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「サービスも人も成長を」。松本竜彦(LINE Growth Technology株式会社)

LINE株式会社のコーポレートサイトには、主な子会社・関連会社として28社の記載がある(参照、2019年4月末時点)。その中で、最も新しく加わった関連企業のひとつがLINE Growth Technology社だ。

名前のとおり、同社はLINEのサービスのグロースに特化した会社となる。ただ、グロースの対象はサービスだけではない。LINE本体でトップレベルのエンジニアを採用する一方、LINE Growth Technology社では積極的にポテンシャル採用を行ない、次世代エンジニア育成にも着手しているというのだ。

急激に会社規模が大きくなる中、社内外の様々な課題と格闘している福岡開発室長・松本竜彦氏に話を伺った。

LINEサービスのグロースに特化した会社

――本連載では初登場となりますので、貴社LINE Growth Technology様がどういった会社か、簡単に説明いただけますでしょうか?
 
松本 元々LINEは「LINEバイト」だったり「LINEマンガ」だったりと多くのサービスを抱え、新しいサービスをリリースすることに注力して来ました。
リリースされたサービスは、継続的に開発を行い、大きくしていかないといけないといけません。
またサービスの成長には、エンドユーザーに見える部分の開発だけはでなく、サービス運営自体の最適化、業務フローの改善といった部分も必要になってくるのですが、どうしても優先度は下がりがちでした。

それで「LINEの各種サービス運営のための継続的開発業務」をミッションとして掲げる会社を作りましょう、といって立ち上がったのが弊社になります。

弊社はLINEグループではあるのですが、別法人です。社内に「グロース開発室」を作っても良かったんですが、同じ法人の中に部署を作ったとしてもサービス開発に取られがちになってしまうので、別法人にして、切り分けて考えるようにする狙いがありました。まあ、それはそれでややこしいこともあるんですが(笑)。

――グループ会社と言えど、法人としては独立しているんですね。

松本 そうですね。LINE100%出資の子会社ではあります。現在は福岡で12名ほど、東京では30人強ぐらいの規模感です。去年の夏に会社を立ち上げ、LINE Growth Technology単体として採ったのは10名ぐらいですね。

――福岡は地理的に韓国に近いですが、エンジニアの方も国籍が多様だったりするのでしょうか? 

松本 LINE Growth Technologyではウクライナ人が1名いて、それ以外は日本人ですね。

――去年の夏からまもなく1年ということですが、「ここが大変だった」ということはありますか? 

松本 2018年11月に私が入社した時には、社員が兼務含めて3名でした。人を採ることも大事ですが、会社としての形を整えることがまず大変でしたね。LINE本体やLINE Fukuokaと比べると、制度や仕組みとか、エンジニアリングと関係のないところに未整備な部分が多かったので。そこを平らにして、入る人が安心して入社してもらえるようにするのが大変でした。

具体例でいうと、福利厚生はフワッとしていたところで。LINEでは使えるけどGrowth Technologyでは使えないとか、LINE Fukuokaでは使えるとか。オフィスも一緒だったりするので差が出るとやりにくかったり。あとは、入ってくる方の受け入れ体制とかを整えたりですね。

――この人数だと、採用面接も担当されたんですね? 

松本 はい。入社して、2週間でもう面接をしてました(笑)。僕が入る前に採用が決まっていた人もいて、僕自身がまだ何もわからない状況でメンターになるとか。大変と言えば大変でしたね、LINEの業務の進め方にもまだ慣れていなかったので。

――オフィスこそLINE Fukuokaさんと一緒でも、ベンチャー企業に入ったみたいな形なんですね。

松本 そうですね。人の増え方的には、そんな感じです。ただ、バックアップやフォローなどをしっかり実施してもらっていたので、その点は非常に助かりました。

「新会社の新拠点立ち上げ」に惹かれ、入社を決意

――続いて、松本さんのキャリアについて伺います。LINE Growth Technologyさんに入社するまでは東京で20年ほど勤務されていたそうですが、これまでどういった経歴を辿られたのでしょう? 

松本 LINE Growth Technologyが3社目になりまして、1社目は某航空大手グループのシステム会社で空港に納めるシステムの開発をやっていました。ただ、「このまま閉じた仕事を続けるのはどうなんだろう」と思って。当時、携帯向けのポータルサイトが流行っていたこともあり、KDDI系のWEB会社に転職しました。そこで40歳手前までau向けのサービス開発をやり、LINE Growth Technologyのお話をいただいて2018年11月に福岡に引越して今に至るという形です。

――今回転職を考えられたのは、どのあたりが理由だったんですか? 

松本 前職はエンジニア全体を見渡せるポジションを任せていただき、エンジニア組織全体の話とか、経営課題に踏み込む内容とか、大変ながらも楽しくやらせてもらってました。

けれど、全体が見られるようになってエンジニアとして一通りのポジションを経験できたことで、「この経験を他でも活かせないかな」という気持ちになりまして。「何か新しいことができないかな」と思って、ふらっと転職サイトに登録したらLINE Growth Technologyからお声がけいただいたという経緯です。

話を聞いたら、会社自体が立ち上げ時期という話だったので。他にもいくつかお話はいただきましたが、「新しい会社の、新しい拠点の立ち上げをお願いします」という話はなかったので「これは」と思って転職しました。

――松本さんの今のミッションは、どのあたりにあるんですか? 

松本 LINEのサービスの成長を、サービス開発とサービス運営の両面から支えるという弊社のミッションがあります。そのための組織作りとして、第一に福岡開発室が安定してやっていける土台を作ることだと思っています。ミッションの浸透もそうですし、制度作りなんかもそうです。それらをやりつつ、組織を大きくして、自分たちがLINEグループの中でどういう立ち位置でエンジニアリングをしていくか、といったビジョンも示していかないといけない。また、グループ内でもまだ認知度が低かったりするので、ちゃんと実績を作って皆さんに知ってもらうことも大事かなと思っています。
やっぱり、みんなが安心して働ける環境づくりをやっていかないといけないですね。

――最終的に、何人ぐらいの会社にされる予定なんですか? 

松本 Growth Technology全体でいうと、東京も合わせて2019年12月末の時点で80名~100名という規模にする予定です。福岡は最低20名、うまくいけば30名には持っていきたいですね。

――入社前と入社後とで、思ってたのと違う部分はありますか? 

松本 そうですね、会社自体ゼロに近いところからのスタートでしたし、福岡の開発室を大きくしないといけないのはわかっていたので。イメージはずれていませんでした。

LINE Growth Technologyは、サービスだけでなくそれを作る「人の成長」にも重きを置いています。育成というと大げさですが、成長していける仕組みづくりなどにも時間を使っています。

――ということは、業務の中でエンジニアの方からいろいろな質問が飛んできて、その都度相談に乗ったり。 

松本 そうですね。メンバーと話す機会はちゃんと作るようにしています。LINE Growth Technologyでは、比較的経験の浅いメンバーからベテランエンジニアまで、幅広いスキルレンジのメンバーがいます。コーディングはみんなかなりできるので、それ以外の部分、環境構築や運用ノウハウ、アーキテクチャ設計の意図なども理解、習得してもらいたいなと思っていて、そういう話ができる機会を作ったりしています。

最近、サーバーサイド、フロントエンドの両方ともで、頼りになるベテランエンジニアが入社してくれたので、彼らとも相談しながら進めて行こうと考えています。

――人が増えるたびに教える部分も増えるでしょうから、1日はあっという間に過ぎていくのでは。

松本 そうですね。教育についてはある程度定型化して、新しい方が入ってくるたびに使い回せるようにしたいなとも考えていますが、まだ試行錯誤中といったところです。

2019年は、実質最初の1年だと思っています

――働く上で「こういうところを大事にしている」という部分はありますか? 

松本 会社の歴史自体が浅いので、当然LINEグループでの社歴も浅い人ばかりになります。LINEでのシステム開発のやり方や、ツール自体に初めて触れる人も多く、最初は戸惑うことも多いです。なので、開発で得られた知見は積極的に共有していこう、という話をしています。特に、失敗談やハマった話ほど有用だよと。
あとは、ちゃんと振り返りをやって次に活かそうね、という話をしています。
最初の1年なので、シンプルにその2つをやって、それが当たり前になっていく下地が作れればいいなと思っています。

――本当に、ベンチャー1年目という感じですね。

松本 そうですね。ただ、LINEグループとしての支援はしっかりしてくれるので、まるっきりベンチャーというよりは恵まれていると思いますけども。

――「公平であること」にこだわりがあるそうですが、そう思うようになったエピソードはありますか? 

松本 前職で本部長代行になったのですが、上の立場になると当然、人の評価もするわけじゃないですか。みんなの生活がかかっているお給料を決める権限があって、前職だとそれは相対評価だったんですね。

あくまで例ですが、2人めちゃくちゃ優秀でアウトプットを出している人がいたとして、どちらかは悪い評価をつけないといけない、そういうシビアな判断が必要な状況もあったりします。最終決定権を持つ人間が贔屓をしたり、一方からしかモノを見ないで判断したりとか、誰からも信用されないよなと思って。僕自身、下にいた時にそういう風に思っていたので。
それは直属の上司部下の関係であってもそうでなくても、例外はないと考えています。

お金の話だけでなく、上の立場になるほどいろいろな話が耳に入ってくるんですね。エンジニアリングの話題だけではなくて、人間関係とか。でも、一歩引いて客観的に見ないといろいろ不具合が出そうなので、そこだけはちゃんとやろうと今でも思っています。

――「決めつけず、一人一人が活躍できるフィールドを創っていく」とのことですが、実際にどのような行動をとっていらっしゃるんですか? 

松本 今のところ2週間に1回、メンバー全員と1on1をしています。短期的な話がメインですが、それとは別に必ず中長期的なビジョン、「将来どういうエンジニアになりたいんだっけ」という話を話すようにしています。

例えばサーバーサイドでインフラもできるようになりたいなら、その辺りの開発支援とか設定を任されるプロジェクトに配置するとか。会社なので、その人が望んでいることを全て実現はできないんですが、なるべく希望に沿った仕事や役割に近いところで働けるようアサインを考えています。

――業務を行なう上で、大事にしているモットーや好きな言葉があれば教えてください。

松本 モットーは先に話した通り、「常に客観的に判断する」に尽きますね。
また、LINEのエンジニアカルチャーとして3つの行動指針がありまして、その中で僕が1番気に入っているのが「Trust and Respect」です。「信頼と尊重」ですけど、チームで仕事をする会社なので関係性の中で信頼と尊重が生まれるようにするところはちゃんと考えて仕事をするようにしています。それは、エンジニア以外でもそうですね。

バックオフィスの方とか、広報の方とか、マーケティングの方とか、いろいろな人と話す機会があるんですけど、LINEグループは皆プロフェッショナルで高い専門性を持っている人ばかりです。「分野は違えど、すごい人たちばかりだ」と思いました。

――ご自身の成長のために日々行なっていることがあれば教えてください。

松本 会社の立ち上げでいろいろな経験をさせてもらい、それは今しかできない経験だと思っています。一方で僕はエンジニア出身なのですが、エンジニアリングできる時間が会社にいる間はなかなかとれないんですね。個人的にも悔しいですし、エンジニアを評価する人間が最新のエンジニアリングがわからないのは頼りないです。必死でキャッチアップしています。

――業務時間外に手を動かしたりなさっているんですか? 

松本 「まだまだ負けないぞ」という感じで、最低限のところは自分でできるようにしています。

――「いい仕事したな」と感じる瞬間ってどんな時ですか? 

松本 そのメンバーが楽しそうに働いてるのを見た時とか、1on1で今困っていることがないですと言われた時ですかね。次はあれがやりたいですとか言ってくれる人とかも結構います。僕自身が直接プロダクトやサービスに関わって何か成果を出すというフェーズでもなくなってきているので、ちゃんと彼らが成果を出してそれを話してくれる時が1番嬉しいかなというところですね。

サービスやプロダクトに、愛着を持てる人を。

――2019年3月、福岡市への転出入手続きがLINE上で簡単に把握できるサービス「福岡市引っ越し・証明案内」がリリースされました。このプロジェクトは松本さんが指揮されたんですか? 
 
松本 そうですね。このプロジェクトに関しては立ち上げに近い時期だったので、メンバーすらいなかったんですよ。僕自身でサンプルアプリを作り、その後入社してくれた優秀なエンジニアが実装部分を引き継いでくれたので、僕自身はプロジェクトマネジメントや環境構築周りの作業に注力するというやり方を取りました。

――進めて行く上でどういうことが大変でしたか? 

松本 プログラムを書くだけだったらそこまで問題はないんですけど、LINEでの運用ルールで「こういう時はこういうツールを使わないといけない」とか、この証明書はLINEだったらこう手配をするとか、LINEグループで使うインフラにどう申請をして、承認をもらったらどういうふうに立てるとか。LINEのやり方みたいなところがわからず、なかなか大変でした。

――社内で大変なことがありつつ、一方で行政と関わる仕事ですよね。行政とやりとりする上で、難しい部分はありましたか? 

松本 福岡市の担当の方はITリテラシーもすごく高くて行政のスマート化というところにとても熱意のある方でしたので。かなりやりやすかったです。

――リリースされてからの反応はいかがですか? 

松本 アンケートを取って、KPIとして「満足した」が90パーセント以上という目標を立てていました。ギリギリですけど、そこはクリアしました。使ってもらった人からは、上々の評価をいただいているのかなと思います。

LINEの世界観を広げてくれる一例にはなったのかなと思います。例えば、ユーザーとのコミュニケーション部分でLINEを使い、裏に独自のソリューションを構える、という形ですね。使い方をいちいち説明しなくても、LINEならみんな使える。
そこが強みであると思っています。

――1ユーザーとしても楽しみにしています。最後に、「こんな人と働きたい」というイメージはありますか? 

松本 技術力が高い人にはもちろん来てもらいたいんですけど、それ以外にはサービスやプロダクトに愛着を持てる人が来てほしいなと思います。自分が開発するサービスを自分が好きにならないと、「このサービスをよくしたい」という意見も出にくいかなと思っているので。

――今後の採用計画では、引き続きポテンシャル採用も続けていくイメージですか?

松本 そうですね、自分の弱みをちゃんと認識できる人だと、よく伸びていけると思います。変に強がらずに今の自分に何が足りないか、何が必要か、というところをちゃんと考えられて、どう克服していくかまでイメージできる方だと、成長の度合いも早く、伸びていくと思います。

――素直というのはそういうことなんですね。

松本 そうですね。また、LINE Growth Technologyはチームで動くことが本当に多いので、1人で成果を出すというよりはチームで成果を出す、チームに貢献するみたいなマインドの人だとなお良いと思います。

<了>

ライター:澤山大輔


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