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2019.07.25 2023.12.14 約4分
「マンガBANG!」というマンガアプリを主力サービスとして運営する株式会社Amazia。同社CTOである江口氏は、「エンジニアに裁量を任せる会社」を作りたいという思いでAmaziaを立ち上げたそうです。プレイングマネージャーとして開発をしながら、メンバーの担当領域の勉強もされている江口氏は、エンジニアの働き方に強いこだわりがあります。今回は江口氏がエンジニアに求める働き方をお伺いします。
── 現在の御社の業務内容から伺えますでしょうか。
江口:弊社Amaziaは「マンガBANG!」というマンガアプリを主力サービスとして運営しています。現時点ではマンガ事業に集中しており、今後は海外展開も含め注力していこうと考えています。もともとは、私と代表の佐久間とで創業しました。佐久間はジャフコというベンチャーキャピタル、私はフューチャーアーキテクトというITコンサルティング会社の出身です。ビジネスとITで、完全に分業する形で立ち上げたのが特徴だと思います。
── フューチャーアーキテクトでは、どんな業務に携わっておられたんでしょうか。
江口:当時R&D部門があって、そちらに所属する形で入りました。一貫してR&D部門にいたんですが、メンバー自身がプロジェクトに参画して活躍するケースも多くて。ぶっちゃけていうと炎上プロジェクトということですが(笑)。
さまざまなクライアントのプロジェクトに入り、現場も経験しつつR&Dとして社内システムのサポートや新しい技術の検証など、さまざまな領域の仕事をずっと続けてきました。
── その後、イデアコミュニケーションを経てAmaziaを共同設立されたと。
江口:大学時代からWebサイトを作ったり、モバイル系の会社でアルバイトしていました。将来的にベンチャーで起業することを視野に入れ、フューチャーアーキテクトに入ったんです。独立を考えていた6年目の頃に佐久間さんと知り合い、一緒にやろうと誘われた経緯です。実は、イデアコミュニケーション自体がシーエーモバイルと言うサイバーエージェントの孫会社だったんですね。当時、i-mode向け公式サイト「らくらくホテル予約」というサービスを展開していたのですが、うまく運用ができていなくて。そこでシーエーモバイルで経営企画室を担当していた佐久間がイデアコミュニケーションの社長に就任し、CTOとして私が呼ばれた形になります。
── なるほど、そこから共同起業されたんですね。
江口:そうですね。佐久間が立て直すためにイデアコミュニケーション社長になり、シーエーモバイルから独立してAmaziaという会社に切り替えました。最終的には、イデアコミュニケーションをAmaziaと合併する形で立ち上げています。
── 最初の頃は、どういう事業をされていたのでしょうか?
江口:立ち上げはイデアコミュニケーションで行なっていた事業を継承したのと、グルーポン系のサービスを新規立ち上げました。2010年くらいにサービスがいくつか立ち上がりましたが、国内ではわれわれが4番目ぐらいに立ち上げました。最終的に後発会社がグルーポン・ジャパンに買収され、グルーポンが独り勝ちするような形になったんですが、弊社もその中のひとつとしてサービスを立ち上げていました。あとは、Webサービスが中心ですね。他社さんと協業で立ち上げたり、EC系サービスやクラウドソーシング、IT開発会社同士をマッチングするサービスを立ち上げたり。そこまでうまくいく事業に出会う事ができなかったのですが、5、6年前からマンガアプリがかなり来ていました。当時は「ブラックジャックによろしく」の作家・佐藤秀峰先生が、「二次利用をフリーにする」と言い出した頃ですね。「アプリでマンガを読む」という機運が高まり、弊社としてもそこに乗っかろうとマンガアプリを主軸にし、現在に至ります。
── その中で、江口さんはどんなお仕事をメインにされているのでしょうか?
江口:CTOとして基本的な機能開発やサービスの構成を、すべて判断しています。「マンガBANG!」のプロダクトオーナーでありつつ、スクラムマスターとしてチームを回すのが大きな仕事になっています。会社を作る時に思っていたのは、「日本企業では、エンジニアの裁量はあまり大きくない」ということです。社内の下請け的な役割になっている会社が多く、十分にエンジニアが評価されていないという危機感があったんですね。その状況を変えたい思いで、Amaziaという会社を立ち上げています。CTOである私が、役員としてきちんと社内で発言権を持っていなければいけない、と思っています。
── 立ち上げ当時から、エンジニアに裁量を任せる会社であったと。
江口:技術選定に関しては個々の専門領域を持ったエンジニアに、ある程度自由に選ばせる方式です。Androidで言えばKotlinを採用したり、Androidのアーキテクチャコンポーネンツと呼ばれるもののうち「このライブラリを取り入れたい」という話があるなら全面的に採用する形をとっています。
技術選定の誤りは、往々にしてあります。「導入したけど、うちの開発のスタイルには合ってなかった」というケースもあります。その時、担当者を叱ることはありません。「うまくいかない、という知見を得られた」という考え方をします。判断に誤りがあったとしても、次に生かせる経験であると思うようにしています。
── トーマス・エジソンも「9,000個の素材を試し、その内8,999個の素材は失敗だった」といった考え方をしていたそうですが、考え方としては同じですね。
── 江口さん自身は、どんな変化を起こそうとしておられるのでしょうか?
江口:「マンガBANG!」が軌道に乗り始め、お陰様で売り上げも順調に伸びています。ただ、上場する際にも言われたんですが、社員数が売り上げ規模に対して少ないんですね。良い言い方をすれば「少数精鋭」ですが、組織体としてまだまだ不十分です。開発チーム責任者としては、メンバーの拡充を進めていくのが急務だと思います。
分野と言うと「全部」になってしまいますが(笑)、弊社の好きなエンジニアのタイプとしては「技術がとことん好き」という部分がポイントになると思います。今いるエンジニアもそれぞれの専門領域の分野が大好きで、新しい情報を常にキャッチアップする姿勢があります。そういう人が来てくれると良いなと思います。
一方で、弊社はサービスを作る会社です。サービスを作りたい、作ったサービスがみんなに認められると嬉しい、という感覚を持っている方が合っているのかな、と思います。
── ありがとうございます。働くうえで大事にしていることは、どういうものがありますか?
江口:まず、サービスを良くすることを常に考えています。私自身が頑張るのは当然ですが、やはり一緒に働くメンバーは重要です。同じ目線で努力できる人、やりたいことだけをやるより「サービスのために頑張ろう」という意識を持っている方がいいと思っています。
これまではプレイングマネージャーをやってきたんですが、今後は一歩引いてエンジニアに任せることが課題だと思っています。自分が引っ張っていくよりは、優れたエンジニアに任せて、エンジニアと同じ目線で議論できるだけの技術の理解をしていくこと。
トータルの取りまとめは私がやり、エンジニア自身は自分の専門領域を突き詰めていってほしいですね。彼らが突き進んでいく中で「これがいい」と言った内容が、実際に弊社にマッチするのかどうか。幅広い議論ができるだけの知識を得られるよう進めています。
── プレイングマネージャーとして開発をやりながら、メンバーの担当領域の勉強も同時にやられると。大変ですね。
江口:ソースコードのレビューもやらないといけないので、エンジニアの仕事を理解できないと同じ土俵で話ができません。なのでいろいろな言語を勉強したり、ツールの使い方を理解することは頑張っています。
── 業務を行なう上で大事にしているモットーや好きな言葉はありますか?
江口:「プロフェッショナルであること」ですね。仕事に対して責任感を持つ、自分の担当領域をやりきる、「プロフェッショナル」と一言で表せるのかなと思っています。
もう一つは「寛容さ」です。Googleさんの働き方にもありますけど、心理的安全性はとても重要だと思っています。ミスがあった場合、誰かを責めるよりは「なぜ起きたのか」と原因究明し、もう一度発生しないよう対応することをモットーにしています。
チャレンジしやすい環境であるとともに、ミスしてもリカバリーしやすい環境にしようとしています。
── 先ほど「幅広く勉強されている」という話がありましたが、具体的にはどういう方法を取られているのですか?
江口:基本的には技術のドキュメントを読む事が多いですね。言語の仕様書や開発の仕方の書籍、あとはAndroidのDroidKaigiのようなセミナーや勉強会に参加し、最新でどんなことが行なわれているのかを追ったりしています。
── 1日の内で、「この時間は必ず勉強に当てる」といったことは決めてらっしゃいますか?
江口:そこまではできていないですね。どちらかと言うと、弊社ではもくもく会と言って、隔週で2時間くらい業務時間を使い、業務とは独立した形で好きな技術の勉強をする時間を設けています。
AndroidのエンジニアがReactの勉強をしたりしていますし、サーバーサイドエンジニアがGolangを勉強しますし、私自身は機械学習に興味がありますのでAWSサービスで機械学習周りの調査をしたり。新しい技術に触れる時間を持つようにしています。
── 社内では各社員の専門性をやりつつも、他の技術も勉強する機会を持たれているんですね。
江口:専門領域だけをやり続けると、エンジニアにとっても選択肢を狭める事になります。専門性を持ちつつ、隣の技術もしくは別の技術も業務に取り入れていくことも進めています。ただ、実際には開発メンバーが少ないこともあり、うまく回っていないところが課題としてあります。今後メンバーが増えてくれば、余力も出てくるのかな、と思いますね。
── 「良い仕事をしたな」と感じる瞬間を教えてください。
江口:サービスがセールスランキングなどで上位にきたりすると、やはり嬉しいですね。多くの方に受け入れられているんだな、という感触を得られます。
今も新しい作品が配信されたタイミングで、今月はツイッター上でも「この作品が読めるなんてすごい」といった反響が増えています。ユーザーさんのポジティブな反応を見ると、やりがいを感じますね。
── 上場についてはいかがですか?
江口:あまりピンと来ていない部分が大きいんですけど、このサービスをする上では上場が必要条件だと思っています。ちゃんとした出版社や取次の会社さんと一緒にやらせていただく上で、未上場の状態では安心感が足りないのかなと。
周りのステークホルダーに対する安心材料として、上場は必要だったと思っています。
将来的に、サービスをいくつも立ち上げる会社を目指しています。上場がゴールとは思っていませんし、「マンガBANG!」およびマンガ事業を伸ばし新しいサービスをどんどん作って会社全体を大きくしていくイメージでいます。
上場前後で、やることが大きく変わるということはありません。佐久間は外回り、IR活動がかなり忙しくなってきていますが、社内としては引き続きサービスを大きくしていくという部分で変わりはないかな、と思います。
── 最後に「こんな人と働きたい、一緒にこんなことを成し遂げていきたい」ということを教えてください。
江口:技術が好き、モノを作る事が好きという人と一緒に働きたい、ということですね。自分の技術をそこに役に立てたいと思っていただけるという事が重要かなと思いますし、新しいサービスを作ってユーザーさんに届けたい、どこかの会社さんに役立ててほしいという思いがあるのが重要かな、と。
寛容さというところでは他メンバーに対して寛容であること、しっかりコミュニケーションを取れること。ユーモラスである必要はなく、朴訥でも良いのできちんとコミュニケーションを取ろうと努力してくれる人がいれば仕事は回っていくのかな、と思います。
いま弊社にいるメンバーにしろ、フリーランスでいらっしゃる方にしろ、その点に関しては恵まれていると思います。別に口が上手ではないんですけど、しっかり話を聞いてくれるメンバーだと思います。
── 技術を大好きな方って、どうしても専門性を突き詰めていきたいので、サービスよりは技術を追い求めて行きたくなると思います。そのあたりのバランスは、どうお考えでしょうか?
江口:まず、技術採用に通じる所だと思いますが、きちんと私と話をしてもらうというのが大事かなと思っています。「この技術があって、こういうところで使えます」と言う話があったとしても、サービスとして成り立たないような提案であれば申し訳ないけどそれは採用できない、とお断りする事になります。
逆に「チャレンジングだけど、サービスとしては役に立つかもしれない」と思うのであれば採用する形になります。最終的な意思決定は私に委ねてもらいますが、そういう折り合いをつけていますね。
── 本日は、お忙しい中ありがとうございました!
ライター:澤山大輔