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「伝説の営業マンはもういらない」セールスイネーブルメントが創出する営業チームを強くするプロダクト 大城祐介、小泉賢(株式会社R-Square & Company)後編

<前編はこちら>

営業活動を強力に支援すると北米ではすでに大きな成果を挙げているSales Enablement(セールスイネーブルメント)に準拠したプロダクトが日本でもついに登場する。株式会社R-Square & Companyが開発中の人材育成、営業成果の向上、人材の発展的、持続的成長を支援するアプリケーション群『Enablement App』を開発している大城祐介取締役CTO、エンジニアの小泉賢洋氏にプロダクトの詳細について聞いた。

その人材育成プログラム、トレーニング、本当に営業成績につながってますか?

概念的なことを言えば、人材育成のための研修をしたり、Eラーニングを行ったり、営業部門の社員の成長に期するような制度策定、補助制度を打ち出している企業は日本にもたくさん存在する。『PDCAを回す』ことは、部署を問わず組織で働くビジネスパーソンの常識だしそれをチェックする人事評価システムも出てきている。

「成功に王道なし」と言われるように、当たり前のことを当たり前にやるのが重要とはよく聞く言葉だが、スローガンだけ掲げても事態は好転しない。

「人材育成だからトレーニングに終始する。『人材育成に力を入れています』というと聞こえはいいのですが、どんなトレーニングをしても、それが成果につながらなければ意味がないんですよね。そのトレーニングにどれくらいの効果が合って、事業のどの部分にどれくらい寄与したのか? 成果につながったのかを継続的にモニタリングして、効果的な施策を継続的に行うところまでやって初めてセールスイネーブルメントが機能するんです」

R-Square & Companyの大城祐介取締役CTOは、セールスイネーブルメントの概念をプロダクトとして効果的に使うためには、ある程度どの業種でも、またどんな人もで、企業が得たい成果に向かって、結果に与する成長を可視化することが重要だと語る。

「セールスイネーブルメントの手法は、まずジョブファンクションをかなり明確に定義することから始まります。そのジョブファンクションを実行するためにどういう行動を取らなければいけないか、どんなスキルを用いてどんな行動をするのかを詳細に定義します。

「営業」と一括りにされてきた仕事の中身を分解して、それを体系的に業務に落とし込んだものスキルマップと呼んでいるのですが、このスキルマップをもとにそれぞれのジョブファンクションの評価の度合い、必要なスキル、ナレッジなどのを水準にした到達度を5段階で評価する機能があります。

「最高の5段階では、これができている状態」という誰が見てもわかる基準を持った上でチェックしそれを継続的に記録していくことで、その社員がどんな状態なのか、どの段階にあるのか、どこが強みでどこに成長の余地があるのか一目瞭然になるんです」

「こうありたい」という最高の状態を出口として、できなければいけないスキル、必要なナレッジを測りつつ、逆引きで成長に導き、組み立てていく。

「これを一気通貫でシステム提供している点が『Enablement App』がこれまで日本になかったと胸を張れる点です。トレーニングだけを管理するではなく、それを使って実際にその人がスキルやナレッジをどれくらい体得できたのかをトラッキングする機能があります」

大城さんによると、結果がすべて、数字がすべての営業の世界が、プロダクトを介してチームとしての基準を明確にすること、それに沿った個々人の成長曲線を促すことでかなりの再現性を持って効率的な人材育成が行えるという。

”伝説の営業マン”も”たたき上げのカリスマ講師””も必要ない、システムとプロダクト、アプリケーション群による営業革命――。CTOとしてプロダクトの要件を策定する立場にある大城氏と、新たなプロダクトをゼロから開発中の同社のエンジニア、小泉氏の話に耳を傾けよう。

営業結果に資する要素は何? ジョブファンクションとスキルマップの明確化

大城 弊社のプロダクトでは、スキルマップがすべてのベースになります。そこにそれぞれのジョブファンクションを実行するために必要な要件が組み込まれている形になります。要するに、入社何年目、このポジションでこのロールを担っている社員に必要なトレーニングはこれという明確な答えが、データと数字、事実に基づいて導き出せるようになっているんです」

── 各企業が「営業成績に資する」と判断したスキルに基づいたスキルマップを、上司が5段階で評価するということですね。

大城 自分はここが強い、ここが足りてないという課題感が、色で分かるんです。各スキルの評価の強弱が色分けされているので、パッと見てすぐ自分のなんとなくの現状評価が見える。同時にがんばらなければいけないことも目に見えて理解できる。

弊社のセールスイネーブルメントでは、営業をSales Planing(セールスプランニング)、(Pipeline Generation(パイプジェネレーション)、Deal Progress( ディールプログレス)、Deal Closing( ディールクロージング) 、Sales Management Operation(セールスマネジメントオペレーション)の5段階に分けているんです。このプロダクトを使えば、営業のサイクルの中でリードを作るときが得意なのか、クロージングの時に力を発揮するのか、どの段階に強いのかも一目瞭然なんです」

── こうした機能を使えば、社員個々の意識向上だけでなく、企業としての社員の公正な評価、「本当に営業に役立つ、結果に直結する要素は何か?」という疑問にも科学的な答えが出せるようになりますね。

大城 社員間の比較ではなく、ここの分が成長した社員は営業成績が上がった、ここに強みがある社員は結果を出しているなどの ”差分”が見えてくるんです。

── 売上結果のグラフを社内に貼り出し、競争心を煽るような企業はさすがに少なくなっていると思いますが、 ”結果の差”だけを見せても社員の営業成績は上がらないのは明らかですよね。

大城 何が違うのか?どんな違いが結果を左右しているのかが重要ですよね。結果の差分を一つひとつトラッキングすることで、成績が思わしくなかった社員にも必要なトレーニング、成長のヒントを的確に与えることができます。

── 評価する側の上司も主観ではなく基準を持って評価することになりますね。

大城 上司が評価する際には、できるだけ簡単にカジュアルに入力できる、アプリケーション上ですぐに数値評価ができることを心がけて機能を実装しました。頻度的にも細かく評価をすることで、その人の成長の度合いや曲線がわかりやすくなり、理解度、習熟度がその後の業績にどう関与したかを短いタームで見ることもできますよね。

社員の成長曲線と、成長のために行なった施策を見比べることで、そもそもその施策が正しかったのかというかという根本に立ち返って判断できるんです。

── そうなると最初の基準、ジョブファンクションの洗い出しとスキルマップの策定がとても重要ですね。

大城 そこは、重要な点ですが、セールスイネーブルメントに関してはわれわれがベストプラクティスを持っているという自負があります。この部分に関してはそれをそのまま提供するという形になります。

それぞれのお客様によって成果指標が異なるので、何を見るかの部分はカスタマイズできるようになっています。ただし営業の5つのフェーズや、根幹となる部分は、お客様が意識しなくてもセールスイネーブルメントを実践できるような仕組み、仕掛けをプロダクト自体に盛り込んでいるので、そこは自信を持ってお届けできるところです。ただし、すべてのお客様にワンサイズフィットではないと思うので、使いやすさのためのカスタマイズ、弊社の強力なコンサルティングサービスとの組み合わせなども要望があれば対応できるという汎用性もあります。

機能拡張、アプリ群の拡張を前提に成長していくプロダクト

── 小泉さん、今回のプロダクトはかなり従来のものとは違うコンセプトで作られているのかなと思うのですが、開発に当たって機能面でエンジニアとして苦労したところはありますか?

小泉 人材育成のトレーニングを実際の営業成果につなげるという試み自体は、セールスイネーブルメントのプロダクトだから実現できたというわけではなく、データや指標の問題なので、驚くような新技術を使っているというわけではないんですね。それよりも、今まで採っていなかったデータを採ることで、さまざまなことに関連性が見えたり、新たな可能性が開けるということはあると思っています。技術的にはもっと前からできたんだと思いますが、セールスイネーブルメントという概念に基づいたシステムを作るために、どういう新しい技術を生かせるのかということで開発を進めています。

大城 それでいうと、どんなデータもなるべく捨てずにとっておくことは徹底しています。クラウドサービスの登場以降、ビッグデータを扱うハードルが下がり、とりあえずとっておいて必要になったら後から取り出すと言うことが可能になりました。

日々の上司の評価チェックとは別に、定期的に人材の評価を行う『Assessment App』というアプリケーションを提供しているのですが、年に一回とか半年ごととか、厳密に社員の評価アセスメントを行うアプリケーションがあるんです。

そのフォームの質問事項で、上司が評定を下すときに「どの項目から評定を下したか」「応えるまでにどれくらい時間をかけたか」なんていうデータをも採っているんですね。現時点ではそれが何に役立つかははっきりわかりませんが、さまざまな予測は立てられますよね。こうしたデータも、機械学習にかける前提で、営業結果につながることも念頭に開発を進めるようにはしています。

小泉 マイクロサービスを採用していることからもわかっていただけるように、『Enablement App』は、リリースして終わりということではなく、機能を増やしたり、スイートの中で必要となるアプリケーションを増やして機能の相互補完をしたりする前提で作られています。次の段階では、現時点では使い道が内容に見える蓄積されたビッグデータを有効利用して、新たな価値を生み出すことができるんじゃないかと思っています。

── プロダクトの進化、アプリ群の増殖も考えるとリリース後もエンジニアにはどんどん必要になってきそうですね。こんなエンジニアと働きたい、こんな人にジョインしてほしいというエンジニア像はありますか?

大城 小泉さんがまさにそうなんですけど、新しい技術が好きで自分がこれまで経験したことのないことにチャレンジすることを面白がってくれるエンジニアですね。

プロダクト開発でいえば創業期なので、エンジニアは仕様に合わせてプログラミングだけを書いていればいいと言う状況ではないのもたしかです。

私も、プロダクト開発に注力しつつ、プロダクトの概要や特徴、魅力を伝える営業活動もやっていますからね(笑)業務をまたがってさまざまなことをする可能性がありますが、「私はエンジニアだから」と変に線を張らずに、スタートアップで起きるさまざまなことを楽しめるような人に来てほしいですね。

小泉 新しい技術を積極的に使うというのは魅力ですよね。開発中のプロダクトに関しても実際にそうなので、プログラミングにおいても新たな挑戦をしたいと思っている人、最新の技術に多くの人の役に立つプロダクトを通じて触ってみたいという人はぜひ。

大城 補足すると、私の前職がGoogleだったこともあって、弊社ではGoogle クラウドをめちゃくちゃ使っています(笑)。 AWS を使ってますという人からすると、ちょっと違う環境にはなるんですけど、Googleクラウドはクラウドサービスとしてもとても面白いと思うので、Googleクラウドの魅力を伝えつつ、一緒に学んでいけたらなと思っています。

── コロナ禍で直接訪問が難しくなったこともあり、「足で稼ぐ」といった日本に古くからある営業のあり方も劇的に変わりそうです。これを機に、データ、数字、事実に基づいた営業人材育成のメソッドが広まることで、日本の働き方にも好影響があるといいですね。

小泉 たしかに。オンライン、リモートをせざるを得なくなってから、営業でもデータ重視の雰囲気ができていますよね。

大城 それは本当にそうですね。リモートに切り替わって、対面しなければ始まらないと切り替えがうまくできていないというお客様の声もよく聞きます。その切り替わりの一助になることもできればと思っています。

ライター:大塚一樹


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