Forkwell Press

SHARE

目次

目次

SHARE

「エンジニア、3児の父、子ども達と歩んだ9年間でわかったこと」小田中 育生

「エンジニア、3児の父、子ども達と歩んだ9年間でわかったこと」小田中 育生

子育てにおいて、こんな悩みはありませんか?

  • どうしたら、パートナーの力になれるのか
  • 子育てと勉強の両立が大変
  • この状況で自分のキャリアはどうなってしまうのだろうか

本イベントは「自身のキャリアの不安と向き合いながらも、パートナーとチームで子育てに取り組んでいるエンジニアを応援するための企画」です。

小田中 育生

株式会社ナビタイムジャパン VP of Engineering

経路探索の研究開発部門責任者としてMaaS時代にフィットしたマルチモーダル経路探索の開発を推進し移動体験のアップデートにコミットメント。VPoEとしてはいきいきとした組織づくりを目指して社内向けアジャイル開発ガイドラインの作成および推進などに取り組んでいる。 著書「いちばんやさしいアジャイル開発の教本」インプレス

今まさに子育ての渦中にいるあなたへ

勉強する時間がない。成長できてない。

朝起きて子どもを園に送り、仕事に就く。夜はまた子どもと一緒にすごしながら家事をやりくりする。なかなか眠らない子どもの寝かしつけがようやく終わった。もう疲労困憊、なにかをする気にはなれない。けれども自分の周りには、この時間にもコードを書いたり本を読んだり勉強会に参加しているエンジニアがいる。自分はこれでいいんだろうか。

焦らなくていい。今できる最良の選択をしている。

子どもは成長する。自分たちも成長する。手がかかっていたあの子もいつかは一人で歩き出し、一人で眠り、巣立っていく。その時間をどう過ごすかは自分次第。何をしたって後悔のない選択はないから、自分は最良の選択をしていると信じる。

エンジニア、3児の父、子ども達と歩んだ9年間でわかったこと

  • 2013年、長女誕生 男性の子育て参加はまだ稀だった
  • 2015年、長男誕生 子育てに参加する男性が増えてきた
  • 2018年、次男誕生 子育てに参加することが「当たり前」の時代

小田中:株式会社ナビタイムジャパンで VP of Engineering を務める小田中と申します。3児の父です。本講演では私自身の成功・失敗をもとに皆様のお役に立つようなトピックを用意しています。

  • 子育てのアーリーステージにおける成功・失敗事例を知り自身の行動に役立てることができる
  • 家族との時間を大切にしながら自身のキャリア形成を実現するタイムマネジメント術が身につく

家族との時間はもちろん大切ですが、自身のキャリアも大切ですよね。ジレンマをどう解決し、どうタイムマネジメントを実現するかをお話していきます。

本登壇のきっかけはnoteで公開した記事です。ぜひご覧ください。子育てに手がかかる時期、自己研鑽できないことにあせらなくて良いんじゃない?

ナビタイムジャパンの育休取得率、男性 81.3% 女性 100%

小田中:2021年の育休取得率は、男性 81.3% 女性 100%で、男性の育休取得率が高く、*プラチナくるみんも取得しています。男性の育休取得率は2019年以降、50%以上で推移しており育休にコミットしやすい環境です。ちなみに2021年度の育休平均取得期間は2ヶ月でした。*プラチナくるみん・・・「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定を受けた証

「育休」全然、休めない問題

小田中:育休取得率が高いから万々歳かというと、実はそうでもないんです。現場の上司は「休んできてね」なんていうのですが、当事者は「全然、休みじゃない!」「時間がない!」「眠れない」「役に立ってる気がしない」と感じます。実際はこんなにも戦場なのに、休んでいる・楽していると思われているのではないか?と不安を抱えているんです。

自分のちっぽけさに押しつぶされそうになる

小田中:長女が誕生した2013年を振り返ってみると、正直、子育てにも勉強にもコミットできていなかったように感じます。だけどネットをひらけば、家事も仕事も完璧にこなすあの人が目に入る。自分のちっぽけさに押しつぶされそうになる。けれども「よそはよそ、うちはうち」と、自分たちにできることをやって、少しずつ改善していくしかない。そうやって自分のペースを掴んできました。そんな私も最近では「結構うまくやれているな」と心境が変化してきています。次は9年間の子育て事情についてお話します。

「エンジニア、3児の父、子ども達と歩んだ9年間でわかったこと」小田中 育生

2013年、初めての子育て 近年稀に見る “無力感”

小田中:長女が誕生した2013年は里帰り出産がポピュラーで、私の妻も九州の実家に戻っていたのですが、ある日突然「今から帝王切開することになった」と電話がありパニックに。隣で聞いていた同僚の「小田中さん、この飛行機なら間に合います。ナビタイムで予約してね!」とちゃっかりサポートで、なんとか九州に向かったことを覚えています。そして出産後、1〜2ヶ月ほどで妻と長女が帰ってきたのですが、このとき近年稀に見る “無力感”を味わいました。同じ頃、仕事では初めてマネジメントを担う役割に就きましたが、はじめからうまくいくはずもなく、家庭でも仕事でも無力感を味わう日々でした。

子育てに Learning の時間なし

小田中:神経言語プログラミング(NLP)では、学習の5段階レベルというものがあります。新しいことを学ぶとき、はじめは何も知らないし、できないのが当たり前。そこから手を動かし学ぶことで、徐々に習得していく訳です。しかし赤ちゃんは私たちのこれまでの生活に容赦なく割り込んできます。Learning の時間なんて取れません。今ある能力でなんとかやっていくしかない、非効率な状態が続きました。仕事でも残業が多かったことを覚えています。残業が多いから家庭のこともあまりできない。一方、少し時代に助けられた面もありました。

男性の子育て参加はまだ稀、ちょっと手伝えば褒められる時代

小田中:2013年頃は父親がひとりで子どもを見ていると「えらいパパだ!」と褒められる時代だったし、妻も手伝えば「ありがとう」と感謝してくれました。だからうまくいかなくても気力が絶えることはありませんでした。できることからやるしかない!という気持ちでいっぱい。娘から「ママがいい!」と言われても、めげずに「私がママよ」と言って遊んでみたり……。

「エンジニア、3児の父、子ども達と歩んだ9年間でわかったこと」小田中 育生

小田中:それから、いくら時間がなくても Learning できないのはマズいと思い、まず ブクログ という読書時間を可視化するサービスを使って記録することにしました。そして学んだことを業務時間でトレーニングするというサイクルを回すようになりました。

「エンジニア、3児の父、子ども達と歩んだ9年間でわかったこと」小田中 育生

2015年、長男誕生。子育ての大変さは2倍ではなく2乗

小田中:妻と相談し初の休暇を取得しました。会社に育休制度はあったのでしょうが、どう取得するのかわからなかったし無給だと誤解していたので、通常の休みを2週間取得しました。2015年は子育てに参加する男性が増えてきた時代で、男性の休暇取得に対する心理的な障壁はあまりありませんでした。それでも子どもの行事などで父親を見かけることはほとんどなく、肩身が狭かったことは事実です。この頃、仕事も役割が増えとんでもない忙しさに。子どもが2人だから忙しさも2倍と思いきや、肌感覚では2乗の忙しさでした。

「エンジニア、3児の父、子ども達と歩んだ9年間でわかったこと」小田中 育生

忙しくてもLearningを続け「成果を出せているかも」心にも余裕が

小田中:それでも Learning → Training は粛々と続け、今の自分の礎になる本と出合いました。コンスタントに本を読むことでインプットが増え、アウトプットの機会も出てきました。2017年には Microsoft Tech Summit に登壇するなど、少しずつ「自分は成果を出せているかも」と実感できました。

不思議なもので心に余裕ができると、完璧ではないにしろ家事も分担できるようになってきます。それまで妻の “聖域” である家事への口出しは控えていましたが「食洗機買ってみようよ」「これは手を抜いていいんじゃない?」と意見を口に出せるように。

自分の考え方が大きく変わるきっかけになったのはこの本です。

「エンジニア、3児の父、子ども達と歩んだ9年間でわかったこと」小田中 育生

小田中:この本にあるとおり、頭の中のタスクを全て書き出し整理してみました。そこで気付いたのは、自分は仕事と子育てを別物として考えているということでした。でも子どもが割り込んでくることは急な仕事の依頼と似ているし、何も知らない子どもに新しいことを教える作業も仕事ではよくあること。子育てと仕事は似ている、生かせることがたくさんあると気付いたとき、子育てへの焦燥感は薄れていきました。

「エンジニア、3児の父、子ども達と歩んだ9年間でわかったこと」小田中 育生

2018年、次男誕生 子育てに参加することが「当たり前」の時代

小田中:2018年は「子育てに参加してえらいね」ではなく「なんで子育てしないの」という時代に。ナビタイムの男性育休取得率が5割を超えたのもこの頃です。父親と子どもだけで出かけている風景をよく目にするようになりました。もちろん子ども3人を育てる大変さは無限大です。それでも相変わらずインプット量は充実していて、着実に自分のスタイルが確立されてきたように思います。通勤時間、料理中、子どものYouTube閲覧中を使ってインプットを心がけました。

“最近” は家のこともやってくれて助かるよ、ありがとう。

小田中:研究開発において大きめの成果を出せたことや憧れのデブサミへの初登壇など仕事は充実していました。そんなときに妻から言われた「最近はすごく家のこともやってくれて助かるよ。ありがとう。」という言葉。嬉しさと同時に「最近は」という言葉が引っかかりました。だけどふと思い返してみると、2013年はそもそも子育てをしているだけで褒められる時代に乗っかっていたし、2015年は「周りの父親も参加していないのだから自分も行かない」と自分の気持ちを優先していたことに気付きました。一番のステークホルダーである妻との対話が足りていなかったんだなと思い知りました。 

「エンジニア、3児の父、子ども達と歩んだ9年間でわかったこと」小田中 育生

大好きなアジャイルをプライベートでは実践できていなかった

小田中:私はアジャイル開発がとても好きで仕事でも大切にしています。アジャイル開発の要は対話であると指導していながら、家庭では実現できていなかったことに気付き、ショックを受けました。

「エンジニア、3児の父、子ども達と歩んだ9年間でわかったこと」小田中 育生

コロナでも、子育てが忙しくても、成果は出せた

小田中:そして訪れたコロナ渦。自粛中は家族全員が家にいますから「みんなこんなことをやっていたんだな」と手に取るように動きがわかりますし、子ども達も「この人(パパ)、働いてたんだな」と初めて認識したようでした。家庭のことが全て見えてしまうので、晴れたら洗濯物を外に出す、雨が降ったら洗濯物を取り込む、子どもが散らかしたら片付ける、とにかく家事を見過ごすことができなくなりました。

「エンジニア、3児の父、子ども達と歩んだ9年間でわかったこと」小田中 育生

そうするとインプットに影響が出てきます。

通勤時間がなくなり、家事が増え、読書量は170冊から100冊まで落ち込みました。それでも十分な量のインプットはできているし、いい本にも出会えたので不満はありません。仕事でも成果を出せていました。とくに自分のタイムマネジメントを言語化した「時間がない」症候群、その傾向と対策 は、多くの方に読んでもらえました。「子育てが忙しくても成果って出せるんだな」と実感を得ることができました。

自分の時間は減っているのに、時間を有効活用できている理由

小田中:9年前に比べ仕事も家事も育児も随分と上達しました。以前は妻へ旅行を勧めても、怖がって外出しませんでしたが、今ではひとりで旅行できるほどです。子どもが3人に増えて自分の時間は明らかに減っているのに、なぜ余裕が出てきたのかを皆さんにお伝えしたいと思います。

「エンジニア、3児の父、子ども達と歩んだ9年間でわかったこと」小田中 育生

TODOの洗い出し、自分のキャパを見極める

小田中:私が実行したのは *GTD の考え方に基づき、まずTODOを洗い出し、自分のキャパを見極めることです。どんな人でも、自分のキャパを超える業務はできませんよね。かといってキャパいっぱいにアウトプットを詰め込むと、余裕がありません。ではどうするのかを次で解説します。

Getting Things Doneの略称。頭の中のすべてのタスクを脳内から追い出して、1つのタスクに集中して完了させるアプローチです。

引用元:GTD®とは

TODOをインプット・アウトプットに分ける

小田中:キャパの洗い出しができたら、TODOをインプット・アウトプットに分け、少しずつインプットの割合を増やします。そうすると、キャパに余裕が生まれます。私は9年間、キャパを増やし続けることでうまく時間を使えるようになりました。5分でもいいので、自分が身に付けたいことをインプットする時間を継続して取ってみてください。きっと1週間、1ヶ月、半年経つと変わっているはずです。

「エンジニア、3児の父、子ども達と歩んだ9年間でわかったこと」小田中 育生

家族でスクラム!ふたりで乗り越える不安と子育てQ&A

ここからは基調講演「育児期夫婦のチーム力アップのコツ~ふたりのずれはどこからくる?」に登壇された狩野さんを加え、視聴者からの質問に答えます。

家族でスクラム

狩野 さやか

育児アドバイザー/株式会社Studio947 取締役

2015年より育児期夫婦の協業をテーマとした「patomato」を運営し、ワークショップ等を通じて育児の“もやもや“を可視化してきた。パパママ向け講座の講師を各地で担当し、育児視点でジェンダーを考え夫婦の協力体制を築くきっかけ作りをしている。著書に『ふたりは同時に親になる 産後の「ず

Q:家計を支えるプレッシャーと育児のバランスが難しいです。

狩野:時間がなくてもできる家事とか育児への関わりって、皆さんが思うよりも遥かに多いんです。むしろ小さな積み重ねが重要で、例えば会話中の言葉選びひとつでチーム力を上げることもできます。時間がなくても自分にできることは何かを理解し、そこに本気でかかわっていくことが重要です。そして人生を長いスパンで考えてみましょう。一時的に収入が減ることを受け入れる、発想の転換も必要なのではないでしょうか。

小田中:ナビタイムでは男性の育休取得率が高いので、育休取得ができないという話は聞きませんが、皆さん同様の不安を感じていると思います。ただ家事を完璧にこなす必要もないし、ITエンジニアからすると当たり前だけど家庭においてはすごく役立つこと、例えば ECサイトをクローリングしておむつの最安値を見つけることで家事を楽にすることはできそうですよね。

またこれまで残業前提の働き方をしていた方は、業務効率化を目指してみると良いでしょう。効率的に働ける人は評価が下がらないですからね。

Q:育休中の夫が「仕事も育児も中途半端」と感じているようです。どんな言葉をかければよいでしょうか。

狩野:まず感謝を口にしましょう。それから世の中のママ、パパの多くが「仕事も育児も中途半端」と感じています。みんな仕事も育児も中途半端なんです。それでも育児してくれて助かっている、嬉しいと伝えましょう。

小田中:妻はすごく感謝の言葉を口にしてくれるんです。うまくできなかったことがあっても「やろうとしてくれてありがとう」と言ってくれる。だけどこれって、男性から発信することも大切だなと思っています。常にキャパオーバーなのは男性側だけではない、ということを男性は認識しておくべきかな。

Q:キャパが広がるというのは、こなせる作業量が増えるということでしょうか。

小田中:もちろんこなせる作業量が増えることも指していますが、どちらかというと過剰品質を見直すことでしょうか。例えばソフトウェアエンジニアリングでいうと、フルスペックで作ったり、リッチな設計にしようとしてるけど、よくよくユーザーヒアリングしてみると既存のものをちょっとモディファイするだけで良かったりしますよね。そんな戦略を身に付けるイメージです。

狩野:仕事も育児も慣れれば速くなりますよ。

Q:1人目の育休復帰後の働き方に不安があり、2人目に踏み切れません。

狩野:ご自身の復職のタイミングでパパが育休を取るなど、スタートを切りやすくする戦略を考えててみて欲しいのと、先ほどの回答と重複しますが、ある程度の中途半端さを受け入れる発想の転換は重要だと思います。例えば1年間、業界の知識がすっぽりと抜けてしまっても、知識や技術も一歩先に進みますから、またそこから取り戻せばいいんです。

小田中:私も2人目が不安だと相談を受けることは多いですね。仕事で例えると、頻繁にハードクレームしてくる顧客が既にいるのに、それが2社に増えるという状況なので、大変になるに決まってます。最近は育児参加者も増え理解も広がっていますが、経験しないとわからないことなので、周りにもきちんと「大変です!」を伝えた方がいいのかなと思います。

ナビタイムにも2人目を出産されたママエンジニアがいます。本人は浦島太郎状態になることを懸念していましたが、なんだかんだで休んでいる間に便利なツールやシステムが導入されて仕事がしやすくなったと言っていました。意外と復帰すると楽しく仕事ができるかもしれないですね。

Q:「やらないをがんばる」の具体例は?

小田中:我が家は2つあります。1つ目は、妻のこだわりの布おむつを紙おむつにしたこと。2つ目は、妻のこだわりの食器の手洗いを食洗機にしたこと。どちらもなかなか了承してもらえなかったのですが根気強く説得し導入したところ、これが意外と好評で明らかに家事が楽になりました。

狩野:例えばリモートワークの場合、目に入ること全てをこなそうとしてしまいがちなんですね。だから「8〜17時の間は絶対に家事をやらない」というように時間を決めたり、自分にルールを課すことは有効です。楽になる制約を決めることですね。

Q:妻が「がんばらないをがんばる」を実現できるよう、夫からできることは?

狩野:実はママも苦しんでいたりするので、まず正直に気持ちを伝えてみてください。「見ていてすごく大変そうだから、どうしたら楽になるか一緒に考えてみない?」と提案ベースで伝えることです。一方的にこうしてみたら?とアドバイスするのではなく、一緒に解決方法を考えることが大切です。

イベント動画の視聴はこちら

ForlkwellPress ロゴ画像

編集部

Follow

エンジニアに役立つ情報を定期的にお届けします。

エンジニアに役立つ情報を定期的にお届けします。