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「在庫問題」の解決にITとAIで挑め!新しい小売業をフル回転でつくるー 瀬川直寛、荻原昂大&持田春嘉(フルカイテン株式会社)前編

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「在庫を増やせば売り上げは増えるが余剰在庫が増えてしまう。仕入れを減らして在庫を削減すると売り上げが減る」

すべての小売業が頭を悩ませる「在庫問題」に正面から取り組むフルカイテン株式会社は、クラウドサービス『FULL KAITEN』を提供しています。

「”売り上げが増えて在庫が減る”という今まで両立が難しかった課題を解決したい」

 すべての小売業に内在する「在庫問題」の解決を目指して2017年にローンチされた『FULL KAITEN』は、バージョン2リリースを経て、数々の大手企業に採用され、日本の小売り、卸、メーカー各社の在庫の適正化、経常増益に貢献しています。『FULL KAITEN』を開発・提供するフルカイテン株式会社の瀬川直寛代表取締役は、「在庫問題」こそ、新時代の扉を開く鍵だと語ります。

 バージョン3の開発も進んでいるという『FULL KAITEN」を支えるべく2020年4月に加入したバックエンドエンジニアの荻原昂大さんと、データサイエンティストの持田春嘉さん、2名の社員を交え、『FULL KAITEN』の今後、フルカイテン株式会社の目指す未来についてお聞きしました。

小売業の大問題!「在庫問題」を”フル回転”で解決するソリューション

――まず、御社の事業、プロダクトについて聞かせてください。

瀬川 弊社は、小売り・卸・メーカー、あらゆる業種の「在庫問題」を解決するソフトウエアの開発、サービスの提供を行っている企業です。まず、「在庫問題」について説明させていただきたいのですが、商品の在庫を持ち、それを売って売り上げをつくる小売業では、たくさん在庫を持てば売り上げが増える、しかし、不良在庫を抱えるリスクが高まる。かといって、リスクを避けて仕入れを減らせば売り上げは減ってしまうというジレンマにずっと悩まされ続けてきました。

売り上げ増加と在庫削減の両立は古くからさまざまな企業が取り組んできた大きな課題なんですけど、ほとんど解決されないまま放置されてきました。これを解決するには「在庫問題」が起きる原因を正しく理解し、原因を特定しなければなりません。弊社が提供する『FULL KAITEN』は、企業に在庫の売れ残りを防ぐためのインサイトをさまざまな視点から提供するSaaS型サービスです。

『FULL KAITEN』を導入していただくと、「売り上げが増えて在庫が減る」。これまでできなかった、新しい価値を提供してるんです。

――事業の中身、プロダクトの中身について詳しく聞いていきたいんですけど、まず社名、プロダクト名にもなっている「フルカイテン」というネーミングがユニークですよね。

瀬川 在庫をフル回転させたいっていう、そのままですよね(笑)。実は、この社名になる前に『ハモンズ』という小売り事業、具体的にはベビー服のEC事業をやっていたんですよ。その時に自身も在庫問題に悩まされて、なんと3回も倒産しかけたんです。どうにか倒産は免れましたが、在庫の恐ろしさを実感したんです。とにかく在庫を回転させていかないと会社の資金が出て行ったきり戻ってこない。これが事業をやる上でもっとも大切なこと、在庫を回転させるということがすべてだと痛感したんです。

――その経験から「在庫問題の解決」に絞った事業に転換したんですね。創業当時、こうした事業を行っている会社は他にあったんですか?

瀬川 創業当時も現在も、本当の意味での競合他社っていないと思っているんですよ。というのも、「在庫問題」を深刻に受け止めている企業がたくさんあって、個別にはさまざまな対策をしてこられたんですけど、在庫問題が起きるメカニズムを理解して、適切な対策を行えている企業はほぼないんですね。だからどの企業も決してこれまでのやり方がベストだと思っているわけではないのですが、他に良い方法が思い浮かばないので、在庫問題は小売業にとって”諦められた顕在ニーズ”みたいな感じだったんですね。

大量生産大量消費時代は、「在庫を増やして売り上げを増やす」が正義だったのかもしれませんが、これだけ物が余っている世の中で全国の企業がどんどん在庫を増やしていけば、在庫が売れ残るのは当然なんです。みなさん、今度は在庫を減らそうとなんとかするんですけど、単運に在庫を減らしてしまうと、売り上げが減ってしまうんです。だから売上増加と在庫削減を両立させれるために需要を予測しようという発想になりがちなんですけど、実は予測だけでは在庫問題って解決できないんですよ。

私たちが『FULL KAITEN』というプロダクトにたどり着いたのは、いくつか理由がありまして、一つは私自身が大学生の時に機械学習、今で言うAIですね。とか、統計学を研究していたことです。自分がEC事業で在庫問題に苦しめられた時に、これってAIとか統計で予測管理したらどうにかなるんじゃ?と思い始めたんですね。

いろいろ考えて計算してやってみたんですけど、その時に「予測するだけじゃどうにもならない」ということに気づいたんですよ。予測の限界っていうんですかね。

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予測の限界を超えた在庫評価システム

――AIや統計学的なアプローチで予測するだけでは「在庫問題」は解決できないと。

瀬川 予測だけではどうにもならない世界がある。じゃあそれはどうやったら解決できるのかなというのを考え始めたんです。

 前身の会社でEC事業を展開して、2カ月先の給料が払えない! というところまでに追い込まれた苦い経験が、ドメイン知識と言ったらなんか軽いんですけど、痛い思いをし、得た経験値、体験値があった。

 AIで需要予測するシステムを開発できますという企業はいくつもありますが、実際はカオス理論という数学理論が証明しているように抜群な精度で需要予測するのは極めて困難なんです。だからAIだけでは在庫問題は解決できないのですが、なぜ在庫問題が起きるのかを突き詰めると決して予測の精度だけが原因ではないことがわかるんです。私はその本質に6年半の小売業で3回も倒産危機を経験し乗り越える過程でたどり着きました。だからFULL KAITENにはAIのようなテクノロジーと深いドメイン知識の両方が活かされているんです。

 こういう企業は弊社しかないと思います。この点については、もう偶然、運が良かったと思っているんですが、大学の時に勉強してきたこと、卒業してからIT業界で20年くらい学んだこと、6年間小売り事業でやってきたこと全部がフルカイテンで今やっていることにつながっているんです。

――「予測の限界」はたしかに納得感ありますよね。「在庫問題」は顕在化されていたのに結局みんなそこで苦しんでいる。『FULL KAITEN』には、予測を超えたテクノロジーが秘められている?

瀬川 予測は経験則よりも全然いいと思いますし、弊社でもデータサイエンティストがデータに基づいて予測を行っているので、意味がないと言ってしまうのは変な話なんですけど、でも予測って、前提が変わらない世界で条件を変えずに行う、物理でいう「閉じた系(閉鎖系)」なんですよね。

 実社会はそうはいきません。販売員が出がけに夫婦ゲンカをして出勤してきました。まったく気分が乗りません。この人は昨日と同じように売り上げられるでしょうか? まぁその日は売れないですよね。これは一例ですが、そんな前提になかった条件分岐がいろいろなところで生まれるんです。

 魔法の杖みたいに何でも解決してくれる予測はやっぱり無理なんですね。この予測の限界を補うのが、『FULL KAITEN』の在庫管理の概念です。

――従来の物との違いは?

 多くの企業は、「よく売れる商品」で在庫をつくっています。売り上げの結果はすぐに出ますから、売れ筋の商品と、「あまり売れない商品」は大体把握できているんですよ。でも、よくよく考えてみると、商品は「よく売れる商品」と「あまり売れない商品」の2パターンだけじゃないですよね。商品在庫としては多めだけれど、売り上げには貢献している商品があったり、いろいろな濃さのグラデーションになっているんです。

 商品在庫の評価は「売れている」か「売れていないか」の2軸じゃない。『FULL KAITEN』では、このグラデーション部分の在庫評価もできるようにな設計になっているんです。

 手持ちの在庫で売り上げがつくれるのは、在庫が減ることとイコール。在庫の評価を適正に行って、予測につなげていく機能を持っているんです。

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エンジニア3名から7名、さらに倍増へ フルカイテンの人材戦略

「在庫問題」を解決する画期的なプロダクトを展開するフルカイテン株式会社の背景を瀬川代表に語っていただきましたが、2017年の『FULL KAITEN』ローンチから急成長を続けている同社では、エンジニアの増員が喫緊の課題でした。

 ここからは2020年4月にジョインした2名の社員、バックエンドエンジニアの荻原昂大さんと、データサイエンティストの持田春嘉さんにも加わってもらい、同社の人材戦略、今後のプロダクトの行方について話を進めます。

瀬川 去年の秋くらいまで、弊社のエンジニアは3人しかいなかったんですよ。もう「ひぃひぃ」言いながらプロダクトをつくっていました。現在のエンジニアはやっと7名。新型コロナウイルス感染拡大の影響で多少計画は変わっていますけど、何とか早い段階でエンジニアの数を現在の倍ぐらいにしたいと思っているんです。

――事業が新たなフェーズに突入したのに合わせて入社したのが、荻原さんと持田さんというわけですね。お二人にもお話を聞いていこうと思うのですが、まずは現在、それぞれどんなことを取り組んでいるのかを教えてください。

荻原 バックエンドエンジニアとしてサービスのシステム部分の開発を行っています。具体的にメインになっているのは、お客様からいただいたデータをシステムに反映する仕組みづくりですが、『FULL KAITEN』が現行メインで可動しているバージョン2からバージョン3への移行を計画していることもあって、より良いプロダクトの開発に貢献していきたいと思っています。

持田 機械学習エンジニアとして、機械学習システムに必要なパイプラインの設計、モデル作成を行っています。直近では、貯まったデータをきれいに整形して、モデルを作って毎日精度をチェックするという仕組みを手がけています。これは、機械学習のシステムを運用していくなら必ず必要な部分ですが、まだまだ手つかずな部分も多いので基盤となるものをつくっている段階です。

 システムの基盤部分の整備ができたら、モデルの精度向上にも取り組みたいですし、現状は予測に使ってる機械学習、予測以外にも適用していければと考えています。

後編へ続く>

ライター:大塚一樹

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