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2022.07.12 2024.03.18 約6分
今回取材したのは、西新宿にオフィスを構える株式会社ディーバ。決算業務アウトソーシングと聞くと、なんだか「経理のプロに作業を丸投げする会社?」とイメージしてしまうが、実は連結決算業務の自動化ツールを提供しているのだという。しかもエンジニアが顧客と直接コミュニケーションを取りながらプロダクト開発を進めているらしい。3年先を見据えた教育投資で優秀な人材を育成する方法、風通しが良く心理的安全性の高い環境を生み出す秘訣などを開発の中心メンバー3名に聞いた。
—本日はよろしくお願いいたします。あの…鳥井さんと、お二人(吉本さん&岸田さん)は、ちょっと雰囲気が違うような気がしていまして。鳥井さんだけスーツなのは顧客対応があるからなのでしょうか…?
鳥井:あ、これ関係ないです、自由なんで…みんな私服なんで…(笑)前職からの慣れでスーツを着てるだけなんです。
吉本:私は一番自由かも知れない。
岸田:僕は真ん中!
鳥井:とにかく自分のポリシーに沿ってます。
—仕事以外のことで会社から厳しく決められているルールがないのかなと思いまして。
鳥井:不快じゃなければ良い
吉本&岸田:あははは
—ありがとうございます(笑)簡単に自己紹介をお願いできますか?
吉本:私はエンジニア採用をメインに開発やプロジェクト管理、あとは作ったシステムのUI改善などフロントも担当しています。
岸田:私も吉本と同じで採用をしながら教育責任者もしています。あとはプロダクト開発やプロジェクト管理、あとうちで今動いている基盤技術の技術支援も担当しています。
—岸田さんは1社目がワークスアプリケーションズなんですよね。
岸田:そうですね。ワークスは本当に実力主義ですよね。ひたすら鍛えられました。
鳥井:開発部のグループリーダーとしてチームやプロダクト管理、あとは採用やメンバーの評価を担当しています。私も Python は好きですね。元々、組み込み出身なので C はやっていたので今は Rust に興味があって、これから勉強していきたいです。
—ディーバは決算代行アウトソーシングの企業ということですが、もう少し具体的に教えてください。
吉本:決算業務の中でもとくに連結決算に重きを置いたアウトソーシングサービスを行っています。私たちは受託した決算作業のフローを自動化するシステムを開発しているんです。
—「作業代行」だけでなく「システム開発」に特化しているんですね。
吉本:連結決算業務の自動化ツールを提供していきたいと考えています。
—なるほど。エンジニアが在籍する理由がわかりました。ちなみに企業ごとに要望や会計処理の仕方って結構、異なってくると思いますが、そのあたりはどう対応しているのでしょう?
吉本:そうですね。今は顧客によってフォーマットがバラバラだったりするので、どうしても顧客やプロジェクトに合わせたシステム制作になってきますね。本来、決算業務は定められたルールがあるので、我々の知見をいかしてゆくゆくは共通化に向けたシステムつくりをしていきたいですね。
—いまは企業ごとの課題などをデータ収集して検証している段階なのですね。
吉本:はい、そんな感じです。
—現在の開発チームはどのような規模感なんですか?
吉本:3. 4年前の立ち上げ時には2名ほどでしたが、徐々に増えていき現在は10名程度まで増えています。まだまだ採用は強化していく予定です。ちなみに全社員は約290名ほどです。
—10名で何社くらいシステムを開発されているのでしょう?
鳥井:これまでのトータルだと10〜20社くらいですね。現時点で開発中なのは3社くらいでしょうか。
—開発・運用の内訳は?
鳥井:社内ユーザーがお客様になるので、運用面でフィードバックがあれば都度保守という形を取っています。一度軌道に乗るとそこまで頻繁に要望が発生することはないですね。
—なるほど、運用を最小限に3つの新規案件を10名で回していると。ざっくり役割分担を伺えますか?
吉本:私と岸田が採用、教育、広報をしつつ開発という感じで、鳥井はリーダーとして全体の取りまとめをしています。
残りの7名が3案件分のチームに分かれ、お互いに開発・保守をしています。余った時間でリファクタリングをしたりとか。結構みんなが色々と掛け持ちしながら回していますね。
—ちなみにデザイナーの方はいらっしゃるんでしょうか?
吉本:いまは特殊なデザインを使わずにフレームワークに沿った設計にしているので、とくにデザイナーは置いていないんですよ。社内で使用されるシステムなので、まずはきちんと動くことを目指してみんなで開発をしています。
—顧客ごとに要望に違いがあるとのことですが、要件定義はどのように進めているんでしょうか?
岸田:運用してもらうことを考えながら開発を進めていく必要があるので、まずはある程度の業務フローを整理します。基本的には顧客のエクセルファイルや実際に動いているシステムの全体を見ながら、どこを自動化したいか要望をヒアリングします。そこに我々が「ここはこうした方がいい」と技術的な目線でアドバイスをし、最終的にドキュメント化し、それを元に開発を進めていくのが一連の流れになります。
—そのあたりのヒアリングはどなたがされるんでしょうか?
岸田:基本的に開発メンバー全員ができるようにしています。必須スキルといいますか。二人三脚でやっていくので運用側から常にフィードバックや質問がくる訳なんです。それに対して全員がきちんと回答できる状態にしておくのがベストだと考えています。
—なるほど。この人は企画だけを担当、みたいな形ではなく一人が全体を見れる状態になっていると。
岸田:アジャイルで言うところの帽子をかぶり変えるじゃないですけど(笑)ひとつのことだけできる人というよりは、全体を見て一連の工程を任せられるように育成していますし、そうあるべきだと考えています。
—具体的にはどういったスケジュールで進めていくのでしょうか?
岸田:ある程度スプリントで動くものを作るのに、大体うちでは1週間程度で進めていきますね。
—おお、結構短いですね。
岸田:はい、いろいろな運用フローに対してまずは簡易的に作っていき、そこから適応させていくようなスタイルです。最終的にそのプロジェクトの全体を自動化につなげていきます。
—小さく分割していくんですね。
岸田:ユーザーに使ってもらうことを「運用に回す」と呼んでいるんですが、まず運用してもらい、早めにフィードバックをもらいます。開発と運用のサイクルを早めたいという狙いです。小さいテストを積み上げることで一つの大きなシステムをつくることを意識しています。
プロジェクトやエクセルファイルのボリューム感によって、そのサイクルはバラバラなので柔軟に対応していますね。
—現在、動いている3つの案件について教えてください。それぞれ共通化されているのでしょうか? それともスタンドアローンなのでしょうか?
岸田:そうですね、徐々に共通化できる部分は増えています。開発者が下のレイヤーでも、ライブラリを活用することで共通化できるように動いているという感じでしょうか。
—これから共通化に向けて動いていく、という取り組みも同時進行で行われているんですね。
岸田:そうですね。
—最近行った技術的なチャレンジはありますか?
吉本:これまではバッチファイルを提供することをしていたのですが、やっぱりそれだと使い勝手が悪いのでUI/UX向上のためにフロントエンドを作ろうと動いています。ちょうどこの前ベータ版をリリースしました。これまでのシステムすべてに適用できている訳ではないのですが、最近安定して稼働しているプロジェクトの方に一旦そのフロントを使ってもらって、今フィードバックをもらいながら運用をしています。半年くらい前からチャレンジして成功している取り組みになります。
鳥井:技術要件って何使ってましたっけ?
吉本:フロント側がReact、API側が Python で開発していますね。
—モダンな感じですね。みなさんで決められたんでしょうか?
岸田:僕がまず簡単なアーキテクトというか、半年間構想をしていまして。なるべくモダンなフレームワークをしたいという話になりました。
岸田:何社か進めていく中で共通した課題は見えてきました。Pythonだとpandasといったライブラリがありますが、そういったライブラリと兄弟会社の株式会社ディーバが提供しているディーバシステムを組み合わせてリファクタを並行して進めています。
—面白い取り組みをされているんですね。
—エンジニアの目標設定や評価制度について教えてください。
鳥井:現在は、メンバー自身で、向こう半年の目標を考え、それに対して定期的に振り返りを行う流れになっています。そもそもできて間もない部隊ということもあり、しっかり制度があった訳ではないんです。そこで私が土台となる部分を発案して、みんなで話し合いながらフレームワークを確定していきました。それを今年度から試行しています。
—新しい評価制度を作っていくのはかなり大変だったのでは?
鳥井:そうですね。元々は開発メンバー向けの評価制度がなかったのですが会社の理解もあり。もう少し補足すると、漠然と目標を立てる訳ではなく、目標を立てるための指針はこちら側で提供しています。まずは部の年度単位の目標や人材育成モデルを定めました。そのモデルに沿った目標にしていく形です。
簡単なイメージとしてはMBOとOKRをうまくミックスしたような感じです。
—色々な会社の知見も入れていかないといけないですよね。
鳥井:評価制度をオープンにされている会社もあるので、うちみたいな社内開発向けの良い制度がないかなぁとネットを駆使しました。また組織管理に関する書籍をいくつか読んで参考にしています。
鳥井:評価の軸は、大きく分けると3つあります。
マネジメントというとマネージャーみたいなスキルかな?と思いがちですが、それだけではなく自己管理+グループ管理のことを指します。この3軸をバランスよく伸ばしていけるようなマップになっています。
これがみんなのキャリアパスに沿ったものになればいいなぁと思っています。
—フロントエンド、バックエンド、インフラでそれぞれ業務が違ってもベースになる指標があるといいですよね。
鳥井:採用にも使えますよね。
—教育制度も整っているのでしょうか?
吉本:普通中途入社だと、いきなり業務を任されることが多いと思うのですが、うちは2ヶ月程度の研修を経て実業務に入ります。エンジニアのレベルにもよりますが、リーダブルコードだったり、オブジェクト指向でコーディングの基礎を学んだり、なかなかゼロから実施することがない「設計」の課題をこなしたり…。そういった研修を積むことで、本当に質の高いエンジニアを育成できるのかなと思います。
吉本:私と岸田が前任から教育プログラムを引き継ぎ、カスタマイズしているのですが、エンジニア未経験も含めた3名を実際に育成できています。
—事業そのものやチームに余力がないと、なかなか教育に投資できないと思うのですが、そこまでしっかり教育コストをかけられる秘訣とは?
岸田:前提として、Pythonっていくらでも書き方が工夫できるんです。言ってしまえば、書き捨てのコードでも動かせるんですね。そういうコードを書いて運用に乗せると1年は問題なくても、2年、3年後には修正や対応が必要になるケースが多いんです。そこを基本的にリスクだと捉えているので、最初からそのリスクを潰せるようにリーダブルコードやオブジェクト指向を確実に身に着けて欲しいんです。
—スタートアップだと今月生き残るために必死で、2〜3年後に起こることまで対応できないですよね。
岸田:ディーバ自体はまだ浅いのですが元々アバントグループが土台になっているので、ある程度教育にリソースがさけることは大きいかも知れません。我々はグループでいうとR&Dの対象とも言えるので、まずはそこに耐えうる人材になることが優先度が高いんです。
—なるほど。いい話ですね。チームを預かるみなさんも先を見越しておく必要があるんですね。
鳥井:最近は事業計画にも教育コストが含まれてます。
—教育は「自分で家に帰って学べ」という会社も多い中で素晴らしいですね。
岸田:めちゃくちゃ手厚いし、そこが目玉とも言えます(笑)
—現在のディーバは変化フェーズにあると思うのですが、入社時と現在で「働く楽しさ」に変化はありましたか?
吉本:入社当時の思いで言うと、前職でSIer、社外SEをどちらも経験したからこそ「自分で責任を持って作ったものが会社のブランドになる」部分は魅力的でしたね。また新しい言語に挑戦できることや、入社当時ブームだったRPAに関われる部分も楽しかったです。
—2020年08月にご入社され、約2年が経ちますが現在はいかがですか?
吉本:メンバーが全員すごいポジティブでアグレッシブなんです。私も元々結構ポジティブですが、より影響されてポジティブになりましたね。もっと良くしていこう!という意欲のあるメンバーが集まっていることはすごいなぁと感じています。あとは今やっている採用教育をはじめとして、UIへの挑戦など、やりたいことに挑戦できる環境はいいなと思います。
岸田:ディーバ入社時は前職に負けず劣らずレベルの高い人が多いという印象がありました。
—前職はハイレベル人材が集まるシステム会社にいらっしゃったんですよね。
岸田:そうですね。ディーバに入社したときのメンバーは、みなさん尖っていて自分の得意領域を持っていて問題解決までのスパンが短いという印象があります。例えば何か発生したときに前職では翌週に持ち越されることが多かったのですが、ディーバでは問題が発生した週のうちに確実に解決されています。
現在もそういったハイレベルな水準は担保したいと考えています。経験の浅い方が入ってきても教育でレベルアップしていって、みんなで成長できるような環境を作っていきたいですね。
—スタートアップの少数先鋭が平準化を経て平均値を下げていくのではなく、なるべく引き上げた状態で人数を増やしていくと。
岸田:はい、スキルを上げると人材のレベルに波が出てくるので、ここをなるべく高い水準に保つことが私の教育のミッションでもあります。
—質とスピードですね。鳥井さんはいかがでしょうか?
鳥井:そうですね、やはり社内開発なので、ユーザーとの距離が近くてレスポンスもすぐ返ってくるんです。我々の作ったプロダクトで「何十時間も作業が早くなって助かっています」という声を直接聞くことができるので、やりがいにつながっています。あとは組織内部の話ですが、心理的安全性を高くしようとみんなが意識している部分があって、実際に心理的安全性は高いと思っています。私自身が組織改革を促す立場にあって感じることは、何かアクションを起こしたときには周りが反応してくれるので、あらゆる提案活動がしやすいですし、楽しいですね。
—先ほどの評価制度の話がありましたが、実際にメンバーからの改善要望などの声はありますか?
鳥井:そうですね。頑張って考えたこともあってか、評価制度については結構、反応が良かったですね(笑)「本当に運用が上手く回るの?」という点でアドバイスをもらったりとか気付きはありました。
今は多くのメンバーが希望する「ハイブリッドワーク制度」を進めています。会社として、どこがクリアになれば導入できるのかを部長と話し合っているところです。もうそろそろできそうなところまで来ています。それもみんなからフィードバックがあるからできていることですね。
—ハイブリッドワーク制度について具体的に伺えますか?
鳥井:リモートワークと出社のハイブリッドなのですが、まずは週に何回までリモートOKという形ではじめようかなと考えています。
—顧客の重要資産を預かる意味で厳しい条件をクリアする必要があるのでしょうか。
鳥井:そうですね、やはりセキュリティ面の担保が一番です。あとはコミュニケーションロスの問題もあるので、みんなで話し合ってます。
—最後に「こんな人に来て欲しい」という希望はありますか?
吉本:やっぱりエンジニア部隊になっちゃってるので、表だって人と喋ったり発表したり人前で話したがる人がいない。あとは社外に向けた文章を書ける人。ここが、なかなか不足しているんですね。
私ぐらいしかお喋り担当がいないんですよ。
—事前にサイトで確認していた会社の印象とギャップがあります。
吉本:なかなか写真とかだと、お堅い感じがしちゃいますよね。そんな感じで、対外的コミュニケーションを取れる人がいると新しい風が吹くのかなぁ〜なんて思いますね。
岸田:あとは、機械学習系の方が欲しいかな。うちも自然言語などを活用しているのですが、より推進していきたいので、僕と一緒に意見出しを活発に頑張ってくれる人がいると嬉しいかな。
鳥井:私は「技術+ビジネス」を一緒に議論できる人が欲しいなぁと。
やっぱり社内開発の都合上、ドメイン理解が必要になってくるんです。その時にテクノロジー、技術の話だけではなくビジネスの側面も理解できて議論ができる方がいると嬉しい。
—それがあの評価制度の円の中にも表れてますよね。
鳥井:そうですね。そういう人がいることで、どんどん新しいプロダクトが生まれると良いなと。
—マネジメント側についてはいかがでしょう?
鳥井:私が将来的に目指す部分が、まさしくエンジニアリングマネージャーなので、私がマネジメント側に上がっていくうえで今の私のポジションに入ってくれる方がいると嬉しいなぁという感じです。
—ありがとうございました!
2022/10/07 追記 社名変更に伴い「株式会社フィエルテ」から「株式会社ディーバ」に変更しております。