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メルチャリで、「移動」をもっと楽しく。蛭田慎也(neuet株式会社)【前編】

福岡市で人気を博している、「メルチャリ」というシェアサイクルサービス。そのサービス展開・開発を担っているのが、neuet(ニュート)株式会社です。

スマホで決済し、さっと乗ってパッと移動できる。電車やバスが走っていなかった場所にも、スムーズに移動できる。人が新しいルートで移動するということは、「発見」される場所も増え、ひいては街の活性化に繋がる……夢が広がるサービスです。

そんなサービスをイチから立ち上げ軌道に乗せてきたのが、エンジニアの蛭田慎也さん。普通のWebサービスでは経験できない、様々なドラマを経験されたようです。さっそくご覧ください。 

バックエンドの仕組み設計から実装・運用まで

――よろしくお願いします。まずは、御社の会社内容についてご説明いただけますでしょうか。

蛭田 シェアサイクル事業を展開しています。約2年前に福岡市でサービスを開始し、今では多くのお客さまに利用いただいけるようになりました。メンバーは少人数で、東京にはエンジニアが2名、プロデューサー、QA、ビジネスサイドのメンバーで開発しています。

あとは福岡に「カントリーサクセス(CS)」というチームがあります。お客さまからのお問い合わせ対応だけではなく、ポートを提供していただいている事業者の方とのやり取りや、現地で運営を行っているパートナーのマネジメントなど、広い範囲で業務を行っています。

――その中で蛭田さんの拠点は東京でいらっしゃるんですか?

蛭田 そうですね。東京が拠点になります。私はバックエンドのエンジニアとして、メルチャリのリリース前からずっと携わっています。バッテリーや通信機器を搭載した鍵(スマートロック)を用いてサービスを提供するため、バックエンドの全体設計を行いました。それからサーバサイドの実装、運用まで一貫して行っています。

――エンジニアの方は何人いらっしゃるんですか?

蛭田 直近までは、メルカリからの出向という形で計5名で開発を行ってきました。neuet株式会社に転籍したメンバーとしては2名で、現在は採用活動を絶賛進めています。私はneuetに移ってからVP of Engineeringとして、エンジニアリング全体を統括しています。

――日々の業務としてはどのようなものがあるのですか?

蛭田 例えば、アプリに新しい機能を追加したい、という話があると企画のメンバーなどとディスカッションしながら仕様を固めていきます。実際に作るフェーズになったらサーバサイドとクライアントのエンジニア、フロントのエンジニアと含めて作っていって、触り心地を確かめながら進めていく形ですね。実装できたらQAやCSのメンバーと確認を行い、本番にリリースする、というサイクルを繰り返しています。

――最近追加した機能はどういうものですか?

蛭田 最近だと、アプリのアカウントの仕組みをリニューアルする施策が大きかったです。従来はメルカリのアカウントと共通でログインする仕組みでしたが、事業承継に伴い、メルチャリ独自のアカウント体系に切り離す対応を行いました。普段から利用いただいているお客さまの利便性を損なわないように、いかにスムーズに移行していただけるようにするかという点に苦心しました。

それが守りの機能とすると、攻めの機能は自転車の再配置ですね。今は自転車が移動していくのをお客さん任せにしてしまっているので、通勤の時は郊外から街に行くし、夜は家に帰っていくので市外に流れていっちゃう。どう自転車を再配置していくのか、こちらの運営のクルーだけでトラックで回すのは大変なんですよね。

できれば、お客さん自身で動いてもらって再配置したい。それを実現すべく、アプリ内の機能としてリリースしています。

――それは具体的にはどういうものなんでしょうか。

蛭田 過去の利用状況などを分析して、この時間にはここに何台くらい必要だろう、というのを算出します。解析したデータをもとに、アプリ上では「このポートに行くとマイルをあげます」「チケットをプレゼントしますよ」という形で移動を促すんですね。

――うまくインセンティブを設けて、バランスするようにしているんですね。

個人の移動から、ストレスを解放したい

――直近の目標は、どういうものがありますか?

蛭田 事業移管に伴い、システムや業務環境をneuet社に載せ替えるために、半年以上かけて対応を行いました。今後新たなメンバーを迎え、新体制として再スタートを切っていくので、様々な体制を急ピッチで整えているところです。

直近では、福岡以外の都市にも展開するべく準備を進めています。東京でも展開してほしいという声は多く頂いているので、ぜひ実現できるようにしたいと思っています。 

――確かに、東京でもほしいです。メルチャリ。

蛭田 東京って地下鉄は発展しているんですけど、微妙に接続が悪い地域での移動は難儀だったりするんですよね。そのとき、自転車ってすごく便利で。ちょっとした移動が簡単になると、変わってくる部分があるのかな、と思っています。

――例えば三軒茶屋と下北沢って、実は近いですよね。直線距離なら、自転車だと10分もかからない。でも、電車だと渋谷経由で井の頭線のホームまでかなり移動が必要です。そういう位置関係って、東京にはたくさんありますね。

蛭田 電車やバスは放射状に路線が伸びているケースが多いですが、縦のラインがなくてバスも通っていない不便な箇所もありますよね。

――今後、メルチャリの可能性はどういうところにあると思いますか?

蛭田 メルチャリという選択肢があることで、満員電車のストレスから解放されたり、より気軽に移動できるようにしたいです。また、メルチャリを使うことで、普段とは違う目線でまちなかを移動して、今まで気づけなかったお店を発見できたりするかもしれません。このように、生活がより豊かになるきっかけとして活用いただける未来を感じています。

さらに、ポートを用意していただく事業者様にとっても、今までリーチできなかったお客さま層の獲得につながる可能性を提供できます。お互いにビジネスのチャンスが広がっていく面もいっぱいあるので、我々としては様々な技術を活用して良いプロダクトを作っていく部分をやりたいな、という思いはあります。

――これは本当に発展が楽しみですね。

リアルなモノが、街中で走る。Webとの大きな違いだと思います。

――蛭田さん自身のキャリアでは、どのような経験をされてきたのでしょうか?

蛭田 大学ではコンピュータサイエンスや位置情報データの解析・可視化などを研究していたのですが、他にもいろいろやっていたんですね。例えば、文化祭の実行委員では、パンフレットやWebサイトなどを作る広報や、当日の電力配線を行ったりもしました。本当に泥臭い作業も多くて、毎日のようにみんなで泊まり込みで作業をしたことも。その中で「みんなでモノを作っていくのは面白いよね」と思って。

コンピュータの分野では、プログラムを書けば簡単にモノを作れます。新しいサービス、Webやアプリのサービスを作っていくのはすごく興味があって。どういう会社だったらそれができるのかなという所で、Web系の所に絞って就職活動をして、2013年にDeNAに入社しました。

DeNAではソーシャルゲームの運用や、個人間カーシェアリングサービスの新規立ち上げなどを経験し、2017年11月に当時メルカリの子会社であったソウゾウに転職しました。

――最初にソウゾウ(メルカリ)でやられた仕事は、どういうものですか?

蛭田 それが、メルカリに来てからは、メルチャリしかやっていないんです(笑)。当時、ソウゾウというメルカリの子会社では新規事業のチームがいくつもありました。

僕はソウゾウに入るのが先に決まっていたのですが、そのときはまだメルチャリが発表されていなかったんですね。入社直前にメルチャリについて発表されたのですが、すごく面白そうだと思ったので希望を伝えていたら、そのまま配属が決まりました。

――いざプロジェクトに入ってみて想像と違った所はありましたか?

蛭田 ハードウェアと本格的に絡む開発は、やったことがなかったので。事業を成立させるにはサーバ側だけ作っていてもしょうがないので、スマートロックやアプリとどうやって通信していくのか、ハードありきでの設計がものすごく大変でした。

鍵はバッテリーとGPSやBluetoothなどが搭載されていて、位置情報が分かるしスマホやサーバとも直接通信ができる。お客さんが鍵の付近についているQRコードを読むとサービス利用開始となって、自動的にカシャンと開く仕組みになっています。 

自転車単体だとただのチャリなんですけど、スマートロックと呼んでいる鍵の部分が今のサービスのキモになっています。

――このサービスならではの面白さ、ってどういう所にありますか?

蛭田 そうですね、他のインターネットだけのサービスと比べると、リアルなモノが街中にあるという点が一番違いますね。博多に行くと、メルチャリに乗ってくださっている方を10分に1度くらい見かけるくらいになっているんですよ。

――10分に1回くらい、すごいですね。

蛭田 定期的にメンバーで福岡出張しているんですが、気になるお客さんを見ると我を忘れて走って追いかけていったりします(笑)。

――面白いですね。何が気になるんですか?

蛭田 何気ない使い方とか、「なんか車体おかしくない?」みたいな。「それ乗って大丈夫かな?」とか、気になった時に後ろからみんなで追いかけたり。

――面白いですね。やっぱりWebサービスと全然違いますか。

蛭田 そうですね、全然違いますね。

<後編に続く>

ライター:澤山大輔


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