目次
■クラウド&インフラストラクチャ
2023.05.19 2024.06.28 約3分
イベント概要
Linuxはサーバ、組み込み機器、スーパーコンピュータなどにおいて存在感を示してきました。近年では、オンプレミスのシステムだけではなく、クラウドサービスでも広く使われています。そこで今回は訳者である sat氏 と 大岩氏 を迎え「入門 モダンLinux ―オンプレミスからクラウドまで、幅広い知識を会得する」を取り上げます。 |
このイベントレポートでわかること
■ 「入門モダンLinux」を読むメリットがわかる ■ Linuxの知識を体系的に整理したい ■ 最新動向が知りたい運用を改善したい、効率的に開発したい ■ 「入門モダンLinux」には掲載されていない訳者へのQ&A |
sat:Linuxに関係する既存の情報とモダンLinuxの立ち位置をまとめてみました。
bash の使い方やシェルスクリプトの書き方など、時を経ても変わらないものがある一方で、最新状況をキャッチアップすることも必要です。「入門モダンLinux」は、初心者向けの入門書と上級者向けの書籍の間を繋ぐような立ち位置にあります。基礎的な部分を網羅するだけでなく、最新状況も手厚くカバーしています。また、興味のある部分をどんどん深掘りできるよう、各章でたくさんの参考文献や参考サイトを紹介している点も特徴的です。
「入門モダンLinux 」
1回一通り読んだ。良質な情報。購入する価値あり。コマンドラインでLinuxを使っている人にはオススメ。小技もいっぱい載ってる。— koba (@tetsu_koba) May 10, 2023
sat:ここまで説明して「全部 Web の情報でカバーできそう」と感じる方もいるのではないでしょうか。実は、そんなことはありません。
大岩:Web の場合、事実確認のため複数ページをチェックする必要がありますが、書籍の場合は情報の正確性が非常に高いです。今回の「入門モダンLinux」も、しっかりと Linuxマシーンで動作確認をしたり内容の精査をしています。また Web は、自分の気になるトピックを調べて完結してしまいますが、書籍の場合、おすすめの情報もまとめて記載しているため、網羅性が高い点もメリットです。ガイアの夜明けで「地球の歩き方」が特集された際に同様の話が出ていました。あるエリアに初めて訪れる人が Webだけで情報収集すると 100 – 1000 ものサイトにアクセスしなければならず、数十時間かかるそうです。1冊の本にまとまっている形態が最も効率的であるという話をされていました。非常に興味深かったので、ぜひこちらのURLも参考にしてみてください。
sat:「入門モダンLinux」は入門からマニアックな部分まで全9章で解説しています。本日はいくつかピックアップしてご紹介します。
sat:Linuxカーネルの紹介だけでなく、少しハードウェア的な話もあったりします。一部で話題のCPUアーキテクチャ、RISC-Ⅴや、一部の人を虜にしている(悪いオタクのおもちゃにされがち) eBPF についても触れています。このあたりに触れる書籍は珍しいのではないでしょうか。
sat:3章は、少しマニアック。 fish シェルについて説明しています。fish シェルは bash などと根本的に使い方が異なり、互換性的なものは捨て、代わりに使いやすさを再定義したものです。あとは、ターミナルマルチプレクサについても紹介しています。これは端末エミュレータを終了させてもセッションを残しておいたり、複数セッションを同時に使えるツールです。本書では、screen ではなく tmux を使いましょうとアドバイスしています。推しツールに Rust製が多く、Rust 愛を感じる部分は面白いポイントです。
sat:多くの既存本は「だいたい debパッケージと rpmパッケージがあります」といった紹介に留まりますが、本書は flatpak / snap / apk など、珍しいものをたくさん紹介しています。コンテナについては Docker以外のツール(ontainerd / podman / buildah / skopeoなど)を豊富に紹介しています。実際に使用するかは置いておき、これらのツールを知っておくことは意義があるかと思います。
大岩:7章は、ネットワークの基本(TCP/IPスタックやIPヘッダなどのパケット構造)や DNS について詳しく触れています。また高度なトピックとして、Wireshark や tshark、他のネットワークのツールについて書いています。 ip_local_reserved_ports について書籍で触れているのですが、出版後にたまたま顧客から「再起動を繰り返すと、たまにネットワーク通信ができないときがある」という問い合わせがあり、本書の内容を参考に解決できました。非常に実践的なトピックになっていると思います。
sat:9章は「エンドユーザは絶対に直接触らんだろ」という異様にマニアックなネタが盛り込まれていて、気に入っています。
なんでこんなマニアックなネタを紹介しているんだろうと思ったら、著者がAWSの人だったんですよね。だから身近かつ尖ったネタを盛り込めたのではないかと思いますが、このあたりも面白いですね。
sat:ここでは2種類の本に分けておすすめします。
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sat:2種類の紹介と言いつつ、実は3種類目もあります。著者のただならぬ Rust愛 を感じ取り、おまけにこの本を。これは既存言語で開発をしている方、開発経験が豊富な方向け(プログラミングを一から学ぶ本ではない)です。 余談ですが、Rust ってユーザー数の割りに書籍が多く「Rust を使いたい・広めたい」という思いの強い方が多いなぁという印象です。 |
大岩:最近は、Web検索で答えが出てくるような仕事をしていないので、あまりWebを頼りにしていなかったんですが、「入門モダンLinux」は、英語版ですらサクサクと楽しく読めました。前半は既に把握している基礎的な内容が多く、復習的な意味合いで楽しめましたし、後半はモダンな技術が紹介されていて、それも楽しい。本当に全体を通して楽しめる内容でした。頑張って翻訳したので、ぜひ手にとってくださると嬉しいです。
Linuxはサーバ、組み込み機器、スーパーコンピュータなどにおいて存在感を示してきました。近年では、オンプレミスのシステムだけではなく、クラウドサービスでも広く使われています。本書前半では、Linuxを使いこなすうえで必要な基本知識を、後半では最新情報をまとめています。Linuxの知識を体系的に整理したい、最新動向が知りたい、運用を改善したい、効率的に開発を行いたい、などの要望をかなえる内容です。時代の変化に柔軟に対応できるLinux技術者を目指すなら必読の一冊です。 |
— ここからは訳者へ直接質問できるQ&Aコーナーをお送りします。まずは「昔を比べてLinuxが大きく変わったところはありますか?」との質問です。
sat:昔はおもちゃ的なパソコン用のOSみたいなところがありました。それがサーバや組み込みに伸びながら適用範囲を広げていき、分散システムを前提としたところで使われるようになっていったのが、ここ10年ぐらいの大きな変化でしょうか。
大岩:私もだいぶ昔から……「Red Hat Linux 9」の時代から使っているんですが、その頃は日本語入力も全然できなかったんですよね。それが最近は普通に入力もできるし、デスクトップとして使いやすくなりましたね。最近はカーネルも含めて品質が高いので安心して使えます。
sat:私は頭を使わずに、ある程度使える Kubuntu ですね。10年ぐらい前は凝って自分でビルドしてましたが「なんかもういいかな」みたいな……気持ちが枯れてきて Kubuntu になりました。
大岩:私は、仕事で使用する Fedora と Ubuntu ですね。
大岩:DeepL は参考までに使用していたという感じですね。
sat:ツールは使用してましたが、出力結果をそのまま使うのではなく、参考にしつつ自分で訳しました。一般的な文章だと DeepLは翻訳の質が高いのですが、やはり専門的な文章の翻訳には向かないです。いま流行りのChatGPT、とくにGPT4を使った場合はそこそこうまく翻訳してくれますね。
sat:はい、第8章で解説してます。Prometheus などのツール紹介や、トレースやログ、メトリクスなどをダッシュボードでみる話なんかも書いてます。
大岩:1章まるまる監視について触れていると考えて良いと思います。
sat:私は普段使いはしませんが、もう使わないってことは全然ないかと。ガチガチにセキュリティを固めて、誰が何をできるかをしっかり決めたいような場合、SELinux は必要でしょうね。
— おふたりは Linux ではないかと思いますが、いかがですか?
sat:私は Windows なんです。Hyper-V で Linuxのゲストを使ってます。画面は Windows だけど、やってることは SSH で Linux に繋いでる感じですね。
大岩:私もそうですね。
大岩:GPTは信頼性の部分で不安な印象はあります。実用性を考えると、もう少し時間がかかりそうですね。
sat:GPTは自信満々で大嘘つくので、すぐすぐは厳しいでしょうね。将来的には本やWebの代替になる可能性はあるかも知れませんね。
大岩:「わかりません」とか「信憑性は20%です」とかそういった返事があれば良いんですけどね。