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世界の大量廃棄を防ぐプロダクト? バックエンドエンジニアとデータサイエンティストが社会変革を担うー瀬川直寛、荻原昂大&持田春嘉(フルカイテン株式会社)後編

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すべての小売業に内在する「在庫問題」の解決を目指して2017年にローンチされた『FULL KAITEN』は日本の小売り、卸、メーカー各社の在庫の適正化、経常増益に貢献しています。

後編ではフルカイテン株式会社の代表取締役 瀬川氏、バックエンドエンジニア 荻原氏、データサイエンティスト 持田氏に社内文化や、世界の大量廃棄問題を解決する 『FULL KAITEN』の話を中心に伺いました。

前編はこちらからご覧になれます。

フルカイテン株式会社に入社を決めた理由

――荻原さんと持田さんのこれまでのキャリアについて教えてください。

荻原 エンジニアに興味を持ったのは、高校入学の時ですかね。ゲームが好きだった、パソコンが好きだったみたいな軽い気持ちだったんですけど、高専に進学してIT、プログラミングに触れることになりました。

新卒1社目だった前職では、バックエンドエンジニアを中心にフロントエンドも書いたり、チームのリーダーをやったり、結構幅広い内容を業務として行っていました。これはこれで良い経験になったのですが、業務内容が広すぎるなと感じていたんですね。自分のエンジニアとしての方向性が定まらないっていう感覚がありまして。そこで転職を考え、新天地ではバックエンドエンジニアとしてしっかり腰を据えてやっていこうと考えていました。

――いろいろ経験した上でバックエンドエンジニアを選んだのは?

荻原 こだわりがあったというより、自分の性格に合っているなと思っている部分はありますね。かっちりしたものが好きで、プログラムにしても「書いたらとりあえず動く」ものより、きっちりコンパイルして動くシステムだったり、きっちり設計されたインフラだったりとかに惹かれるんですよね。書いて終わりではなく、随時検査してやっていきたいタイプなんです。そういう意味ではバックエンドのシステムをエンジニアとして支えるのが向いているのかなと思っています。

「これまでの経験からバックエンドエンジニアに専念したい」

ーー転職するに当たって、フルカイテン株式会社を候補にした理由、最終的に選ばれた理由は?

荻原 自分の場合は、業務内容ですね。バックエンドエンジニアとしてしっかりやっていきたいという思いと、募集人材の業務内容がピッタリ合っていたんです。

――持田さんはいかがでしょう?

持田 私も前職が新卒で入った会社で、SIerで仕事をしていました。SIerは請負で開発をしている分、どうしてもサービスそのものとかシステムの成功よりも自社の利益優先になりがちなんじゃないかと思うようになって。

 転職に際しては、自社でサービスを提供している企業を探していて、そのなかでも社会貢献性が高いようなサービスだとさらにいいなと考えていました。

「在庫問題を解決する」というフルカイテンの考え方をカジュアル面談で代表の瀬川さんから伺ったとき、自分の思考とも合っているんじゃないかと思いました。

――機械学習については前職でも?

持田 2年ほどデータ分析、機械学習でモデルをつくるプロジェクトに在籍していました。前職から機械学習に携わっていたといえばそうなんですが、大学は生物学部。情報系ではないんです。プログラミングも就職後から始めたので、キャリアとしてはちょっと珍しいかもしれないですね。

 生物学部時代から脳神経、人間の認知に興味がありました。そもそもAI技術は、人間の脳機能を再現したいっていう研究から派生してできた分野なので、就職活動でも機械学習に関われたらいいなという気持ちはありました。

「事業が社会に対しての貢献性を考えていた」

――転職するに当たって、フルカイテン株式会社を候補にした理由、最終的に選ばれた理由は?

持田 自分の職探しの条件にまず、IT系、Web系の企業で、なおかつベンチャーというのがありました。その上で機械学習エンジニアの職種だったこと、自分がしたい仕事ができるということで。それと、カジュアル面談で代表の瀬川さんから、フルカイテンの事業が社会に対しての貢献性を考えている、ミッションについてのお話をいただいて、さらに興味が強まりました。

「在庫問題の解決」が社会貢献につながる

――瀬川さん、御社では「在庫問題の解決」が社会貢献につながるというミッションを掲げておられます。このミッションについて教えてください。

瀬川 私たちは「世界の大量廃棄問題を解決する」というミッションを掲げています。商品がたくさん作られて、たくさん余って、たくさん廃棄されていくのはなにも日本だけで起きていることじゃなくて、地球規模で起きていることなんです。だからスタートアップとして世界の大量廃棄問題を自分たちの事業で解決していきたいなというふうに考えています。現在は国内のビジネスしかやっていないんですけど、いずれは世界に広げていきたいという考えです。

――持田さんはこの点に共感された?

持田 カジュアル面談で印象に残ったのは、国内の大手衣料品メーカーでも在庫管理の手法はかなりの部分手作業というか人力でやられているということだったんですね。私でも名前を知っていてお世話になっているような企業が、昔ながらというかある意味で非効率的なやり方をいまだに続けているのがかなり衝撃で、でも逆に機械学習などを活用したシステムを入れた場合のインパクトが非常に大きい分野だと感じました。その先に大量生産、大量廃棄のような社会問題の解決があるのはやりがいがあるなと。

現在のミッションは取引先の社長がポロッと口にした言葉から

瀬川 実はこうしたミッションは、この事業をやり始めた当初から思ってたわけじゃないんです。最初は在庫で死にかけた自分の経験から、在庫に困っている社長さんを助けたいという気持ち。本当に単純にそれだけだったんですね。今思えば視座が低いんですけど、あるとき取引先の社長さんから「FULL KAITENが広まっていくと、それこそ森林伐採とか資源の無駄な消費とかが減っていくよね」と、商談の場でポロっと言われたんですよね。

その商談が終わってからめちゃめちゃそれが頭の中でリフレインして……。「確かにそうやな」と。目の前のお客さんの役に立って、そのお客さんが無駄な在庫を少しでも持たないようになっていくと、使われていたはずの資源を無駄遣いせずに済む。廃棄するときの資源も、排出ガスも減ってFULL KAITENが一つのきっかけとなって地球上で起こっているさまざまな問題の解決につながるんじゃないかと。

商品が製造されている場所は世界中に広がっているじゃないですか。SaaS型クラウドサービスなら、世界中に広がっていける。自分たちも世界に拠点を持つ必要があると思っているんですよ。

「不幸な転職」は避けるべきと一度は断りかけた

――荻原さん、持田さんについて、チームに加わってもらう決め手になったのはどんなことだったのでしょう?

瀬川 採用のポイントとして業務上求めるスキルは当然上位にくるんですが、そこがピッタリ重なった。さらに、この会社が大事にしていることに共感してくれた印象があったんです。彼は寡黙で、いかにも「エンジニアらしいエンジニア」という人なんですが、面接の際にエンジニアとしてこういう風にやっていきたいんだという本人の意思を強く感じました。そんな姿を見ていたので、面接では即決でしたね。

持田さんについては、結構紆余曲折があったんですよ(笑)。スキルはもう間違いない。会社が大切にしている点も共有できる。ただ、一つ懸念点があって……。それで1回断りかけたんですよね。それはスタートアップ、ベンチャーという不確実性が高くて、ものすごくいろんなことが起きる環境でやってもらえるかということだったんです。というのも彼女の前職がかなり大手の安定した会社だったので、私たちが欲しいからといって来てもらって良いものかという点だったんですね。「不幸な転職」は避けるべきだということで、率直にそれを伝えたんですよ。

そうしたら本人から「舐めんな」と(笑)。そんなにヤワな人間ではないですと返事が来て、面接では見抜けなかった自分が悪いんですけど、そう言ってくれるならと来てもらうことにしました。

ーー持田さんはそれを聞いてどんな反応だったんですか?

持田 そこが懸念になるのかと意外に感じました(笑)自己認識としての自分は、「武闘派」というか、周囲からどう見えているかは別としておとなしい人間ではないと思っていたので(笑)。「舐めんな」とは書いてないんですけど、かなり長文で自分がしてきたことや覚悟の部分を返しました。転職活動をしている時点で会社の規模や事業の挑戦性については覚悟があったんですけど、面接でそれをアピールできていなかったかもしれませんね。

「溶け合う」ための’’あだ名’’文化

ーー荻原さん、入社して数カ月が経ちましたが、フルカイテンでの仕事はどうでしょう?

荻原 率直な感想としては、思っていたよりもより土台づくり、基盤を固める部分からやらなきゃいけないんだなというところでした。システム設計から関わる経験はこれまであまりなかったので、嬉しいなぁと感じています。

入社して驚いたのは、「あだ名」です(笑)。入社早々にあだ名をつけてもらったんです。

――そういう企業文化があるんですか?

瀬川 そうなんです。私があだ名をつけるんですけど、歓迎会でも気付いたら最初から終わりまでずっと「何がいいかな」と考えていたりもする。2人はどストレートなあだ名ですが、少し前まで外国人の名前に自分が傾倒したんですね。マークとかジョージとかチャーリーとか。途中で外国人の名前が増えすぎてわからなくなってきてやめちゃいましたけど(笑)。

――あだ名をつける目的というか、効能は?

瀬川 社内で「溶け合う」というのをキーワードにしているんです。固く言うとコミュニケーションなんですけど、コロナ禍でリモートになって改めて感じるんですけど、うちの会社は普段からコミュニケーションについては密にやっていこうとしています。

エンジニアとビジネスサイドの人間って、人柄も全然違う。人種が違うといってもいいくらい違うんですね。SaaS型のビジネスは納品型ではないので、お客さんに長く使ってもらわないとビジネスにならないし、ビジネスにならなかったらミッションを実現できない。お客さんにサービスや製品を長く使ってもらおうと思ったら、エンジニアとビジネスサイドが車の両輪になって走っていけるようにならないといけないと思っているんです。

困ってること、改善点をプロダクトに反映して、ループを回すためには社内の組織の壁、役職の壁なんて必要ないんです。「溶け合う」ために、〇〇さん、〇〇くんと呼んでいたらその時点で壁がありますよね。なのでニックネームを。

荻原 エンジニアからしてもコミュニケーションは重要で、ビジネスサイドから求められていることはある程度認識した上でシステムをつくっていかなければいけないので、そこの認識のブレとかを減らせていると思います。

持田 企業文化的な意味で言えば、前職が思いっきりドライだったので、かなり違いはありました。個人的にはある程度ドライな方がやりやすいこともあるんですが(笑)、社内でのコミュニケーション促進は事業にプラスだと思っています。

’’自分が働いた証し’’を残してもらいたい

――フルカイテン株式会社では、エンジニアを含め積極的な人員増を計画していると瀬川代表からお話もありました。今後どんな人と働きたいかについて聞かせてください。

「私とケンカしてくれる人」と働きたい

荻原 ちょっと語弊のある言い方かもしれませんが、「私とケンカをしてくれる人」と働きたいなと思います。良いシステムをつくるためには、個人の思い込みや独断で進めるよりもいろいろ意見があった方がいいと思っているんです。自分は思い込みが強い方かなと思うので、反対の意見を尻込みせずにぶつけてくれる人と働いていけるといいなと思います。

持田 まだまだシステムの基盤的なところを構築している段階なので、案出しを積極的にしてくれる人、問題点を指摘するだけじゃなくて、具体的なアイデアや方法をセットで発案してくれる人と一緒に働きたいです。周囲を巻き込んで、能動的に行動してくれる人が加わってくれるとうれしいですね。

「開発の文化」を作れる人材がほしい

――瀬川代表はどうでしょう? 入社を考えている人へのメッセージも含めて。

瀬川 2人からも話があったように、プロダクトについては基盤部分さえうまく整理できていないレベルなので、初期段階から関わることを面白いと思ってもらえる人に来て欲しいですよね。

整っていないからこそ、仕組みの部分、仕様の部分、もっといえば”開発の文化”みたいなものもつくってもらえる。ある程度整った環境じゃないと嫌だという人には合わないと思いますが、そこからスタートして自分でやっていけることを楽しめる人にとってはやりがいがあると思います。

会社のカルチャーとして、自分がつくりたいもの、つくれるものを実現するために会社があるという人はスキル面で折り合ったとしてもうちで働いてもらうのはちょっと難しいなと思っています。掲げているミッションが壮大なので、そこへの共感やカルチャーフィットのようなものはものすごく重要だと考えているからなんです。

お約束できるのは、うちに来てもらえれば、エンジニアとして、企業人として、ビジネスマンとして成長ができるよということ。

このステージ、この規模の会社としては異常なくらい大量で、貴重なデータを扱っています。日本の名だたる大企業の在庫データ、売り上げ、商品の動きについての細かいデータを扱える会社はなかなかありません。商売のコアの部分に関するデータを扱えるのは、エンジニアとしても面白いポイントじゃないかなと思います。

こうした生きたデータを扱うことで、我々のプロダクトが世の中をよくしていくステップを目の前で見ることができる。自分がつくったものが社会をよくしていく様子を実感できる。今日やっている努力が、明日の在庫を減らし、数年後の廃棄を減らす。そこに貢献できる。大げさに言えば、社長として、社員のみんなには自分が働いた証しを後世に残してもらいたいなと思っています。

『FULL KAITEN』で世界規模の問題を解決したい

 地球とか世界とかいうとなかなかイメージが沸かないと思いますけど、日本にも少子高齢化、労働人口の激減という「2030年問題」が間近に迫っています。

 新型コロナの問題で、一時的に物が売れない世界がやってきましたが、これは10年後に当たり前に起こることが少し早くやってきただけだと思っているんです。今みたいに、たくさん物をつくることを前提にしたビジネスは到底成り立たない時代がすぐそこにある。これから10年で「在庫問題」を解決して、小売業をはじめとする多くの企業のビジネスモデルを変えていく必要があるんです。

今ある在庫で売り上げも伸ばせるし、在庫は少なくて済む。そんな新しい価値を『FULL KAITEN』というプロダクトを通して、私たちが伝えていけばと思っています。

ライター:大塚一樹

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