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エンジニアの軌跡

「Step-to-Rails-Expert.rbで迷えるRails中級者へ手助けを」 海老原 佑介

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Forkwell Pressでは、「成長し続けるエンジニアを支援する」というスローガンの元、エンジニアが運営しているコミュニティをご紹介する企画を実施しています!

今回は、Rubyを扱う中級エンジニアの活性化を目的としたコミュニティ「Step-to-Rails-Expert.rb」の創設者である海老原佑介氏に、エンジニア業界に感じている課題や、コミュニティの概要から将来の展望まで伺いました。

「ステップアップしたい」思いを込めた名前に

――「Step-to-Rails-Expert.rb」コミュニティ設立の背景から伺います。こちらはいつ頃設立されたんでしょう?

海老原2016年9月ぐらいですね。月1回の開催で、通算でいうと20回以上は開催していると思います。これまでは初心者向けのRubyコミュニティは結構あるんですけど、初心者を脱した中級者向けのものが少なかったんです。そういう人たちが集まる場があればいいなと思って、3人のメンバーで立ち上げました。

――メンバーのみなさんはRubyのエキスパートなんですか?

海老原:参加者の方と同じ中級者ですね。「これからステップアップしていきたい」という想いも込めて「Step-to~~」というコミュニティ名にしています。あと余談ですが、このコミュニティのロゴは、Rubyコミュニティの活性化のためにという想いのもと、セラリンさんというエンジニアの方に無償で作っていただきました。

集客数は「会場に迷惑にならない程度に」くらいに思っていた

――知見をシェアするだけじゃなく、「今困っていることを共有して一緒に解決しましょう」という集まりなのですね。

海老原:そうですね、そんなイメージです。今はForkwellさんやminneにスポンサーしていただいたり、こうして取材いただいたりということもあって順調なんですけど、これまではそんなに集客数にこだわってはいなくて。「会場に迷惑にならない程度に」くらいに思っていました。

コミュニティをガンガン育てていくというより、場が欲しかったんです。集客のために自分やスタッフが告知ツイートしたりはしていましたが、特に宣伝に力を入れてきたわけではなかったです。あと、Rubyのコミュニティって地域ごとにはあったんですよ、「Omotesando.rb」とか「Asakusa.rb」とか地名を冠してやるところが多かったんです。それとは違うレベル別の、特に中級者向けのコミュニティを作ろうと思いまして。

――リピーターの方も多いですか?

海老原:そうですね、現在は全体で15人くらいの参加になりまして、だいたいリピーターで7人前後、新規と2・3回目の方で残りの半分ぐらいという感じです。最近は新規、2・3回目の方が比較的多くなってきたイメージです。

これ以上大きくするかどうかは迷っています。現状の15人前後という人数は、顔を見渡して話せるギリギリだと思うので。例えば「初中級者」と「中上級者」の机を分けたりすると、僕は片方にしかいられず、もう片方の話が聞けなくなるのが嫌なんです。交流する場でもあるので全員と一言ぐらいは喋りたいなと思って。

――コミュニティは単純に大きければいいわけではない、ということですね。

海老原:そうですね。

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直近の目標は’’開催し続ける’’こと

――毎回、どういう感じで会を進めておられるんですか?

海老原:今は、主にもくもく会をする場所として提供しています。とはいえ、質問を持ってきた人がいれば喋ってもらってもいいですし、Slackのチャンネルを用意しているのでそこで聞いてもらってもいい。こちらも、初めて来た人には「あれ、質問あるって言ってましたよね?」みたいな感じで水を向けたりしています。

――基本的には業務でやってるものを持ち寄って、わからないところを聞き合うんですね。

海老原:そうですね、あとは趣味アプリを持ち込む方もいます。コミュニティができた当初は議論形式で、議題を決めてファシリティしていました。だんだんトピックが切れてきて「どうしようかな」と思っていた時、神速さんにアドバイスをいただいて。ToDoアプリの仕様を事前に決め、みんなでレビューし合う会にしたんです。

僕も当時LICTOOR株式会社という設立間もないスタートアップにいたので、あまりレビューをした経験がなかったんです。人のコードを読む機会も勉強になりますし、作ってきた人はレビューされてうれしい、レビューの練習をしたい人は練習できてうれしい、という形で好評でした。

ただ、現職のGMOペパボminne事業部に転職すると、仕事でそれなりの数のレビューをこなさなければいけなくなりまして。そうなると「自分が作業をする時間や、勉強する時間の方がほしいな」と思ったんです(ちなみにminneはRailsで作られていることもあって、Rubyエンジニアを募集しています)。

準備についても、他の方が発表しない場合に備えて自分もある程度作ってこないといけなくなり、それも負担になっていました。そういう経緯もあって、今はもくもく会が主体になっています。

大切なのは’’主催者自身’’も楽しめるコミュニティにすること

――伺うと、海老原さんがこのコミュニティを一番上手に活用されている印象です。

海老原:よく言われます(笑)。主催者特権ですね。そうじゃないと続かなくなってしまうと思っています。主催者自身も楽しめるコミュニティ活動が大事だと思います。

――「参加者からこんな面白い質問があった」というのはありますか?

海老原:RailsのWebアプリケーションを立ち上げるとログが出るんですけど、「この色分けって、どうやってるの?」って質問ですね。正直、ちょっとした好奇心だと思うんです。けど、そういうのをみんなで調べだしたりして。

――「当たり前に使ってるけど、なんでこうなってるんだっけ」みたいな。

海老原:そうです、普段なかなか聞けない質問ですよね。探し当てた人も「勉強になった」と言ってて。自分では調べなかったことへの知見がどんどん増えていっています。

もう少し初心者向けの質問でいうと、本当に始めたばかりの方で、Reactを使ったRailsアプリを作っている人から「表示がうまくいかない」という質問がありました。

その時は、前列に来てもらってPCをスクリーンに繋いで、一緒に原因を探りました。model層でのデータ取得が原因なのか、controller層で取得したデータを意図したレスポンスとして返せているのか、React側で受け取ったレスポンスを表示するところで問題があるのかなど、解析のコツを教え合いながら原因を特定しました。

今後はリモートでも参加できる仕組みを作りたい

――今後、このコミュニティでどういうことをやりたいですか?

海老原:遠方の方がコミュニティに参加しづらいことに課題感を持っているので、リモートでも参加しやすいような仕組みを作りたいと考えています。しかし、残念ながらリソースの関係で今の所着手できていないという状況です。

あとは細かな改善も必要だと考えています。各開催ごとに特色が出て、毎回学びが多いなと感じているのですが、もしかしたらそれは僕だけが思っていることかもしれません。もっと話しやすい環境にできるかもしれないですし、逆に「もう少しレベルの高い話を」という人もいるかも。いずれにせよ、無理のない範囲内で実現できたら。続けていく、ということが大事ですから。

――終わった後に参加者からフィードバックをもらったりはするんですか?

海老原:それがしていないんですよ。FBをもらえる仕組みを作りたいなと思っています。前に出たある勉強会ではTrelloを使って振り返りをやっているのが良いなと思ったんですけど、うちは時間が短いですからそこまでやれなくて。90分しかないので、自己紹介や締めの挨拶を含めると正味70分程度なんですよね。

――自己紹介の時間を削ることを考えたりしないのですか?

海老原:はい、その場に来てとりあえずまず一言喋ってもらうことで、喉を温めて欲しいと思いがあります。声出しておかないと、いざ話そうとしたとき喋りづらくなってしまうので。(笑)

――2〜3年のスパンで何かやりたいと考えてらっしゃることはありますか?

海老原:まずは続けることですね。これから時間が経てば人が減ることもあると思いますので、そうなってもめげずにやり続けて、来た人が満足してもらえる場を作れたら。

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レベル別のコミュニティがもっと増えれば

――現在、エンジニア業界に感じている課題があれば教えてください。

海老原:今はProgate(プロゲート)を始め、初心者向けのサービスが増えています。Twitterのタイムラインを見ていても、「#駆け出しエンジニアと繋がりたい」というハッシュタグがあるぐらい。一方自分の現職でも絶賛採用中ですし、「もっと人がほしい」という気持ちがあります。

エンジニア人口を増やすという意味では、初心者向けの窓口を増やしたり育てていくことは非常に大事だと思います。それと同時に中級者・上級者になるための窓口も重要だと思っています。そのうえで、うちは初心者を脱した頃に行く窓口としてのコミュニティを目指し、エンジニア人口を増やすことに貢献したいと思っています。

課題は’’初級~中級’’の間のコミュニティが少ないこと

――初心者向けのコミュニティは多くても、中上級者向けはそれほど多くないと。

海老原:初級~中級の間が少ないと思います。レベルごとのコミュニティが増えていけば、もっと気軽に参加しやすくなると思うんですよ。あと、僕自身古くからあるコミュニティはレベル感が分からず参加する敷居を高く感じてしまった経験があるので、例えば「新しいコミュニティでは、こういうレベル感の人が楽しめる」みたいなことが書いてあると参入障壁が下がると思うんですよね。

「Step-to-Rails-Expert.rb」を初級者〜中上級者への登竜門にしたい

――初心者の方は始める方も多い一方、エンジニアの面白みを感じる前に辞めてしまう方も多いと思っています。

海老原:そうですね。エンジニアという職種そのものに合わない人はいると思います、結構、細かい作業をずっとやっている仕事なので。あとスタートアップでは、先輩がいない場合もあるし、すごいエンジニアが社内にいてもその人には聞きづらいということもあります。スタートアップはみんな忙しいですから、知識を共有するという方向には行きづらいと思います。なので、エンジニアの面白みを知る前に辞めてしまう方も多くなっていると思います。

この「Step-to-Rails-Expert.rb」というコミュニティが、中級者にとってエンジニアの楽しさを体感できて、初級者〜中上級者への登竜門として役立てば良いなと思っています。「中級者になったらこんなことが面白い」といったことを感じさせてあげられる窓口になればと考えています。

コミュニティ立ち上げの経緯は自身の経験から

僕は今30歳で、26歳の時にシステム開発会社からITのキャリアをスタートしました。1年ほどやってからWeb系の企業に転職したのですが、スタートアップなので相談できる相手はあまりいなかったんです。コミュニティを立ち上げたのは、そういう経緯があります。

――共同運営者の方は2名ですか?

海老原:そうですね、私が主催者でもう1名スタッフのtwo_sannがいます。今後はスタッフを増やしていきたいとは思っています。

――何かコミュニティでPRしたいことはありますか?

海老原:向上心はあるけど、何かでつまづいてどうして良いかわからない人に来てもらえたら嬉しいです。日々聞けないような課題も聞きやすい環境で、何らかの解決の端緒を見つけられると思います。そういう課題解決の積み重ねがエンジニアの面白みを感じることにつながっていくと思いますので、ぜひ気軽に参加してみてください。

逆にそういう人にアドバイスができる、エンジニアの楽しさを共有したいという上級者寄りの人も参加もらえると助かります、ぜひ来ていただきたいです。

ライター:澤山大輔

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本サイト掲載の全て記事は、フォークウェル編集部が監修しています。編集部では、企画・執筆・編集・入稿の全工程をチェックしています。

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