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「この世界って自由だったんだ、と学びました」立石賢吾(スマートニュース株式会社)〜Forkwellエンジニア成分研究所

日米で急成長中のニュースアプリ

――本シリーズでは、初めてのインタビューになります。貴社について簡単にご紹介いただければ幸いです。

立石 弊社スマートニュースは、日本とアメリカでニュースアプリを提供している会社です。いろいろなメディアさんから集めた記事や、クーポン、行政機関、スポーツ団体、アーティストなどの情報も、配信しています。チャンネルや記事の中に広告を混ぜて、そこを収益にアプリ開発をしています。

最近は成長が著しく、ダウンロード数が右肩上がりです。アメリカの方も成長しているので、かなり面白いフェーズだと思っています。

――私も存じ上げていますが、5年前くらいからずっと急成長と言われていると思います。継続的に成長を続けられているのですね。

立石 私自身もスマートニュースは昔から使っていたんですけど、そんなに成長していたとは知らなくて。どちらかと言うとグノシーさんとか、競合他社の方が詳しかったぐらいです(笑)。

――2019年5月入社ということですが、入社のきっかけは何だったんでしょう?

立石 知り合いが何人か会社にいて、「今、かなり面白いフェーズだよ」と聞いていて。エンジニアとしてチャレンジしてみたいと思ったのがきっかけです。

選考を受けた時に聞いていたのが、「アメリカでの事業成長を加速させていく」ということですね。日本での成長も加速していて、基盤だったりアーキテクチャーがどんどん大きくなっていく。そこに、チャレンジする面白さを感じました。

加えて、凄腕の人材もどんどん集まってきている。システムとしてもアプリとしても組織としても大きくなり、グローバルな考え方ができる。その2点において、とても面白そうだなと思いました。

――ありがとうございます。その中で、立石さんの現在の職務内容はどんなものでしょうか。

立石 広告の最適化ですね。適切な広告を適切なユーザーに届ける仕事を、主にやっています。

言語は、ほとんどPythonを使っています。私は機械学習エンジニアというロールでやっていまして、機械学習関連のライブラリはほとんどデファクトスタンダードのPythonで書かれています。

スマートニュース社全体としてはJavaも多く、Javaのコードを読む事もあります。ただ、書くのはほとんどPythonで、有名なフレームワークだとTensorFlowとかKerasとかPyTorch、機械学習のライブラリでscikit-lerneとかそのあたりを見ながらやっています。

――機械学習のお仕事は何年くらいやられているんですか?

立石 前職から起算すると3、4年くらいです。LINE Fukuoka時代に「DataLabs」という専門チームの室長をやっていたんですが、その頃からですね。業務としてはそれくらいなんですけど、それよりも前に個人的な、パーソナル・プロジェクトを友達とやっていまして。

――どういうものなんですか?

立石 洋服が「似合う」って定量的にどういうことか?ある洋服に似た別の洋服を探せないか?とか。

例えばテレビCMやドラマを見ていて、好きな女優さんが出ていたとします。「彼女のこの洋服いいな」と思ったものをキャプチャして検索したら、バッグやジャケット、パンツはここという画像から認識して、それぞれのものをコーディネートできる。そういう技術にチャレンジしていました。

パーソナル・プロジェクトを含めると、(機械学習は)5、6年くらいやっています。

――すごいですね。今回スマートニュースさんに移られたのもその辺りのバックグラウンドも含めて、という事なんですか?

立石 そうですね、チカラになれるかな、と思って。もともと数学が好きなこともあり、プライベート・プロジェクトを友達とやっている所から始まっています。

「やりたい」と言い続け、DataLabsを福岡に

――ご経歴に移らせてください。2007年4月から、佐賀電算センターというところにお勤めだったそうですね。

立石 そうですね、完全にSIerの会社で。受注して、納期までに開発してお渡しする、という事をやっていました。

――お名前だけ見て、計算機の会社さんなのかと思いました。

立石 結構言われるんです(笑)。もともとは会計事務所だったんですけど、徐々にITの仕事が増えていった会社です。私が入った頃にはITに絞り、エンジニアがたくさんいましたね。

――当時はどんなことをされていたんですか?

立石 Web開発というとわかりやすいと思いますが、toB向け社内システムだったり、業界で言うと医療・医薬品の卸に向けて受発注システムを作ったりしていました。

――2012年からGMOペパボさん、2014年からLINE Fukuokaさんという経歴と伺っていますが、途中でweb開発から機械学習の方に移られたということですか?

立石 そうですね。業務として機械学習を始めたのがLINE Fukuokaで、プライベート・プロジェクトを始めたのはGMOペパボ時代です。

LINE FukuokaにDataLabsという組織があるとお話しましたが、あれは私が声を上げ続けていたらできた組織なんですね。

当時、東京のLINE本社にデータサイエンティストや機械学習エンジニアがいる組織ができたんですが、それを聞いて「福岡でもやりたい」と1年くらい言い続けたんです(笑)。

上司からするとうざったかったと思いますが、「既存のシステムのここに機械学習を使うと、こういう面白いことができるよ」という提案やデモいくつかしながら、その中から実際に実装したりしていました。そういうことを続けていたら「じゃあ福岡でもやろう」となって。

――立石さんがきっかけで、LINE FukuokaさんにDataLabsができたんですね。そこで中心メンバーになられたと。

立石 言い出しっぺでもあるので、そんな感じでしたね。すぐに望んでいた機械学習の仕事ができたかというとそうでもなく、最初はユーザーの推移や売上などの分析のためにダッシュボードを作ったり、大規模データを扱いやすく整理したりする仕事がメインでした。

ダッシュボードを作りながら「これはやりたかったことではないな」と思っていたので、「こういう事ができるよ、やってほしいことはない?」と社内に伝え続けていました。

――社内営業もしっかりやられていたんですね。

立石 そうです。そんなことをやっていたら仕事も来て、チームも大きくなって。最初は3人だったんですけど、僕が辞めるときには15人くらいの組織になっていました。

「自分から動いていい」と気づかせてくれた元上司

――これまで最も印象に残っている仕事は、何でしょう?

立石 一番面白いなと思っているのは、今やっている仕事ですね。スマートニュースだけじゃなく、広告って売上や営業利益にダイレクトに響くので。

仮に僕が機械学習で精度を上げて、売上が1億円上がりました、となればすごくインパクトが大きいですよね。逆に、影響が大きいので、毎日胃をキリキリさせてもいます。

もちろん僕一人の責任ではないことはわかっていますが、メンバーとして緊張感を持っています。そういう意味で、機械学習エンジニアとしては今の仕事が一番印象的です。

――売上に直結する様なお仕事、という意味では初めてなんですね。

立石 機械学習を使ってコミットするという意味では初めてですし、緊張しています。

――これまでのお仕事でいろいろな方にお会いしてきたと思いますが、キャリアにすごく影響を与えた方はいらっしゃいますか?

立石 これまでの私のキャリアの中で理想の上司が二人いて、エンジニアが働きやすくなるためにどうすればいいか、一生懸命に考えてくれるお二方でした。組織作りやメンタリングの面だったり、とにかくエンジニアの事をちゃんと考えてくれる。

初めてSIer入った時にそういう人はいなくて。上の言う事が絶対、「DataLabsをやりたい」と言っても実現できる環境ではなかったんです。

DataLabsができたのも、そのうちの一人の上司の力が大きくて。働き方や仕事の進め方など、影響を受けた人物です。エンジニアが活き活きと仕事できる環境を整備してくれる人に、すごく惹かれています。彼らのおかげで、今の僕があると思います。

――将来は、立石さんもそうなっていたいと。

立石 そうですね。もっとも、二人とも人間ですから良い面と悪い面があります。普段は適当だけど、危なくなったらスッと現れて、解決して去っていく。かっこいいんですけど、人間としてダメだなあと思う部分もある(笑)。良い面だけを盗んでやっていければ、と思います。

――立石さんが、ご自身で「影響を受けているな」と思うところはありますか?

立石 働き方ですね。自分から動くことができなかった人間なので、「動いていいんだ。この世界って自由だったんだ」と学びました。

二人と出会って、「会社も人によって運営されている、どう動くかによって自分のポジションが決まる」とわかりました。そういうところに気付かせてくれたのが、尊敬するところです。

議論するより先に、手を動かす

――業務を行なう上で大事にしているモットーや好きな言葉を教えてください。

立石 議論するより先に手を動かす、ですね。「こういうことをやりたい」と言うだけよりも、モックアップを作って「こういうのあるんだけど、どう?」みたいに話すとか。

「やりづらいな」「もっとこうしたいな」と思うことがあれば、先に手を動かしてしまう。

なにかのトピックをさんざん議論して決まらない、ということもあります。建設的な議論ができない時間って、もったいないと思うんですよね。これが正解とは思っていませんが、そういうふうに動くことが好きです。

――めちゃくちゃ素晴らしいです。

立石 あとは好きな言葉ですよね。「人を動かすためには、自分が変わる」です。相手を変えるには自分が変わらないといけない、自分が信じないと相手もこちらを信じてくれない。

世の中にはコントロールできるものとできないものがあって、特に人の気持ちはコントロールできません。「まずは、自分から変えていこう」というニュアンスです。

――ありがとうございます。次は、ご自身の成長のために日々行なっていることを教えてください。

立石 アウトプットを定期的に行なうことです。ただ、ここ2、3年くらいはやれていなくて。

今やっている広告はインプットが多く、LINE Fukuokaでやっていた最後の方は室長という役割だったこともあり、技術的なアウトプットはほとんどできていません。

とはいえ僕が現職でこういうロールでいられるのは、コツコツとやってきたアウトプットのおかげかな、と思っています。正直に言うと、最近は日々成長するために何をやっているの? と言われると何もやれていないです。

――それだけお忙しいという事なんですね。

立石 ときどき登壇して、機械学習のアルゴリズムや「こういうツールがありますよ」と紹介することはあるのですが、日常という訳ではないので。

インプットがすごく多くて、それを消化しないといけないこともあり。落ち着いて来たらアウトプットを再開したいと思っています。

アウトプットすれば、良いことしかない

――機械学習の書籍も出版されていて、今度二冊目が出るそうですね。出版に至った経緯は、どういうものだったんでしょう?

立石 まさに、アウトプットがきっかけです。機械学習の数学を説明するブログをやっていまして。アウトプットした理由は二つあって、一つは自分自身が機械学習の数学をもっと理解すること。人に教えることで、さらに理解が深まりますから。

もう一つが、コミュニティに入りたかったからです。福岡は機械学習のエンジニアが多くないので、存在感をアピールすることと、「誰か数学について話したい」という二つの側面からアウトプットしていました。それを編集者の方が見つけてくださって、「書籍化を検討しませんか」というお話をいただきました。

――アウトプットって大事ですね。

立石 そうですね、転職にも役に立っています。佐賀電算センターからGMOペパボへ転職した当時もOSSのコントリビューション、OSSにバグを見つけてPull Requestを送って修正をしたり、英語のドキュメントを翻訳して日本の人たちに届けたり。

LINEに転職する時にも、自分でOSSを書いて公開していました。それが出版にも繋がっているので、言い方は悪いかもしれないですけどすごくいいステータスになっています。

――今日は、たくさん刺さる話がありますね。自分もアウトプットが止まっている方なので。お仕事を頂くときは「noteを見ました」「ブログを見ました」というケースが、過去何回もありました。

立石 すごくわかります。アウトプットすれば、良いことしかないんですよね。忙しさのせいにして今はやっていないのでまたやりたいと思います。

振り返って、自分の原理を探すこと

――ここからは、立石さんが働く上で大切にしていることについて、「事業内容」「仲間」「会社愛」「お金」「専門性向上」「働き方自由度」の6つの項目から合計20点になるよう、点数を振り分けていただきます。

・専門性向上:4

「プログラミングが趣味」と言うぐらい好きなので、専門性を向上させてずっと食っていけると良いと思ってます。

・仲間:5

順位を付けると、仲間が一番ですね。エンジニアは基本的に「優秀な人と働きたい」という思いが強いと思うので。

・お金:3

お金は大事ですけど、順位付けするとこれくらいかなと。もちろん、お金はいっぱいほしいですけど(笑)。

・事業内容:2

スマートニュースでは広告配信やメディアに関する事をやっていますが、それはそれで面白いと思っています。LINE Fukuokaの時はClovaや、LINE占いという占いアプリの開発をやっていたり、GMOペパボの時はレンタルサーバー事業やドメイン取得事業をやったり。僕の経験上、割と何でも楽しんできたと思います。なので、自分の中では優先度が低いですね。

・働き方自由度:4

・会社愛:2

時間にも場所にもこだわらない環境が整ってきていて、その流れがすごく好きですね。時間に対してではなく、成果に対して対価が出る流れになると良いと思っています。

もちろんFace To Faceはコミュニケーションをする上で大事だと思いますけど、実際にスマートニュースやLINEは良い働き方ができる会社なので。そういう会社は好きです(笑)。

――ありがとうございます。最後の質問ですが、キャリアに悩んでいるエンジニアの方に向けてメッセージを頂けますでしょうか。

立石 振り返って、自分の原理を探してみることですかね。僕の話をすると「このままシニアマネージャになっていくのか、エンジニアに戻ってテクニカルな所を磨いていくのか」をすごく悩んで、いろいろな人に相談したんです。

最終的に何を基準にしたかと言うと、「どちらがより楽しいか」でした。自分の行動原理を探したとき、「物を作るのが好き」というのが小さい時からずっとあったので。

カンタンな事だとは思いませんし、僕も「自分の行動原理はこれ」とはっきり言えるわけではありませんが、ひとつの指針にはなるかなと思います。

――とても勉強になりました。ありがとうございます。

<了>

ライター:澤山大輔


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