗したなと思うのは「我流で何かをやったとき」です。業務を行なう上で大事にしているモットーや好きな言葉、という質問をいただいていますが、それに答えると「我流で何かをやらないこと」ですね。

――すごく本質的だと思います。

阿久沢 「自分がやろうとしていることは、すでに誰かがうまくやっている」と思っています。謙虚と言われれば、そうなのかもしれません。そういうものだと思います。

「自分の成長のために行なっていること」でいいますと、やはり読書ですかね。「研修デザインハンドブック」など仕事に関わる領域の書籍も読みますし、興味があれば専門外の本でも読みます。

――それもやはり、「誰かがうまくやっている方法」を得るためなのでしょうか。

阿久沢 そうです。書籍を読めば、いろいろな事例があるわけで。自分がやっていることの答え合わせができます。ゼロから我流で始めることは効率が悪いですし、失敗の原因になると思います。

コモディティ化した技術の組み合わせで、差別化したい

――ここからは、阿久沢さんが働く上で大切にしていることについて、「事業内容」「仲間」「会社愛」「お金」「専門性向上」「働き方自由度」の6つの項目から合計20点になるよう、点数を振り分けていただきます。

・事業内容 3

「何をするか」は大事ですね。今やっているのはRetail AI、Retail ITの領域です。小売業向けであること、AI、ITであることは軸として持っています。ただ、それが特別かというと、そうでもないと思いますね。

・仲間 3

いつも一緒に仕事をしている人との仲間意識はあります。コミュニケーションが取りやすいように、チームビルディングは意識しているつもりです。ただ、一般的な意味でのコミュニケーションや仲間づくりは苦手です。現在、特に力を入れて成果を出す要素ではないと考えています。

・会社愛 5

会社にはとても感謝しています。愛だと思っています。「正しいことなら何でもやれる」という気になっていますし、そんな場を得られていることに感謝しながら仕事をしています。

・お金 4

これは、「世の中へのお役立ちの度合い」として、お金に換算するべきだと考えています。良いことをやっている会社は、儲けられるところまできちんとやるものですから。ただ、個人の評価を報酬でやるべきなのかは正直よく分からないですね。

・専門性向上 3

プロフェッショナルの仕事として、専門性は必要です。必要なところまでは手を抜かず、再現性のある範囲で留めておきます。現在はコモディティ化した技術を組み合わせて、組み合わせによる差別化をすることに興味があります。

・働き方自由度 2

重視していないですね。ブラックな環境でないのなら、十分に自由だと思います。リモートワーク等は、今の環境では不要だと思いますから。現在の会社は、申請さえすれば常識的なことはたいてい通ります。そういう意味でも、働き方の自由度がことさら必要だとは思っていません。

――最後に、キャリアに悩んでいるエンジニアの方に向けてメッセージをお願いします。

阿久沢 これ、難しいです(苦笑)。自分が幸せだと思える方向に決めるのが大事だと思います、ぐらいのことしか言えないですね。すみません。

――とんでもないです。本日は、お忙しい中ありがとうございました!

<了>

ライター:澤山大輔


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