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「エンジニアが事業価値をつくる『BOTCHAN』の現在地」 株式会社wevnal 前田康統・鈴木アレン啓太

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チャットボットプラットホーム『BOTCHAN』を引っ提げ、市場に獲得型接客ツールという価値を提示している株式会社wevnalは「完全な営業会社だった」創業期から、自社プロダクト開発、テック企業への移行を進め、起業11年目にしてミッション・ビジョン・バリューを一新し、第3創業期に入った。9月には資金調達にも成功し、「広告代理店から事業会社へ」と変革を続ける注目企業の”現在地”を、創業者の一人で、取締役副社長でもある前田康統CPO(写真右)、プロダクトの進化、会社のテクノロジードリブン化をさらに進める上でのキーマンである鈴木アレン啓太CTO(写真左)に聞いた。

広告代理店として起業した当初から持ち続けた志

2011年4月、前職で同期だった、磯山博文(現・代表取締役社長)、前田康統(取締役副社長兼CPO)、森元昭博(常務取締役兼SNSマーケティング事業部長)の3人で起業した株式会社wevnalは、ネット専業の広告代理店としてスタートした。

「4年目くらいからSNSの広告に注力したんです。市場的にはFacebookの広告が盛り上がっていたタイミングだったんですけど、うちはあえてTwitter広告にいわば”逆張り”をして事業をグロースできたんです。ただ創業当初から、『自分たちがつくりだしたものを世界に広げたい』という志は、3人とも共通して持っていました」

 主力プロダクトである『BOTCHAN』をはじめとする新規事業開発に従事する前田康統は、wevnalが自社プロダクトを中心に据えた事業会社に移行していったのは、実は必然だったと語る。

 「広告代理店として結果を出した後、ご多分に漏れず営業利益率の課題にぶつかりました。そこで、Twitterのハッシュタグを使ったキャンペーンツールをつくったんです。SNS広告とセットで営業をかけたらプチヒットした。いまにして思えば、これが“自社プロダクト”の最初の歩みだったのかもしれません」

 自分たちがつくりだしたものを世界に広げたいという志はあったが、まだそれは漠然としていた。簡単なツールとはいえ、「自分たちがつくったもの」が営業に貢献し、顧客の反応が変化したことは、前田をはじめとする創業メンバーの心を大きく動かした。

ベトナムかインドネシアか?『BOTCHAN』の”はじめの一歩”

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「自社プロダクトだ!となって、でも実際構想から数えると5,6年かかっているんですよね」

現在の『BOTCHAN』につながるプロジェクトがスタートしたのは、2015年のこと。自社プロダクト開発のためにはエンジニアが必要ということで、当時盛んだったASEAN地域への視察に出掛けた。

 「2015年に代表の磯山と『とにかく情報を得よう』というテンションでASEAN諸国に視察に行ったんです。まず降り立ったのはベトナム。磯山はホーチミン、私はハノイ、それからホーチミンで合流して、インドネシアのジャカルタに。その後シンガポールに行って帰国というのを2週間くらいで回ったんです」

現在はwevnalの海外展開の責任者でもある前田は、そもそも東南アジア市場に大きな魅力を感じていた。

 「人口や経済成長スピード、ポテンシャルを考えるとワクワクしかなかった。国自体がベンチャーみたいなもので、特にインドネシアの人口は魅力でした」

2億7千万人の人口を誇るインドネシアは、SNS人口の多さで世界的にも注目されているIT市場を持つ。視察の中で、前田はインドネシアを推したが、この後に開始されるwevnalのオフショア開発はベトナムに決まった。

「インドネシア滞在の最終日に磯山と話し合ったんです。そこで、『会社にとって今一番大切なものは?』と問われて『エンジニアだ』と答えました。個人のwantsは、完全にインドネシア。インドネシアの市場に打って出るためにもここで開発をと思っていましたが、会社のこと、すぐにでもエンジニアを安定的に確保するという話になると、ベトナムの方が適していたんです。宗教の問題で、インドネシアにはラマダンがある。すでに進出している日本企業もこれに苦労していた。個人的には今後グローバル化がさらに進むこと、ダイバーシティの観点からイスラム教徒の方たちと働くことにも興味があったのですが、『いまじゃない』ということで、ベトナムで開発をスタートさせることになりました」

見守りアプリからチャットボット? 自社の強みを生かしたプロダクトの誕生

それから、2週間ベトナムにいて帰国するという行ったり来たりの生活が始まった。念願の自社プロダクト開発が始まったが、当時のプロダクトは、『BOTCHAN』でも、チャットボットですらなかった。

「IoTの見守りアプリを企画して、独居老人の孤独死を防ぐプロダクトをつくっていました。このプロダクトは、Microsoft Innovation Award 2016でファイナリストになりました。事業としては当時注目されていた介護に注目してヘルスケア産業へということだったのですが、その後、未病予防医療に注目が移って結果的に賞が取れただけという感じになってしまいました。でもこれが大きくて、自社開発でプロダクトをつくって評価されるという可能性が見えた。同時にヘルスケアで死ぬほどがんばれるか?と自問したときに本当にやりたいことはこれじゃないということがわかった。そこで、本当にやりたいことにフォーカスしていって、たどり着いたのがAIを使った、売り上げをつくれる獲得型チャットボットの開発だったんです」

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チャットボットといえばカスタマーサービスとしてFAQなどに利用されるイメージがあるが、web特化の広告代理店としてのノウハウを持つ同社では、開発開始当初からホームページなどでの反響を上げ、売り上げにダイレクトにつなげるチャットボットを志向した。

タイで行われたStartup Thailand 2017での出展が初お目見えとなったが、web接客、チャットでの接客の文化のないタイでは「まったく売れなかったし、最終的にはこちらから『それなら買わなくていいです』って言ってました(笑)」と前田本人が苦笑するくらい売れなかったという。

しかし、日本市場でのニーズは確実にある。手始めに、問い合わせや予約のスタティックなフォームをダイナミックにするCVR 改善型の接客ツール、『BOTCHAN EFO』をリリースしたが、当時はまだ”熱血営業マン”主体の組織体だったこともあり、エラーが多発する事態になった。

「エンジニアから上がって来たものをすぐに出すみたいな、これでいけたんじゃない?というのはあって、エラーが多発したんです。組織を変えて行くために、エンジニアを増員したり、さまざまな改革を進めながらエラー修正と開発を並行して行っていました。チャットの中でクレジットカード決済が可能な『BOTCHAN PAYMENT』をリリースするなど、独自のノウハウでプロダクトは進化していったんですけど、やはりエラーがネックになっていた」

全サーバダウン! 非常事態から救世主登場

2019年の終わり頃、『BOTCHAN』サーバーがすべてダウンするという“大事件“が起きる。原因は「サーバーもセパレートされていないまま追加機能開発を次々に行なっていた。アーキテクチャもぐちゃぐちゃ。一つの商品のサーバーが落ちただけで全部落ちるような設計だった」ことにあった。

「この時に今のチームでは立て直せないと思った。誰かにお願いしなければダメだとなって、いろいろなつてをたどって、『学生時代にMicrosoftのプログラミングコンテストで世界4位になったすごいエンジニアがいる』と紹介してもらったのが、アレンだった」

Microsoft入社後、Magic Moment、リクルートなどで要職を務めた鈴木アレン啓太は、2019年に株式会社Apolloを創業したばかり。周囲からも「スゴ腕エンジニア」として評価されていた鈴木を口説くのは、容易ではないと前田も思っていた。

「会ってもらって、一言、二言話しただけで『コイツは優秀だ』というのがわかったし、何とかして引き込もうと思いました(笑)。で、どうやって彼に手伝ってもらえるかを考えたんですが、変にカッコつけてプレゼンしても絶対来ない。もうこれは『やばいから助けてくれ』と。こちらの手の内をすべて明かして助けてくれと言うしかないと思ったんです」

一方、鈴木の方からは営業中心の代理店からスタートしたwevnalはどう見えていたのか?意外にも「それがよかった」と鈴木は振り返る。

「最初はここのフロアで一番狭い会議室、4人くらいしか入れないところでぎゅうぎゅうになって話を聞いたんですよね。感想は『うわ、めっちゃ営業会社だ』って思いましたね(笑)。ただ、サービスサイトを見て『BOTCHAN』の強みが顧客の売り上げを最大化する点にあるところに興味を持ったんです。顧客の売り上げにエンジニアが直接コミットできる。プロダクトがクライアント、自社の利益に最大限貢献できる。ここに直接関与できるのって、エンジニアにとってはワクワクでしかない。エラーが頻発するプロダクトの立て直しをということだったんですけど、このプロダクトであれば問題なく立て直せるなと思ったので、ぜひ!という返事をしました」

「エンジニアが事業価値をつくっていける」営業会社の出自が強みに

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鈴木は、営業職の強い社風、そして広告代理店ならではのノウハウを生かしたプロダクトを持つwevnalに「ロジカルに考えた時に可能性しか感じなかった」と話す。

「パッション、必死さ、目の前で起きていることを何とかしなきゃいけないというのはもちろんあったんですが、ある意味ではクオリティーよりもスピードを重視して、プロダクトをリリースしていく圧倒的なスピード感はすごいなと。自分はエンジニア出身なのでバッファはあればあるだけいいという考えですが、経営層がこのスピード感を持っているのはすごいと正直に思いました。これって、会社の事業価値を何がつくっているのかということとも関係すると思っていて、ジョインしてさらに強く感じていますが、プロダクト、エンジニアがwevnalの事業価値をつくっていける環境があるんですね。なので、アイデアを形にするスピード感やダイレクト感をそのままに、そこに安定をもたらすことができる自分の仕事にやりがいを感じたんです」

鈴木が加わったことで「鈴木と働けること」に魅力を感じるエンジニアが集まってくるという副次的効果も期待できる。「エンジニア組織のタレントがそろった」という前田は『BOTCHAN』と「それ以降」にも大きな期待をかけている。

資金調達で「外へ開いた」ミッション、ビジョン、バリューを設定 さらなる飛躍へ

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9月には資金調達も発表し、wevnalの「第3創業期」は自分たちだけでなく、市場からもこれまでとは次元の違う期待をかけられている、と前田は考えている。

「これまで労働市場しか知らなかったわれわれが、資本市場に行くって感じですよね。プロダクトに関しても、われわれは『いいプロダクトをつくること、売れるプロダクトであること』がバリューだと思っていたんですが、多くの投資家さんにプレゼンしていく中で、投資価値を判断するポイントはそればかりではないということにも気づけました」

新たに設定されたミッションは、「人とテクノロジーで情報を紡ぎ、日常にワクワクを」。つくる、売るだけでなく、売った先に社会をどう変えるか、自分たちがそれにどうコミットしていくのかをメンバー全員が意識する方向性を打ち出した。ビジョン「コミュニケーションをハックし、ワクワクするブランド体験を実現」、ワクワクするユーザー体験を実現するための4つのバリュー「Challenger」「Professional」「Honesty」「+One」はいずれも、wevnalがその成り立ち、メンバーの属性から培ってきた独特の企業風土の上に、エンジニアの力と事業の社会的価値を対内的にも対外的にも宣言するものだ。改めて、エンジニアと組織のあり方についてそれぞれに聞いた。

「もちろんキャッチアップしなければいけないし、把握してはいるんですけど、エンジニアのやっている仕事の本当のところはやっぱりわからないところもある。だからお互いに正直であることが大切だと思ってるんです。ミスならミスってちゃんと『てへぺろ』できる文化というか、コミュニケーションできる企業、組織でありたいと思っています」(前田)

「プロダクトとしてもコミュニケーションという定量化できないモノを扱うわけですからそこの部分は重要ですよね。エンジニアとしては、事業のあり方にコミットできるというのはどこの会社でもできることではないですし、そこは非常に魅力的だと思っています」(鈴木)

『BOTCHAN』が市場に大きなインパクトを与えているのは間違いないが、新規開発を担う前田は、新たな構想は必ずしもチャットボット、AIの延長線上にあるわけではないと語る。

 「事業体すら変わってもいいと思っているんですが、唯一、ミッションにもある『データを紡ぐ』という背骨だけは通す。チャットボットも、データが増えれば増えるほど、使ってもらえば使ってもらえるほど頭がよくなるんです。だからクライアントもそうですけど、アライアンスが重要なんですね。データとデータをつなげる、それを一緒に紡いでいくのがwevnalのあり方」

創業当初から『自分たちがつくりだしたものを世界に広げたい』という志を持ち続けていた前田は、「ようやく外に発信できるプロダクトと”言葉”を持つことができた」と胸を張る。

ライター:大塚一樹

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本サイト掲載の全て記事は、フォークウェル編集部が監修しています。編集部では、企画・執筆・編集・入稿の全工程をチェックしています。

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