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AWSヒーローが描く「誰でもヒーローになれる」会社のつくりかた 吉田真吾(株式会社サイダス取締役CTO)後編

<前編はこちら>

『すべての企業の「⼈×データ」のインフラになる。』を掲げ、人事に関する様々なプロダクトを提供する株式会社サイダス。新しい時代の「働きがい」とは一体どんなものなのか? 同社のCTOにして、世界に80人しかいない(2019年当時)というアマゾンウェブサービス(AWS)認定『AWSヒーロー』でもある吉田真吾さんは、「次のヒーローを生み出すこと」こそ、サイダスの考える究極の人材データプラットフォームだと言います。前編では、プロダクトのコンセプトや開発の経緯などをお聞きしましたが、後編では、プロダクトに大きな影響を与えた吉田さんのバックグラウンドについても掘り下げます。人事の力で、企業だけでなく、個人の成長を促し、誰もがヒーローになり得る社会をつくる方法とは?

世界に80人!AWSヒーローに認定

世界で一番有名なクラウドコンピューティングサービスであるAWSでは、コミュニティによるナレッジ共有が盛んなカルチャーでも知られています。AWS自体もこの流れを推奨していて、エキスパートグループのコミュニティ、コンテナ、データ、IoT、機械学習、サーバーレスの各分野でAWSヒーローを認定しています。

株式会社サイダスの吉田真吾CTOは2019年、全体でも世界で80人しかいないAWSヒーロー、しかも日本人唯一のAWSサーバーレスヒーローに認定されました。2012年からAWSのコミュニティ活動を行っているという吉田さんにとって、ヒーローであること、ヒーローをつくること、には特別な意味があるそうです。

―― AWS コミュニティでの活動が認められてAWSヒーローに認定されたということですが、人材育成、戦略人事を担うプロダクトの開発という現在のお仕事でも「コミュニティ」や「成長」というキーワードが重要だとおしゃっています。奇しくもAWSコミュニティの活動が現職につながっているということもあるのでは?

吉田 そこは完全にリンクしています。プロダクトを通じて人事に直接関わるようになったのはサイダスと縁ができた2016年からですが、いま思い返せば、それ以前も自分の会社の社員だったりお客さま、主催するコミュニティで関わる人たちとは、人材育成、成長促進みたいな関わり方をしていたなと思うんです。

自分と仕事やコミュニティでご縁があった人、一時期だけでも人生が重なったことによって、その人の職業人生が豊かになったり、今後の活動が変わったと言ってもらえるのがたまらなくうれしくて、それが自分の働きがいになっています。

一例ですけど、オンプレで仕事にやりがいが感じられなかったエンジニアが、クラウドを積極活用して技術的にもビジネス的にも活躍するエンジニアになっていったり、秘書として雇った人が、プログラミングに取り組みはじめて、今やリモートで活躍するママエンジニアになったりとか、自分と関わった人たちが、ほんのちょっと向上心を持って、行動を起こしたことで変化していくのを目の当たりにしていて、そこにきっかけを与えたり伴走することに僕自身が働きがいを強く感じるという思いが、サイダスにジョインする以前からずっとあったんです。

―― AWSコミュニティ運営でも学んだことがあったのではないでしょうか?

吉田 コミュニティの中でも組織の中でもそうですけど、「すごい人」って意外と気づかれていないことも多いんです。そこをちゃんと認知してあげる、その人のすごいところに気が付いてあげるだけで大きく違うんですよね。そして、ただ褒めるだけではなくて、もっとこうしたらよいのではないかとたくさんフィードバックしてあげることも重要です。

すごい人って、「自分はまだまだ」と強い向上心を持っていて、高いレベルでのフィードバックを欲している人が多いんです。

そこを刺激してあげることがその人の能力を最大限に発揮することにつながる。すごさに気づくことと、高いレベルのフィードバックをおこなう大切さはコミュニティ運営の中で学んだことかもしれませんね。

戦略人事には「伸びしろ」しかない

―― 人事に関するプラットフォーム、戦略人事の統合プロダクトを提供するサイダスへの入社は、必然だった?

吉田 自分が今までやってきたことややりがいを感じていたことを、ツールを使ってできるとしたら、一人ひとり取り組んでいくよりもずっとインパクトが大きいし世界中を変えられる!という風には考えてました。

この業界に来てわかったんですが、人事って他の部署に比べて専門性が低く見られてしまうことが多いんですよね。あまり経験がないのにいきなり人事担当にさせられるケースも割と多く見受けられます。それでも採用人事や労務人事は従業員側としての経験があるので、コミュニケーション能力が高かったり柔軟な対応が得意な人などは、上手に任務を遂行できる方もいると思います。ただ戦略人事として会社に今いるメンバーを伸ばしていくという部分は、何年人事を担当している人でもすごく難しいと私は感じてます。

戦略人事は、常に経営に直結していて、社員を育てて戦力に変えていく、むしろ経営そのものだと思っているんです。そこを重要視している企業とそれ以外では、ものすごく差があるわけです。

だから人事の分野は、まだまだお手伝いできることがたくさんある。打算的な言い方をすると売れるチャンス、伸びしろしかないんですよね。プロダクトが生み出せる成果も多いし、お客さまも伸びる。やればやるだけ僕も新しい経験ができる。この業界に飛び込んだのは、そういう総合的な「これはイケる」という感覚があったからというのが大きいんです。

―― 採用、勤怠管理やアセスメントの分野は「ツールを使って」「テクノロジーで簡略化する」のは見えやすいと思うのですが、戦略人事をツールで伸ばすというのは具体的にはどういうことなのでしょう?

吉田 たとえば我々は『1on1Talk』という1on1をサポートし振り返りができるプロダクトを持っているんですが、上司と部下が単純に一対一で対話するだけだと、成長を促すどころか関係悪化してしまう可能性があるんです。上司からでも部下からでも同じですが、いきなり1on1を始めて、「これに困っている」とか、「君の問題は何なんだ」みたいな会話をしても絶対に前には進まないんですよ。

1on1で重要なのは組織の成功循環モデルを意識して十分に機能する関係性を構築することです。まずは上司と部下の信頼関係の質を向上(関係の質)し、今ここにいる意味や目的を把握して前向きな行動ができるように動機づけがしっかりでき(思考の質)、行動を変えたり、新しいことにチャレンジできるようにしてあげて(行動の質)、そして成果が生まれるように支援していく(結果の質)ということが大事です。なのでいきなり成果を問いただすようなことをしてもうまくいくわけもなく、まずは雑談から始めれば十分で、最近の仕事で誰かに褒められて嬉しかったこととか、学生時代の話を聞いたりだとか、土日の過ごし方を聞いてもいい。個人としての関係性をきちんと築いていくことからスタートする必要があるんです。そこから動機づけや、行動の改善や、未来に向けての新しいチャレンジが始まり、成果へとつながっていきます。

また、こういう関係性があってはじめて、耳に痛い言葉も「真摯なフィードバック」として相手に届くようになる。我々が提供している『1on1Talk』では、対話の記録だけではなく、上司が部下のことを、部下が上司のことを、お互いにどれだけ理解しているかという二人の関係性を数値化して計測できるように設計されているんです。これが可視化できることで、1on1の質の評価、内容の査定もできるようになります。

「誰でもヒーローになれる」次世代のヒーローを人事でつくる方法

――プロダクトを人材の評価や管理に使うだけでなく、成長にコミットする指標をつくるのは新しいですね。吉田さんは、組織マネジメントについても「コミュニティ型組織でヒーローを育てる」というプレゼンも行っていますよね。

吉田 すでにお話ししたように、前職でコンサルティングをやっていたときも、AWSを活用できる組織に中長期的に変革していくとなると、人材育成や抜擢、資質にあった働きかたへの配慮などを通じて個人を成長できる仕組みを構築する必要性に迫られることばかりだったんですね。その頃私自身は、エキスパートと働くことしかなかったんです。現職になって初めて年齢やキャリアを含めて様々なバックグラウンドがあり、資質もスキルもグラデーションがある中で、初めて30名以上の部下を直接見るマネジメントと向き合いました。

コンサル時代は、自分のプロフェッショナル像に十分当てはまる人材しか相手にしたくないという思いが結構強くありました。そこから「今いるメンバーで特筆すべき人材から、まだあまり活躍できてない人材まで含めてひとりひとりの可能性を最大限追求していく」ことにめちゃめちゃ悩んだ時期があったんです。

―― 今いるメンバーを次世代のヒーローにしていくということも仰っています。吉田さんのいう「ヒーロー」ってどんな存在なのでしょうか? パッと思いつくのは、ヒーローものの特撮とか、世界を救う救世主みたいなイメージですが。

吉田 ヒーロー像ですか。重要なのは役割だと思うんですね。運命というのは大げさですけど、自分が与えられた役割、使命を認識して動いている人はみんなヒーローじゃないかと思っているんです。自分が立てる場所を深く掘り下げ、さらに周りの人を惜しみなく支援している人。だから、なにも世界を救うような英雄じゃなくてもヒーローはそこかしこにいるし、その大小は関係ないと思っています。

僕がサイダスで実現したいのは、プロダクトを通じてその大小かまわず使命感や自分の役割を強く意識することで働きがいを感じられる人たちを作っていくことなんですね。

今まだヒーローになりきれてない人がいるならそれには理由があるわけです。本当はその人にあった使命や役割があるんだけど、そこにうまく配置されてない、上司とその役割についてうまく織りあっていない、動機づけがされていない。そういう人をいかに引き出して抜擢して適切なフィードバックで背中を押してあげることができればヒーローはつくれるし、育てられる。そう信じてます。

―― 関わった人がヒーローになっていくというのは理想的ですよね。どんな人でもヒーローになれる可能性があるということですが、吉田さんがサイダスで一緒に働きたい人、戦略人事に特化したプロダクトを提供するサイダスが求めている人材像についてはどうでしょう?

吉田 技術の話でいうと、私がAWSサーバーレスヒーローだからといって当社のプロダクトがすべてサーバーレスや新しい技術に特化しているわけではないんです。でも、働きかたについてはチャレンジできる環境だし、お客さまのニーズに沿ったプラットフォームをB2B SaaSでサポートするためにやらなければいけない多くのことにチャレンジできる環境も充実しています。ニーズを見極め、きっちり成果に変えていくためにお互い切磋琢磨して頑張るという環境なので、技術だけを追求したいという人には難しいかもなとは思います。ただしそれらも仕組み化されていて、成果を設定して可視化してレポートする文化もすでに根づいてますし、営業からエンジニアまでお互いに助け合うという文化もよく根づいています。

ハードに働くことを強制するわけではありませんが、成長しながら結果を出すための積み重ねを一生懸命にやることは当然必要で、自分の可能性を広げたい人、そこに響いてくれる人と働きたいなと思っています。

ライター:大塚一樹


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