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build service- vol.01「“請負ではなく、未来をともに創るパートナーに”プロダクト開発によるDX支援」 伊藤忠テクノソリューションズ 神原宏行

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伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)は、年間5000億円の売上を誇る日本屈指のITサービス企業だ。今回新設のBuildサービスは、典型的なSIerのイメージとは違う画期的なサービスだという。

Buildサービスの今後やチームでの働き方についてBuildサービス推進のチーム長である神原宏行氏はチームで動くことの重要性に触れながら「多くのエンジニアの皆さんに参画してもらい、素晴らしい働き甲斐を感じられるような最新テクノロジーに触れ、学びあえるエンジニア天国を作りたい」と語る。

濫用される「DX」の真の意味、価値とは?

──サービス内容については、DX支援ということですが、DXという言葉は特に日本では相当広い意味で使われていますよね?

神原そうなんです。そこはきちんと整理する必要があって、ITを使えばすべてがDXみたいな解釈もあるので、私たちは経済産業省の「DX推進指標」で示されている

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や 社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務その ものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

を定義としています。

インターネットで世界がつながり、モバイルの登場と4Gで常時接続が当たり前になって、今では誰もがスマートフォンを持つようになりました。

それらをベースにして様々なサービスが生まれるなど、「デジタル」による急激な変化はここ5、6年で更に加速しています。新型コロナウイルス感染拡大によって、リモートワークが急速に普及したのは今年のこと。

「ビジネス環境の激しい変化」はまさに現在進行形で起こっていて、これもまた急激な技術の発達により、たとえば監視カメラの全画像をデータ化したり、コールセンターの全通話を音声データとして記録したり、そういう大量のデータを扱い、しかもそれをAIで分析することも可能になりました。

IoTやドローン、5Gの普及でリアルとデジタルがどんどんつながっていく世界では、自社の製品、サービス、ビジネスモデルでさえもどんどん変化しないとグローバル市場で戦っていけなくなっているんですね。

──日本はやはり遅れている面も多い?

神原:IT後進国と呼ばれたりすることもあるくらいですから、やっぱり昔の成功体験が大きいがゆえに変化への対応が遅れてしまっているのは否めません。とはいえ、「変化が必要」という認識自体は世界の市場と比べて大きな差はないんです。

それが実行に移せるかどうかのところがボトルネックになってしまっている。そんな現状から、お客さま自身が製品やサービスだけでなく、ビジネスモデルそのもの、企業文化でさえも変えていく。

トヨタ自動車さんが、自動車製造からモビリティサービス事業にシフトしていく取り組みがありますが、あのイメージですよね。事業ドメインの変化に伴ってどんどん研究開発が進む。

そのために必要なものをお客さまと一緒に創造していく、つまり「競争上の優位性を確立すること」が DX の本質であり、変化に追従する力をクライアントの企業が身につける事が必要になっていると考えます。

お客さまと一緒に未来を創っていくパートナー

──CTCとしても、クライアントとの関わりが変わってくるということですよね?

神原:お客さま、特にその企業の情報システム部門から頂いた要望に沿って、既存コストの削減や従来業務の効率化を支援してきました。いいとか悪いとかではなく、SIerとしての仕事が、IT予算をもつ情報システム部向けという形になることは必然でした。

それによって顧客ビジネスの優位性が上がっていますか? と問われると、上がっているとは思うのですが、ドンと上がるようなものにはなっていなかったと思うんです。では、どうすればそうなるのか?

──従来のSIer的な動きだけではそれは難しい。

神原:そうなんです。顧客ビジネスの優位性を目に見える形で上げるためには、新サービスだったり、将来のビジネスを一緒に育てていけるパートナーになる必要があると考えたんです。

今までの連続的な成長の先にあるものではなく、非連続的な成長や価値、「お客さまの先にいるお客さま」が求めているものを「プロダクト開発」を通じて一緒に価値を創出していくことでそれを実現できるのではないかと。

言われたことをやるだけではなくて、お客さまと一緒に未来を創っていくパートナーになれたら良いなということで私たちの取り組みがスタートしたんです。

シアトル発! DX特化型のコンサルSlalom社の衝撃

CTCのDX支援サービスには明確なロールモデルがある。それがシリコンバレーを超えると言われているシアトル発、アメリカのみならず世界を席巻しようとしているスラロームコンサルティング社(Slalom Consulting,以下、Slalom)の存在だ。

今年4月に正式にプロジェクトにジョインした神原も、Slalomへの訪問が大きな転機となってDX支援事業の「秘められた可能性」に眼を開かされた一人だ。

神原:Slalomのベースはコンサルティング事業ですが、約10年前からスタートして、今ではslalom buildと呼ばれる大きな事業体を有している事が特徴です。非常に優秀なエンジニアやデザイナーの集団なんですね。そうした人材が顧客の DX 案件を大量にこなすというスタイルでどんどん成長していっているんです。

エンジニアとデザイナーが約1200人いて、誰もが優秀なので案件がたくさん舞い込んでくる。豊富なリソースと最新技術を使ってどんどん新しい成果を上げていくんです。そうするとオファーが殺到して、DXの知見もどんどん貯まっていく。

さらにいいのは、めちゃくちゃ最先端の楽しいことをやっているので、Slalom自体がめちゃくちゃ魅力的な職場になるんです。その魅力に惹かれて優秀なエンジニアやデザイナーが集まってくる、「クリエイティブ大好きな集団」がどんどん育っていく好循環が生まれているんですね。

──聞いているだけでもクライアントにとって魅力的な集団だということがわかりますね。本当に好循環サイクルが回っている感じですね。

神原:彼らのスタイルが非常に良いなということで、Slalomを手本とした DX 支援ビジネスを立ち上げるチームが発足したという経緯なんです。

ビジネスをお客さまの体験を中心に考えてスタートし、インサイトを得て、 MVP を定義して、小さく作って大きく育てていく…そんなスタートアップやベンチャーのやり方、マインドが必要になってきます。

従来SIerのやり方とは全然違いますし、アジャイルに開発を進める必要がある。必要とする人材の要件も変わってきているんですね。ここが私たちのチームが従来のSIerではないと強調している理由でもあります。

build serviceでは、大企業の事業部門の人たち、今までITを事業そのものに活用していない人たちと一緒に進めていくこともあるわけですから、スタートアップやベンチャーともまた違ったやり方になるわけですが。

今まで自分がやってきたものとは違う次元

──Buildサービスのチームというか、プロジェクトの立ち上げの経緯は?

神原:元を辿ると源流は、クラウドビジネスにおける戦略策定や、クラウドネイティブのアプリケーション開発だったり、新しいことが必要だこれをやっていこうという複数のプロジェクトが源流としてあって、その中からSlalomのやり方を覚えるために現地に行くという目的で6名のエンジニアがシアトルに渡ってSlalomに常駐したんです。このことが大きなきっかけになりました。

──なぜ今このサービスをやるのか? そこにはCTC自体も変化しなければという危機感があったんですか?

神原:上期の決算も史上最高益を出しているくらいですから、いわゆる危機感があって始めたというのは当たらないと思います。 CTC は”Challenging Tomorrow’s Changes”をスローガンに、もともとチャレンジをよしとする社内風土があるので、このチームに限らずいろいろなところで新しいチャレンジが生まれているんです。build serviceもその中の一つ、けれども大きな変化を生む一つだと私は思っています。

──神原さんがプロジェクトにジョインしたのは?

神原:きっかけは昨年の6月にシアトルのSlalomへ出張したことでした。正直に言えば、シアトルに行く前はこれほど大きな変化をもたらすものだと思っていなかったんですね。

現地に行って、Slalomの事業だけでなく、そこで働いているエンジニアやデザイナーチームのあり方をみて「これは素晴らしいな」と、大きく心が動いたんです。

──心を動かされるような出来事があったんですか?

神原:二つあります。

一つはSlalomの手がける事例が、今まで自分がやってきたものとは違う次元というか、それくらい違うなと感じたこと。お客さま自身が、ある意味で”生まれ変わって”しまうほどの変化を起こしている。

提供しているサービスやビジネスモデルがITによって生まれ変わる事例ばかりなんですね。IT大好きな私からしたら、こんな素晴らしいことはない、すごいぞ!となりまして。

もう一つが、従業員の雰囲気が全然違うんですよ。みんな自由な感じがあるし、Google とかもなんか良い雰囲気じゃないですか。1200人までエンジニア、デザイナーが増えてるが、その自由闊達な雰囲気が全く損なわれることなく、その自由さが事業にもちゃんと反映されて生かされている。

Slalomは、ヒエラルキー的な組織ではなく、スーパーフラットな組織として機能しているクリエイター集団だったんです。これは、私たちが将来目指したい姿、手に入れるべき能力の一つになるのは間違いないと感じました。

チームで働くことが成功への鍵

──組織のお話も再三出ています。Slalom的なDX支援を行うためには組織やチーム、働き方も変化していく必要がありそうですね。

神原:冒頭にお話ししたように良くも悪くも弊社は、安定とかお堅いとかどうしてもそういうイメージがあると思うんですよね。採用候補者の方とお話しても、全くイメージと違う、自由な空気でラフにというのは考えてもみなかったと言われるんですね。

採用する立場でいうと今私たちが求めているのは、エンジニアであり、デザイナーであり、一言で言うとクリエイターなんです。お客さまからの要望を受け身でこなすのではなく、一緒に未来を創造していくクリエイター。

しかも、安定した環境でそれに思う存分挑戦できるというのは、お話ししたみなさん、「知らなかった。もっとアピールした方がいい」と言ってくださるくらいなんです(笑)。

──たしかにやりがいのある職場ですし、ある程度の規模の企業と組んでプロジェクトをやれることを考えると、スタートアップやベンチャーでしか得られない経験をさまざまな業界業種で経験できるということでもありますよね。

神原:さまざまな企業の中核となるようなサービス、ビジネスの中に入って一緒にやることができる。いろいろな業界や業種でも経験できるというのは、やりがいがあると思います。

さらにbuild serviceでは、お客さまと一緒にビジネスを考える、その企業の潜在的な可能性を掘り起こす仕事なので、ここでしかできない経験、充実感というのがあると思います。

──コロナ禍を始め大きな変化の時代、企業側も新しいビジネスドメインへの挑戦の気運がありますよね。

神原:先ほどお話ししたように、DXを推進したいというマインドのパーセンテージは日本も欧米も変わらないんですね。いろいろな原因でDXが進まない、ITを活用できていないお客さまを後押しするような ビジネスができればと思っています。

そのためにはSlalomの成功例を日本仕様にローカライズすることも必要だと思いますし、お客さまにヒアリングしながらどんどんアジャストしていく必要があると思っています。

そのために自分も営業的な動きでお客さまのお話に耳を傾けるということも積極的にやっていますし、チームで強くなるということを強く意識しています。

──ITが大好きというお話がありましたが、神原さんにとってもBuild事業はキャリアの大きな転機になりそうですね。

神原:実はシアトルに行く前はマネジメントに専念しようと思っていたんです。でも、Slalomの取り組みを見て、「まだやれることがある」と強く思ったんですね。

自分がエンジニアになろうと思ったこと、それこそ、なぜか父親が買ってきたパソコン、カセットテープでブートするようなパソコンですよ。

それをファミコンも買ってもらえない家で触らせてもらって、「みんなはファミコンでゲームしているけど、プログラミングができればゲームが作れる!」と興奮したことなんかも原体験としてあって、そのころから言葉は違ってもITを使って世の中の役に立つシステムや仕組みを作りたいというのは変わっていないんですね。

──それを実現するサポートを主体的にできるチャンスがやってきたということですね。最後に、build serviceの今後について教えてください。

神原:私たちがなぜこのサービスを提供するのか、これからどういう風に進めていこうとしているのかは、やっぱり「チーム」にかかっていると思っているんです。技術力は当然必要ですが、チームで働くこと、それぞれが能力を発揮することがプロジェクトやサービスの成功につながっていくと思っています。

お手本になったSlalomでは、お客さまのチームと一緒に6つのベースロールに沿ってアジャイルに最適な6〜10人がアサインされるんです。

一人のスーパーエンジニアがゴリゴリ開発していくスタイルも、開発スピードという面ではメリットがあるかもしれませんが、事業を一緒に育てていく、最終的にはお客さまに内製化してもらうという私たちの目的には合わないんです。

チームの一人ひとりがメソトロジーをお客さまと一緒に考え、構築していくスタイルこそが重要で、そのためにはチームとしての力、チームワークが何より重要になってくると思っています。

多くのエンジニアの皆さんに参画してもらい、素晴らしい働き甲斐を感じられるような、最新テクノロジーに触れ、学びあえるエンジニア天国を作りたいです。そうすることで、素晴らしい価値を提供できる事業として成長していけると考えています。

ライター:大塚一樹

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