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■キャリアとスキルアップ
2022.12.12 2024.06.28 約3分
── 「つぎの一歩が見つかる、気づきと学びの場」 Forkwell Library シリーズ 第10回は、2022年11月4日出版 「技術書」の読書術 達人が教える選び方・読み方・情報発信&共有のコツとテクニック を取り上げます。
本邦初「技術書(コンピュータ書)」の読書術を指南する本が登場。正にこのForkwell Libraryシリーズに必要な学びであると考え、著者であるIPUSIRON氏、増井敏克氏をお迎えし、読書を血肉にするコツとテクニックを伺いました。
小説やビジネス書なら1冊でだいたいのストーリーがわかりますが、技術書は複数の技術が絡み合い、それぞれの技術も非常に奥が深いという特徴があります。当然、入門書だけでは中身が理解できず、専門書まで読む必要があります。さらに読み手の技術レベルや職種に合わせ、幅広い展開があります。
セキュリティひとつを例にあげても10年前なら「パスワードは定期的に変更しましょう」が当たり前でしたが、現在では通用しません。少し前に出版された本がそのままでは使えないことも多々あります。
ネット上では膨大な情報を無料で閲覧できます。しかし探すのに非常に時間がかかったり、信憑性に乏しいことも多いです。技術書の場合は、体系的にまとまっており、また独創性よりも正確性が求められるため、著者本人の考え方よりも一般的にどうであるかという視点になります。
「3」の発想 数学教育に欠けているもの の冒頭には『物事がドミノ倒し現象のように繋がっていく性質を理解するには「2」の発想ではなく「3」の発想が大切』と書かれています。ドミノが2つの場合は倒れた時点で終わりですが、ドミノが3つあるとその先に4つ5つと広がります。あみだくじでも線が2本しかなければ、どちらかに偏ってしまいますが、線が3本以上になると広がりがでます。これを技術書の読書術に活かせると考えています。
例えばPHPを学びたい場合、多くの人は入門書+専門書を読み、知識を得ようとします。しかし、この方法では、実務に応用することはできません。学校の試験対策で、教科書+参考書+ドリル を組み合わせて使うように、プログラミングでも応用力を付けることが大切です。
あなたがマネージャーで「自分で作るわけじゃないから、ちょっと技術のことがわかればいいよ」といったケースもあるでしょう。実はこのようなケースも、2冊ではなく3冊を見比べることが大切です。
もし同じ事柄について、2冊とも解釈や解説が違っていたら、どう判断しますか?3冊あれば多数決で判断ができるはずです。3冊以上を読む事で、視野が広がり正確な判断ができるようになります。
ITパスポート試験や基本情報技術者試験程度であれば、「2」の発想 (参考書+過去問)で十分に合格できるでしょう。しかし上位の試験(IPAの上位試験や技術士など)では、選択式だけでなく記述式も出てきます。記述式は、大量に文章を書く必要がありますから「文章の書き方」の本をプラスして読む必要があるでしょう。このときのポイントは、文章を読むだけでなく、実際に書いてみることです。
私は「百ます計算」で有名な岸本先生の「読む量は学力の上限を規定し、書く量は学力の下限を規定する」という言葉が好きです。本を読むことで知識量は圧倒的に増えます。しかし本を読んだだけでは、その人の理解力をはかることはできません。一方、本を書いている人は、それなりの理解力を得ているといえるのではないでしょうか。要するに書いたことは、その人の血となり肉となるということです。
支出の役割を3つに分けてみました。
このバランスが崩れると、なんだか楽しくないんですね。コンピュータって、本当にいろんなことができます。例えば、私の本だと数学パズルを解いてみるとかですね。それって仕事にも役立たないし、あまり勉強にならないかもしれません。でも「今の仕事には繋がらないけど、将来何かに繋がるかも」と、遊びの心で本を買うのもいいんじゃないかなと思います。
例えば「3000円もする本を買っちゃったから、なんとか読まないと……」と合わない本に何時間も費やすのは、ちょっと時間の無駄ですよね。1度目は30分から1時間程度でざっと読んでみて、自分に合う本なのかを判断しましょう。合わないと思ったら、諦めて次の本にいきましょう。
プログラミングであればソースコードを入力してみる、実行してみる。ネットワークやデータベース、サーバーなら、環境を構築してみる。こうして実際に試してみることが重要です。当然、すごく時間がかかりますが、やはり技術書は手を動かさないと、なかなかできるようにはなりません。
わからなかった部分や解決した手順をノートに残します。「この作業を2度目にすればいいのでは?」と思うかも知れませんが、3回読むことが大切なのです。人は1度では覚えられません。2度目の復習、3度目のまとめで、ようやく知識が定着するのです。
私の場合は、まとめた内容をテキストファイルに残すようにしています。ここで活躍するのが「タグ機能」です。例えば「Pythonではじめるアルゴリズム入門」を分類して保管しようとすると「格納先って、Pythonフォルダ? アルゴリズムフォルダ?」と悩みはじめ、破綻します。分類せずにタグを使うことでタグ同士をリンクさせることができるので、あとから見返すときにとても便利です。
ちなみに、Scrapbox は他人と共有するとき、Obsidian は自分の中だけでメモをとるときに使用しています。そのほかのノートのまとめ方は下記からダウンロードできます。興味のある方はぜひアクセスしてみてください。
ここからは「技術書」の読書術 著者 IPUSIRON 氏(@ipusiron)を加え、視聴者からの質問に回答します。
増井:基本的には紙で、検索が多いときには電子ですね。
IPUSIRON:私の場合は半々ですね。それぞれの良さがあるので、あまり区別していません。値段によってどちらを購入するか選んでいるところはありますね。
—技術書は、オーディオブックって少ないんでしょうか。
IPUSIRON:海外だと結構多いみたいですが日本はあまりないですよね。
増井:とくに決めていないのですが、とにかく手元に本を置いておき、空いた時間にすぐ読めるようにしています。電子書籍は iPad にたくさん入っているので、紙書籍を常に1冊持ち歩いてますね。
IPUSIRON:私もとくに読書時間は決めず、常に読める状態にしています。例えば、車の運転中にはオーディオブックを活用しています。オーディオブックだと倍速で聞けるので便利ですね。
増井:有名どころでは 結城 浩さんの数学文章作法 が、おすすめです。あとは好きな著者の文章を真似してみるのも文章力アップに繋がるかもしれません。
IPUSIRON:そうですね。何冊も読んでいますが、それぞれの書籍に共通するポイントを重視することが大切かも知れません。漢字の閉じ開きは、常用漢字の開き方や新聞を参考にしています。
増井:基本的には貯まっていく一方で……とにかく本棚が溢れていて引越しも本当に大変で……最終的に絶対読まない本はスキャンして裁断してから捨てますが、ほとんどないかな。
IPUSIRON:自分で購入した本については、読了後に早めに売ってます。
—「もう読まないな」と感じる基準は?
増井:あぁ〜とくにないですね、1970年代の本でもたまに引っ張り出して読んだり……。読まなくても歴史として残しておきたかったり。
IPUSIRON:中身が古くなったり自分が理解したと感じるものですかね。
増井:私は多忙というより、単純に目が疲れて読む気にならないときがあります。そんなときは、ゲームや外出などで気分転換します。
IPUSIRON:執筆活動で多忙なときは、あえて普段読まない本に手を伸ばしてみます。新しいことをするのって楽しいじゃないですか。そういう風にリフレッシュしています。
増井:基本的にパワーポイントで作成し、あとは出版社におまかせします。
IPUSIRON:細かい指図は Microsoft Visio で作成し、出版社に清書してもらいます。
増井:基本的に見出しを読むだけで良いと思います。新聞も見出しを読んで、興味があれば本文を読みますよね。それと同じような感覚ですね。
IPUSIRON:1ページでも1行でも読んでみて、何かを得られればラッキーくらいな考え方でいると楽なのではと思います。
IPUSIRON:あまり気にせずどんどん書いていき、最後に削ぎ落とす方法が良いのではと思います。
増井:最初からブラッシュアップを考えるのではなく、まずはとにかくメモすること。私の場合は、ネットにあまり落ちていない情報を優先的にメモするようにしています。ただ、スキルを付けてから書こうと思うと永遠に書けないので、細かいことは気にせず書くことが大切だと思います。
増井:私も多忙になるとバランスが崩れますね。これはもう、本当に空き時間を探すしかないんですよね。インプット(読書)しないとアウトプットできないので「インプットするぞ!」を、頭の片隅において過ごすようにしています。
IPUSIRON:インプットすれば自然とアウトプットしたくなるので、あまり細かいことを気にせずインプットすると良いのかなと思いますね。
増井:私もそうです。改善方法があったら教えてほしいです。しおりを挟んだ本が積み重なっていく……
IPUSIRON:積読が当たり前だと思えばいいですよ。1日に数えきれない本が出版されてるんですよ。目移りするのはいいことですよ。
—中途半端と捉える必要がないのかもしれないですね。
IPUSIRON:流し読みでもいいから最後まで読んでしまえば、罪悪感がなくなると思います。
IPUSIRON:実は、最初は技術書ではなく小説を読んでいたんですよ。やっぱり読書を通じて主人公の人生を体感できることが楽しい。それで読書の癖がつきました。みなさんにも自分なりの読書術を身につけてほしいです。
増井:本って書くのに半年とかかかるわけで、それを2〜3000円で読めるなら読まない手はない。私は本を執筆して次の世代に伝えていくことで、私が受けた恩を返していきたいですね。
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