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ソフトウェア設計とメンテナンス

「エンジニアが顧客を理解するためには?」プロダクト・レッド・オーガニゼーション著者 横道 稔

プロダクト主導型開発組織の探求

2021年10月発刊の『プロダクト・レッド・オーガニゼーション』は、顧客に愛されるプロダクトを組織として作る方法や思想が数多く紹介されています。今回 Forkwell は書籍の翻訳者であり企業のプロダクトマネジメントアドバイザリーを務める 横道 稔 氏を招き勉強会を開催しました。

本レポートでは、イベント後半に大盛り上がりを見せた登壇者Q&Aの様子をレポートします。

回答者

横道 稔

横道 稔

LINE株式会社

書籍「プロダクト・レッド・オーガニゼーション」翻訳者。LINE株式会社 Effective Team and Delivery室 室長、PM Success TF TF長(2022年3月当時)。プロダクトマネージャーカンファレンス代表理事。個人事業主として、プロダクトマネジメントのアドバイザリー業務にも携わる。大学卒業後、SIerにてPJM、アーキテクトを経て、サイバーエージェントに入社しアドテクエンジニア、開発責任者などを経験。2018年にLINE株式会社に入社し、現在に至る。

有馬 幸介

有馬 幸介

ストックマーク株式会社 取締役CTO

大学・大学院時代(2010年3月修了)に機械学習(AI)を用いたテキストデータ解析及び分散環境における行列演算アルゴリズム(ビッグデータ処理)を研究。大学院修了後、大規模な業務システムの開発を得意とする新日鉄住金ソリューションズ(当時、現日鉄ソリューションズ)に入社。2000人月規模の会計業務システム開発案件等にてチームリーダーを担当し、社長賞に選出される。2016年11月にストックマーク社を共同創業、取締役CTOとして従事。

モデレーター

岩瀬 義昌

岩瀬 義昌

ストックマーク株式会社 Co-VPoE

通信事業者にて大規模IP電話開発やWebRTC Platformの開発運用を担当。その後は人事として、全社の人材開発・組織開発を担当している。外部登壇も積極的に実施しており、Developers Summit 2021 のベストスピーカー受賞(3位)。 また本業以外では、Tech系Podcastである fukabori.fm のホストや、大学の非常勤講師としてプログラミングを受け持っている。2021年12月より、ストックマーク株式会社の Co-VPoE としてエンジニア組織を中心に支援している。

Q:CPOを経験者が務める重要性を教えてください。

横道:CPOを置く目的が「プロダクトの重要性を内外に示す」ことであれば、経験の多さにかかわらず有効な面もあるのではないでしょうか。一方、CPOに実利性を求めたり意思決定者として置きたい場合は、経験者である必要はあるのかなと思いますね。

岩瀬:ストックマークの従業員は60名ほどですがCPOについて何か考えはありますか?

有馬:世界一採用しづらい職種の一つっていう問題もあり、当社はまだ採用できていないんですよね(笑)重要度は高いですが採用がなかなか……。

岩瀬:たしかに難易度は高いですよね。日本だとCPOの枠割をいくつかの職種でカバーするケースが多いのかも知れませんね。

横道:CEO、CTOが実質的に見ていることが多い気がしますね。

Q:営業が強い企業がPLOへ移行するための方法は?

横道:もし Sales-led で十分に売れるプロダクトで困ってないのであれば、それはそれで問題ない気もします。少し脱線しますが、日本は国内のみをマーケットにしたプロダクトが多いので、PLG導入メリットが相対的に不利だなと感じます。例えば Zoom はグローバルをターゲットにしたプロダクトなので、全然マーケットの大きさが違いますよね。日本はPLGを導入せずとも絨毯爆撃的に攻めていけば、ある程度マーケットが取れるというか……。ぜひ、皆さんグローバルプロダクトを目指して欲しいですね。

質問に答えると、やはり実際にデータを見せることが良いでしょう。顧客にとってもセールスにとっても役立つデータを示して「これは自分達にとって必要なものだ」とメリットを感じてもらえると思いますね。

岩瀬:相手の立場になって意見をあげるというのは、チェンジマネジメントの鉄板ですね。有馬さんに聞いてみたいのですが、スタートアップはある程度 Sales-led でいかないと死んでしまうという問題もあると思います。このあたりはどうお考えですか?

有馬:悩ましいですよね。あるあるですよね。僕らの場合は、エンドユーザーの満足度がすごく低い時期があったのでプロダクトを良くしていかないと……というのがありました。営業がタッチできている推進者のNPS(顧客ロイヤルティを測る指標)とエンドユーザーのNPSをどちらも取っていましたね。

岩瀬:推進者とエンドユーザーのNPSって結構乖離が起きちゃったりするもんなんですか?

有馬:僕らは起きまくってましたね。むしろ今でも起きています。せめて推進者に追いつかないと目に見えない大量のエンドユーザーには届かないので、やっぱりそこは大事ですよね。

Q:「プロダクト主導型組織(PLO)の特徴をひっくり返してみた」に当てはまった場合、何から手を付ければ良い?

横道:やはりデータでしょうね。まずデータを見て自分たちの現在地を確認する。

岩瀬:データが取れていない場合は、まずデータを取るところから頑張るしかないですよね。

横道:そうですね。ただ全然取れてないってことはそんなにないんじゃないかな?ページ遷移のログやGAのデータはありそう。割と低コストでもできることはありますね。

岩瀬:有馬さんはいかがですか?

有馬:いやぁ悩ましいですね。うちは同時爆撃的にやっていったので……でもエンドユーザーの声がすべてなので、そこをきちんと言語化してみんなに共有することが大切なのではと思います。

Q:エンジニアが顧客を理解するための取り組みはありますか?

有馬:僕は黎明期に全ての商談に参加していたので「本当に困ってるんだ、この人!」という温度感が実感できましたね。ときどき商談に参加するのは良いと思います。今は Zoom が主流なので参加しやすいですよ。カメラオフでも参加するだけで全然違います。あとは週次でカスタマージャーニーの読み合わせをしています。時間はかかりますが、ビジネス側とのすり合わせに有効です。

岩瀬:それ凄くいいですよね。商談参加ってハードルが高い会社もあると思いますが、参加ハードルを下げる努力も必要かも。

横道:エンジニアの方からの質問であれば有馬さんのご意見に共感します。直接顧客の声を聞くことは大切ですよね。エンジニア以外の方がエンジニアに顧客理解してもらいたいということであれば、そのエンジニアの特性に合わせる必要があると思います。商談参加にハードルを感じるエンジニアであれば、分析レポートを渡してみたりとか。

有馬:エンジニアが同席して直接説明をすることで裏側の仕組みが解説できたり顧客に価値をより伝えることができるメリットもありますからね。

Q:PLGの考え方をどう捉えるべきか?

—PLGには「良いものが売れるものではなく、売れたものが良いものである」という考え方もあるが、これをどう解釈すべきでしょうか?

横道:面白いトピックですね。PLGの考え方のベースは「良いものは売れる」ではなく、むしろ「良いものでも売れない時代だ」というのが前提にあります。良いものをちゃんと売るためのPLGという感じでしょうか。

有馬:おっしゃるとおりで、売れるとみんなが使うからレビューが増えたりコミュニティが活性化したり。美しいから売れるとは限らないけど、みんな使っているからいいものになっていくというのはあるかも知れないですよね。

岩瀬:流行ってるから知見が増えてグループでエコシステムというかコミュニティが回ってくるのは本当によくあるパターンですよね。

横道:昔よりは健全になっているといえるかも知れないですよね。

一同:確かに……!!

Q:どの指標をNorth Star Metric(NSM)にすべきですか?

横道:Amplitudeという会社の本社サイトにNSMのプレイブックのようなものがあり、どうNSMを見つけていくかステップ・バイ・ステップのワークショップのためのインストラクションがあるんですよ。ぜひ、参考にしてみてください。いきなり簡単に「NSMはこれだ!」と見つかるものではないので、まずいろいろなメトリクスを取ってみることが大切だと思います。

ノーススター・メトリックの求め方

North Star Playbook

岩瀬:有馬さんはいかがですか?

有馬:模索中ですが、NPSを横軸にして各指標との相関を見ていくことをしています。僕も知りたいです。

岩瀬:みんな悩んでいるはずなので、色々な知見が世の中にもっと出てくるといいですよね。

*NSM……North Star Metric(ノーススターメトリック)とは、企業がビジネスグロースを目指すために設定をする重要指標のこと。

Q:アジャイル開発とPLOとの関係性について教えてください。

岩瀬:アジャイルイベントによくいる横道さんの意見が聞きたいですね。

横道:そうですね。すごく必然的な関連っていうのは、あえて作らなくてもいいかな。書籍の前半部分で「アジャイルは、だいぶ当たり前になりましたよね」という導入文があったので、そこはやっぱり日本と北米の差は感じる部分ではあるんですけど……。もちろんアジャイル開発が前提になっていると、いろんなものが間違いなくプラスに働くと思いますね。

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横道 稔
LINE株式会社

プロダクトマネジメントアドバイザー

書籍「プロダクト・レッド・オーガニゼーション」翻訳者。LINE株式会社 Effective Team and Delivery室 室長、PM Success TF TF長(2022年3月当時)。プロダクトマネージャーカンファレンス代表理事。個人事業主として、プロダクトマネジメントのアドバイザリー業務にも携わる。大学卒業後、SIerにてPJM、アーキテクトを経て、サイバーエージェントに入社しアドテクエンジニア、開発責任者などを経験。2018年にLINE株式会社に入社し、現在に至る。