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なぜセールスイネーブルメントは「営業人材育成の切り札」なのか? バズワードに終わらない変革力 山下貴宏、大城祐介、小泉賢(株式会社R-Square & Company)前編

アメリカのB2B市場において、「営業活動を革新した」と大きな注目を集めているのがSales Enablement(セールスイネーブルメント)。日本でも新たなトレンドワードとして広く知られるようになり、2021年はセールスイネーブルメント導入元年となりそうな気配を感じている人も多いのではないだろうか。

新たな営業人材開発アプローチとして期待されるセールスイネーブルメントの概念をプロダクトとして提供するのが、株式会社R-Square & Companyだ。セールスイネーブルメントのトップランナーである米・セールスフォースドットコム社でセールスイネーブルメント本部長として、日本及び韓国の人材開発施策、グローバルトレーニングプログラムを統括していた山下貴宏氏を中心に創業されたR-Square & Companyの大城祐介取締役CTO、エンジニアの小泉賢洋氏に話を聞いた。

営業活動を加速させる画期的な取り組み「セールスイネーブルメント」とは何か?

営業職は「売る」というビジネスの根幹をなす重要なロールにもかかわらず、極めて属人性が高く、結果以外の数値で適正や評価を測る事のできなかった分野だ。

古今東西、伝説の営業マン、圧倒的な成績を残すトップセールス、営業で結果を残す人のノウハウは数多く残されてきたが、これもまた個人の体験や経験に基づいたものが多く、営業組織や営業業務に携わる人を体系的に成長させるようなものではなかった。

マーケティング先進国アメリカで「営業組織をアップデートした」と言われているのが、営業組織・パーソンの育成から実務評価、持続的な成長を促すセールスイネーブルメントという手法だ。

「営業強化、セールス人材の育成は日本企業の課題でもあるので、従来から人材トレーニング、研修サービスを提供する企業は多く存在していました。しかし、営業と一口に言っても、大企業をクライアントにする営業、中小企業に売っていく営業、そもそもの業種が製造業なのか、 ITなのか、何を売るのかによってかなりの違いがありますよね。同じ企業でも、違う商材を売るとなると、商品知識はもちろん、営業のための行動からガラリと変わってしまって、戸惑いがあるという話もよく聞きます。

セールスイネーブルメントは、業種や商材に関わらず、営業活動に必要な行動をファンクション化して明確に定義、指標を持った上で適正な評価を行い、継続的に成長を促進する手法なんです」

R-Square & Companyの大城祐介取締役CTOは、日本でも ”バズワード”として話題になり始めているセールスイネーブルメントについて、こう説明する。「enablement」は、「enable(〜ができる・使える状態にする)」の名詞形であり、言葉の意味では、セールスができる状態にすることを表している。同社ではセールスイネーブルメントを「営業組織/営業パーソンを、会社が期待する営業の動きができる状態にし続ける」と定義している。

世界市場でその効果を証明してきた第一人者が参入

 「北米を中心に、海外ではセールスイネーブルメント関連の話題が花ざかりです。特に大きな市場になっているアメリカでは、すでに数百のソリューションがリリースされています。それこそ検索すれば、さまざまな情報とともにこの手法を取り入れたツールやプロダクトが数百単位で出てくるといった現状です。しかし、日本には一つもない。今後、日本でもセールスイネーブルメントの需要、重要性が高まるのは間違いないと思っているので、現在開発中のプロダクトには個人的にも大きな期待をしています」

「営業人材開発を営業成果に反映させ、相関関係に近づける」ことを目指して2019年に創業したR-Square & Companyが、創業当初から行ってきたコンサルティング業務に加えて立ち上げたのが、プロダクトを介したクラウドサービスの提供だ。CTOを務める大城氏は、プロダクト開発スタートを機に2020年7月に同社にジョインした。

ここからは、大城氏、エンジニアとしてプロダクト開発を中心的になっている小泉氏の言葉を中心に日本初となる”セールスイネーブルメントネイティブ”なプロダクトについて聞いていこう。

大城 もともとは山下、植田(泰史)、岡安(建司)が3人で創業した会社でして、セールスイネーブルメントを用いた営業に特化したコンサルティングを行っていました。現在はコンサルティング業務と、その知見を活かしたプロダクトを持つテクノロジー企業への転換期というところで、プロダクト開発のスタート期からジョインさせてもらっています。

── ジョインした理由については?

大城 大きな理由としては、三つあって、一つは、実行能力の高い創業メンバーが立ち上げた企業であること。私も共同創業者の一人である山下と同時期にセールスフォースドットコムで働いていたのですが、クラウド企業であるセールスフォースドットコムは、ほぼ営業組織の会社で、年間何百人という営業職が入っていくる。その中で、セールスイネーブルメントを使って大きな成果を上げていたのが山下だったんです。当時、私は完全な技術職で、プロフェッショナルサービスだったりプリセールスエンジニアリングをやっていたんですけど、その姿を見ていたので彼が作ろうとしている、セールスイネーブルメントのプロダクトには興味がありました。

二つ目は、私もセールスフォースドットコムの中にいた人間なので、セールスイネーブルメントが営業組織にどう作用するのかを直接見てきました。日本にないということも理解していたので肌感覚でこれから需要がものすごく出てくるだろうなと思ったところ。

これから爆発的に成長していくことが見込まれる市場の最先端でプロダクトを作っていくことの魅力ですね。大変だろうなと思ったんですけど、価値のあるチャレンジだと思ったのが三つ目の理由です。

── エンジニアとして関わっている小泉さんはどうでしょう?

小泉 私は2020年の10月からジョインしています。現在の役割はエンジニアとして、立ち上げフェーズにあるプロダクトをひたすら開発しているところですね。私も創業者の中の一人が前職で一緒でして、今回プロダクトを本格的に立ち上げる機会があるということで、ジョインさせていただきました。

── 入社以前、セールスイネーブルメントについてはどれくらいの理解があったんですか?

小泉 前職が人材研修を行う企業で、 Eラーニングのシステム開発をやっていたんです。しかし、主役はあくまでもコンテンツ。トレーニングだけを売るのではなく、そのトレーニングが営業成果に結びつくのか、自分が作ったシステム、プロダクトの効果というかそういうものを示したいなと思っていまして、それに対してセールスイネーブルメントは答えの一つになるのかなと思ったんです。

実際にすでに顧客から引き合いがあるということで、創業1年の段階でもそれだけニーズがあるものに触れるというのも魅力でした。前職でもエンジニアいないところに入社して、ある程度開発が回るようになったタイミングだったので、また新しいプロダクトを挑戦したいなという気持ちもありました。

── プロジェクトの立ち上げ、プロダクト開発の最初期段階から参加できるというのはエンジニアにとってはやはり魅力があるんですね?

小泉 僕の場合はそうですね。やっぱり自分が立ち上げに関わったプロダクトが育っていく過程を見るのは感慨深いものがありますよね。

── 大城さんは、セールスイネーブルメントのいわば総本山のようなところで働いていたわけですが、この手法の有用性、プロダクトリリースの意義についてはどんなふうに考えていますか?

大城 先ほどお話ししたように、山下が中心になって進めていたセールスフォースドットコムのセールスイネーブルへの取り組みでは、新しく入ってくる大量の営業人材に対して、いきなり現場に出すのではなく、自分たちのプロダクトの強みは何な、お客さんが求めていることは何か、お客さんと話す時にはこういうことを心がけるなどの営業成果につながる具体的な要素がちゃんと体系的に明示されていたんですね。

セールスイネーブルメントにつては、山下が社内だけでなく、対外的にもアイコン的な存在だったので、セールスフォースの営業職に合った人にはなんらかの影響を与えているんじゃないかなと思うほどでした。二人の創業者もそうですが、現場で使われてきたノウハウをコンサルとして提供してきた、その価値をプロダクトに反映させられる点は日本の企業にとってもと意味があることだと自負しています。

属人化からの脱却。営業人材育成のシステム化を実現するプロダクト

── 多くのテクノロジーやビジネス手法と同じく、アメリカとのタイムラグがある状態で、日本での本格導入はこれからとなるわけですが。

大城 テクノロジー、考え方に関わらず、日本にはいまだに「入ってくる」という感覚なのが現状です。海外のタイムラインを考えると、日本が最先端のものを生み出していくという流れはやはりこれまではほとんどなくて、海外で流行したものが遅れて入ってくるというのが主流です。そこにはキャズムみたいなこともあるでしょうし、日本ではある程度の検証が済んだ”枯れた”ものが入ってくる傾向がありますよね。

そこから考えてもそろそろセールスイネーブルメントの時代が来るんじゃないかという見立てはあります。これまで日本にセールスイネーブルを実現するテクノロジーがなかったかというと別にそういうことではないと思いますが、セールスイネーブルメントに特化したプレイヤーが全くいなかったのは事実です。

── その先駆けに御社と新しいプロダクトがなっていく。

大城 海外で最先端を走っているセールスイネーブルメントのベンダーたち、もそろそろ日本に進出してくるはずなんです。最初のマーケットとして日本は選びづらいけど、今なら日本でも売れると踏んでいる企業は多いでしょう。そこに先駆けてわれわれが、日本でのファーストムーブとして「セールスイネーブルメントといえばR2(R Square & Company)」というイメージとシェアを獲得するタイミングとしてはピッタリだし、ポジショニングもすごくいいポジショニングなのかなと思っています。

── 新規プロダクトは、これまでにない価値を提供するものだと思うですが、セールスイネーブルメント自体が”流行言葉”として誤解されている面もある中で、現在のところの反響はどうなんですか?

大城 引き合いは来てますね。大小、規模を問わず、もちろんスタートアップ、創業10年経っていないような若い会社も多いですが、老舗と呼ばれるような大手企業からもお話は複数いただいております。面白いのが、大手企業では、既存のルートセールスをそのまま活性化させたいというニーズは少なくて、新しいプロジェクト、新規の商材を売りたいという営業活動をする際に、振り返ってみたら当てはまる営業手法がなかったということで、ここで改めて体系化してセールス組織をクイックに立ち上げたいというニーズがあったことです。

── ノウハウがプロダクトに落とし込まれていることで、単なるツールでも、抽象的な概念でもなく、実行力が増すという側面もありますよね。

大城 われわれがセールスイネーブルメントの最先端を走ってきた人間が多く在籍している企業で、その経験がプロダクト設計段階から生かされていることも大きいと思います。もちろんお客様の要望があれば、コンサルティングサービスの提供も行える点も強みの一つなのですが、プロダクトについては、コンサルがっつりというところまではコストをかけられないけど、セールスイネーブルメントのノウハウがプリセットされたプロダクトをうまく活用することで結果を出したたいという間口の広い要望にお応えできるようになっています。正式リリース後は、気軽にセールスイネーブルメントを始めてみようかというクライアントさんにもプロダクトにスケーラビリティを担保していくことで期待に応えていけるかなと思います。

── セールスイネーブルメントによる営業人材の育成、持続的成長をクラウドプロダクトを使って実現させるというのはかなり画期的なことだと思うのですが、こちらはどんな形で提供されることになりそうですか?

大城 セールスイネーブルメントは、一つの局面だけを見ていればいいというものではなく、営業の入り口から出口までを包括的にカバーするものなので、いくつかのアプリケーションを統合した「Enablement App」スイートという形で提供することになります。

現状は私と小泉が、ほぼ2人でプロダクトのほとんどを作っているという状況なのですが、エンジニアはこれからどんどん増やしていく予定ですし、一緒に新しい技術に挑戦してくれる仲間はもっともっと増やしたいなと思っているところです。

── そういう意味では、セールスイネーブルメントのアプリケーションだからこそという技術的な特徴などがあったりするんですかね?

小泉 工夫したところとしてはスケーラビリティに気を配ったところと、マイクロサービスを採用し、独立性のあるアーキテクチャにして今後どんどん拡張できるようにした点です。セールススイネーブルだからこの技術をということはないのですが、今後の発展性、拡張性を想定しつつ必要な機能を実装するしつつ、動きを見切る部分は少し苦労したかもしれません。

日本初のセールスイネーブルメントに特化したプロダクトのリリースに向けて動く大城氏と小泉氏は、同社の持つセールスイネーブルメントのノウハウを最大の強みとしながら、それをIT化、概念をDX化し、プロダクトの力で営業組織、パーソンの持続的成長を促進させるという新たな試みに挑戦している。

後編では、日本の営業のあり方を変えるかもしれない画期的なプロダクトについて、機能や開発ポリシーなどを中心にも少し深掘りして話を聞いていく。

ライター:大塚一樹


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