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2021.07.28 2023.12.14 約3分
コロナ禍による”巣ごもり消費”で活況を呈しているのが、インターネット通販を中心とするEC市場だ。インターネット、ネットモールの登場でこれまでになかった市場を開拓し、技術の進歩とともに急速に成長、私たちの生活に浸透したECは、今また大きな転換期を迎えている。どちらかというと立ち遅れている業界のIT化を推進し、斬新なサービスを打ち出しているのが『ロジプレミアム』と『LogiMoPro(ロジモプロ)』という二つの物流サービスを展開する株式会社清長だ。物流WEBサービスプロダクトのシステム開発内製化に踏み切ったという”物流のプロ”が広げる「物流Tech×物流オペレーション」の新たな可能性について武田紀世彦副社長と中川学LogiMoPro担当次長に聞いた。
「ネット上にない商品はない」といわれるほど多品種化し、1個からの小ロットでも早ければ注文から翌日に自宅に商品が届く。消費者にとっての”夢のようなお買い物環境”はしかし、多品種、小ロット、高回転という小売り側の大きな負担、「宅配クライシス!」と見出しになるほどの宅配事業者の負担、ECの物流作業を一手に引き受ける物流会社の負担で成り立っている。2030年問題(労働人口の急激な減少)にむけて、社会問題化が加速していくといってもいいこうした課題の解決に、ITを駆使して取り組んでいるのが株式会社清長だ。清長は、2006年に現在の2代目社長就任と同時に物流アウトソーシング事業を開始。副社長を務める武田氏は、清長のEC特化型物流アウトソーシングのビジネスモデルをゼロから構築した人物だ。
「われわれが物流アウトソーシング事業を始めた当初は、EC市場は黎明期から成長期になっていった時期でした」
2006年当初、Amazonや楽天、Yahoo!ショッピングでのネット通販は当たり前になっていたが、ECに特化した物流サービスを提供する企業はほとんどなく、前職で生花販売業のEC部門の責任者を務めていた武田氏は、EC物流に特化することで、「レガシーな」物流業界を変えて、困っているEC企業様を強力に支援できるという自信があった。
「お花屋さんは物流的に難易度がかなり高いんですよ。当然枯れてしまいますから在庫も長期間ストックしておけないし、花束などを送る場合はアレンジメントされたものを崩さないように、痛まないように出荷しなければいけない。物流の部分で非常に気を遣う商材なんです」
難易度の高い物流の現場を肌で知る武田氏は、BtoCで鍛えたこのスキームを基準に事業を開始。
「ECに特化したサービスがなかったので、EC事業者様からも興味を持ってもらえ、物流アウトソーシングサービスをご利用していただいた際の満足度も非常に高く、考えていたよりも早期に収益化することができました」
まさにECではロングテール戦略「多品種、小ロット、高回転」が当たり前になっていった時代、 EC事業者は成長を続けつつ、競争の激化によってサービスのさらなる向上、ビジネスモデルの変化を余儀なくされていたタイミングだった。
「変化に対応できる体力のある企業が生き残るという時代だったので、必然的にクライアントは、エンタープライズというか業界の中でもトップ層ということになっていきました」
レッドオーシャン化したEC業界で、先進的な取り組みをしているクライアント様の物流をサポートすることで、清長は順調に成長していった。物流の出口のところだけでなく、物流にまつわるさまざまなデータ管理も任されるようになり、清長の提供するプロダクトは、物流管理システムからその企業の物流オペレーションに欠かせないツールになっていった。
「物流の現場は、全般的なIT化というところでは遅れていますが、倉庫の機械化、ロボット導入、オペレーションのシステム化は進んでいるんです。クライアント様の基幹システム・受注システムとうまく連携して業務の自動化、システム化、省人化を進めたいというクライアント様との相性は良かったと思います」
順調に成長を遂げる第二創業以降の清長だったが、EC業界の急激すぎる進化は、副作用的に大きなひずみを生んでいた。商品を届ける宅配業者の業務過多「宅配クライシス」、人手不足を主因とする「物流会社の労働力不足」がそれだ。
「EC市場も2015年以降、ECプラットフォーマーの拡大や競争の激化、またAmazonのシェアが急激に伸びたことにより、EC事業者様のビジネス環境も大きく変化しました。商品力・マーケティング力に注力できる総合的に体力のあるエンタープライズ(大規模EC事業)の事業者様は市場と共に売上を伸ばしていましたが、スタートアップ・中小規模ECにとっては非常に厳しい環境になっていきました。当社としてはエンタープライズのクライアント様と一緒に順調に成長していて、売上も上がっていたのですが、中小規模向けのクライアント様が大きな負担なしに簡単に事業を開始、継続できる方法はないか、それをテクノロジーで解決し、物流サービス提供ができないかという発想になったんです」
清長は、「物流サービスを通じて、人々から感謝される」を経営理念として掲げている。物流のプロフェッショナルとして培ってきた経験を、クライアントに還元し、物流の視点からクライアントのビジネスをサポートする。このミッションを考えたとき、クラウド、SaaS型のもう一つのプロダクト『LogiMoPro』が誕生した。
「これまでのエンタープライズクライアント向けのプロダクトを『ロジプレミアム』として、新たに中小規模向けに汎用性のある機能を抽出したSaas型EC物流アウトソーシングサービスの『LogiMoPro』を開発したんです」
2021年11月からはシステム開発・保守を内製化し、エンジニア人材を増やしていくという同社だが、ここからは武田氏と中川氏に作成してもらった『LogiMoPro』のライフチャートを手がかりに、話を進める。
── 『LogiMoPro』のローンチは、2017年3月となっています。構想や準備も含めると当然もっと以前からプロジェクトはスタートしていたのと思うのですが、これはいつくらいからですか?
武田 半年でビジネス設計をして、半年で外注先でシステム開発、次の半年で限定的なクライアントに対するテスト期間を経ているので、1年半前からということになります。
── 宅配クライシス、経営理念のお話もありましたが、そもそも中小規模向けにサービスをというのはどういうところからですか?
武田 今になって初めて、新しく社会的課題に取り組みます! ということではなく、創業から、規模は小さいなりに社会環境の変化に対応するソリューションを提供してきたという自負はあるんです。問題を正面から受け止めて、解決していきたいという思いのメンバーも多く、これまで培ってきたシステムを単にスケールダウンして提供するのではなく、新しい価値を付加して届けたいという思いが『LogiMoPro』の開発、提供につながりました。
これまでのサービスがすごく限定的に、エンタープライズ限定になってきたので、それでは社会的貢献範囲が狭いなという思いがありました。
── ライフチャートを見てみると、NextEngine、シッピーノ、BASE、カラーミーショップなどなどサービスと連携するたびに矢印が上向きになっています。
武田・中川 それぞれのサービスに対応することで、それを使っているクライアントが増えていったというところですね。はじめはゼロからのスタートで、知名度もありませんでしたから、まずは知ってもらうところから。ECサービスと合同で物流サービスにできることを啓発していくイベントやセミナーをやらせてもらって、徐々に知ってもらっていった感じです。
2020年以降はコロナ禍の需要増もあって、ユーザーは順調に増えていて、例えばBASEさんなんかは、個人でハンドメイドの商品を出品するような使われ方も出てきて、物流をまるごと引き受けるサービスのニーズも高まっています。
── 宅配クライシス以降、小口、少量の取引だと契約が難しかったり、値上げだったり、個人では送料が高すぎたりということも起きているそうですね。
武田・中川 その点、『LogiMoPro』ではクライアントが直接宅配業者と契約するのではなく、清長がまとめて契約、最適な物流サービスを選択しますから、心配はありません。ECサイトの立ち上げには、契約ごとも含めて1、2カ月とか、意外に準備に時間がかかるのですが、『LogiMoPro』は使い始めからすぐにサービスが始動できます。開発にあたっても、簡単で早くて便利というのは意識しています。
── ユーザ様のITリテラシー・物流リテラシーの熟練度にも幅がありそうです。
武田・中川 そうですね。特にスタートアップ・中小規模EC事業者様は、物流知識経験・IT知識経験が浅い方も多く、「簡単に便利に」というラベリングが重要だと考えていました。一例としては、通常なら「CSV取込み」くらいでいいところをユーザのITリテラシー合わせて「Excelデータの取込み」にも対応しているというような点です。この列のこのセルにこのデータを入れて、という説明でそのまま取り込めるように……といったユーザライクな開発にフォーカスしています。
── 細かい開発対応も含め、外注開発で順調にビジネスも伸びていたと思うのですが、自社開発(内製化)に踏み切った理由はなんですか?
武田・中川 このまま『LogiMoPro』を提供していくだけなら今の体制(システム開発・保有の外注)で問題なかったんですよね。ただ、エンジニアを含めたITの知見を持っている人が弊社にジョインしてくれることで、「その先」が描けるんじゃないかという期待があるんです。
ITの知見を持った人でないと出せないアイデアがあると思っていて、プロダクト開発だけでなくビジネス設計から、「エンジニア的発想」を持った人に入ってほしいというのがシステム内製化に踏み切った最大の理由です。
── 今後加わるエンジニアには、プログラムを書く、機能を実装するということ以外に、一緒に新しい物流のあり方を作ってもらいたいという思いもありますか?
武田・中川 まさにそこで、私たちが蓄積してきた物流現場のオペレーションに対する知識やノウハウをITでもっと生かしてくれる人材としてエンジニアに加わってほしいんです。
2030年問題が顕在化しているように、労働力の激減は必須の物流業界では、既存サービスの強化だけでなく、「物流×IT」を加速して、新たな物流サービスを提供する必要があるんです。
社会課題を解決してより良い社会を一緒に目指していける「課題解決型の優秀なエンジニアの皆さん」に、是非清長の一員となってほしいと切に願っています。
物流業界の本格的なDXはまだ始まっていません。清長のメンバーとなって、未来の価値あるサービスの開発・提供を一緒に行っていきましょう!
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清長がプロダクト開発を通じて推進するのは「物流Tech×物流オペレーション」の世界。この分野が発展を遂げることで、物流業界の上流から下流、結果的には人々の暮らしも豊かにすることにつながる。物流とITが結びつくことで、「物流サービスを通じて、人々から感謝される」未来がやってくることになる。
ライター:大塚一樹