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2021.01.29 2023.12.14 約2分
アメリカのB2B市場において、「営業活動を革新した」と大きな注目を集めているのがSales Enablement(セールスイネーブルメント)。日本でも導入が期待されるセールスイネーブルメントについてR-Square & Company CTO 大城氏と、エンジニアとしてプロダクト開発を中心的になっている小泉氏に話を伺いました。
大城:営業と一口に言っても、クライアントのビジネスモデルによって異なります。セールスイネーブルメントは、業種や商材に関わらず、営業活動に必要な行動をファンクション化して明確に定義、指標を持った上で適正な評価を行い、継続的に成長を促進する手法なんですenablementは、enable(〜ができる・使える状態にする)の名詞形で、セールスができる状態にすることを表している。同社ではセールスイネーブルメントを『営業組織/営業パーソンを、会社が期待する営業の動きができる状態にし続ける』と定義しています。
大城:北米を中心にセールスイネーブルメント関連の話題が花ざかりです。特に大きな市場になっているアメリカでは、すでに数百のソリューションがリリースされています。それこそ検索すれば、さまざまな情報とともにこの手法を取り入れたツールやプロダクトが数百単位で出てくるといった現状です。しかし、日本には一つもない。今後、日本でもセールスイネーブルメントの需要、重要性が高まるのは間違いないと思っているので、現在開発中のプロダクトには個人的にも大きな期待をしています
── 多くのテクノロジーやビジネス手法と同じく、アメリカとのタイムラグがある状態で、日本での本格導入はこれからとなるわけですが。
大城:テクノロジー、考え方に関わらず、日本にはいまだに「入ってくる」という感覚なのが現状です。日本が最先端のものを生み出していくという流れがこれまではほとんどなくて、海外で流行したものが遅れて入ってくるというのが主流です。そこから考えてもそろそろセールスイネーブルメントの時代が来るんじゃないかという見立てはあります。これまで、日本にセールスイネーブルメントに特化したプレイヤーが全くいなかったのは事実です。
概念的なことを言えば、人材育成のための研修をしたり、Eラーニングをおこなったり、営業部門の社員の成長に期するような制度策定、補助制度を打ち出している企業は日本にもたくさん存在する。「PDCAを回す」ことは、部署を問わず組織で働くビジネスパーソンの常識だしそれをチェックする人事評価システムも出てきている。
「成功に王道なし」と言われるように、当たり前のことを当たり前にやるのが重要とはよく聞く言葉だが、スローガンだけ掲げても事態は好転しない。
大城:人材育成だからトレーニングに終始する。「人材育成に力を入れています」と言っても、それが成果につながらなければ意味がないんですよね。そのトレーニングにどれくらいの効果があって、事業のどの部分にどれくらい寄与したのか? 成果につながったのかを継続的にモニタリングして、効果的な施策を継続的に行うところまでやって初めてセールスイネーブルメントが機能するんです。
大城:セールスイネーブルメントの手法は、まずジョブファンクションをかなり明確に定義することから始まります。そのジョブファンクションを実行するためにどういう行動を取らなければいけないか、どんなスキルを用いてどんな行動をするのかを詳細に定義します。
「営業」と一括りにされてきた仕事の中身を分解して、それを体系的に業務に落とし込んだものをスキルマップと呼んでいるのですが、このスキルマップをもとにそれぞれのジョブファンクションの評価の度合い、必要なスキル、ナレッジなどのを水準にした到達度を5段階で評価する機能があります。
「最高の5段階では、これができている状態」という誰が見てもわかる基準を持った上でチェックしそれを継続的に記録していくことで、その社員がどんな状態なのか、どの段階にあるのか、どこが強みでどこに成長の余地があるのか一目瞭然になるんです。
成果起点の営業育成を実現するSales Enablementツール『Enablement App』
大城:弊社のプロダクトでは、スキルマップがすべてのベースになっており、そこにそれぞれのジョブファンクションを実行するために必要な要件が組み込まれています。それぞれの社員に必要なトレーニングはこれという明確な答えが、データと数字、事実に基づいて導き出せるようになっているんです。
── 各企業が「営業成績に資する」と判断したスキルに基づいたスキルマップを、上司が5段階で評価するということですね。
大城:弊社のセールスイネーブルメントでは営業を
この5段階に分けているんです。このプロダクトを使えば、営業のサイクルの中でリードを作るときが得意なのか、クロージングの時に力を発揮するのか、どの段階に強いのかも一目瞭然なんです。
── こうした機能を使えば、社員個々の意識向上だけでなく、企業としての社員の公正な評価、「本当に営業に役立つ、結果に直結する要素は何か?」という疑問にも科学的な答えが出せるようになりますね。
大城:社員間の比較ではなく、ここの部分が成長した社員は営業成績が上がった、ここに強みがある社員は結果を出しているなどの ”差分”が見えてくるんです。
── 売上結果のグラフを社内に貼り出し、競争心を煽るような企業はさすがに少なくなっていると思いますが、 ”結果の差”だけを見せても社員の営業成績は上がらないのは明らかですよね。
大城:何が違うのか?どんな違いが結果を左右しているのかが重要ですよね。結果の差分を一つひとつトラッキングすることで、成績が思わしくなかった社員にも必要なトレーニング、成長のヒントを的確に与えることができます。
── 小泉さん、今回のプロダクトはかなり従来のものとは違うコンセプトで作られているのかなと思うのですが、開発にあたって機能面でエンジニアとして苦労したところはありますか?
小泉:人材育成のトレーニングを実際の営業成果につなげるという試み自体は、セールスイネーブルメントのプロダクトだから実現できたというわけではなく、データや指標の問題なので、驚くような新技術を使っているというわけではないんですね。それよりも、今まで採っていなかったデータを採ることで、さまざまなことに関連性が見えたり、新たな可能性が開けると思っています。技術的にはもっと前からできたことだと思いますが、セールスイネーブルメントという概念に基づいたシステムを作るために、どういう新しい技術を生かせるのかということで開発を進めています。
大城:それでいうと、どんなデータもなるべく捨てずにとっておくことは徹底しています。クラウドサービスの登場以降、ビッグデータを扱うハードルが下がり、とりあえずとっておいて必要になったら後から取り出すことが可能になりました。