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クラウド&インフラストラクチャ

Linuxの最新トレンドを網羅した必読書「入門モダンLinux」を訳者が解説

Linuxの最新トレンドを網羅した必読書「入門モダンLinux」を訳者が解説

イベント概要

Linuxはサーバ、組み込み機器、スーパーコンピュータなどにおいて存在感を示してきました。近年では、オンプレミスのシステムだけではなく、クラウドサービスでも広く使われています。そこで今回は訳者である sat氏 と 大岩氏 を迎え「入門 モダンLinux ―オンプレミスからクラウドまで、幅広い知識を会得する」を取り上げます。

このイベントレポートでわかること

■ 「入門モダンLinux」を読むメリットがわかる
■ Linuxの知識を体系的に整理したい
■ 最新動向が知りたい運用を改善したい、効率的に開発したい
■ 「入門モダンLinux」には掲載されていない訳者へのQ&A

良いところ取りの書籍「入門モダンLinux」

sat:Linuxに関係する既存の情報とモダンLinuxの立ち位置をまとめてみました。

  • 縦軸(上) 上級者向け
  • 縦軸(下) 初心者向け
  • 横軸(左) 時を経ても変わらないもの
  • 横軸(右) 最新情報

bash の使い方やシェルスクリプトの書き方など、時を経ても変わらないものがある一方で、最新状況をキャッチアップすることも必要です。「入門モダンLinux」は、初心者向けの入門書と上級者向けの書籍の間を繋ぐような立ち位置にあります。基礎的な部分を網羅するだけでなく、最新状況も手厚くカバーしています。また、興味のある部分をどんどん深掘りできるよう、各章でたくさんの参考文献や参考サイトを紹介している点も特徴的です。

デジタル全盛の今、わざわざ書籍を購入する必要は?

sat:ここまで説明して「全部 Web の情報でカバーできそう」と感じる方もいるのではないでしょうか。実は、そんなことはありません。

大岩:Web の場合、事実確認のため複数ページをチェックする必要がありますが、書籍の場合は情報の正確性が非常に高いです。今回の「入門モダンLinux」も、しっかりと Linuxマシーンで動作確認をしたり内容の精査をしています。また Web は、自分の気になるトピックを調べて完結してしまいますが、書籍の場合、おすすめの情報もまとめて記載しているため、網羅性が高い点もメリットです。ガイアの夜明けで「地球の歩き方」が特集された際に同様の話が出ていました。あるエリアに初めて訪れる人が Webだけで情報収集すると 100 – 1000 ものサイトにアクセスしなければならず、数十時間かかるそうです。1冊の本にまとまっている形態が最も効率的であるという話をされていました。非常に興味深かったので、ぜひこちらのURLも参考にしてみてください。

「入門モダンLinux」の見どころを紹介

sat:入門モダンLinux」は入門からマニアックな部分まで全9章で解説しています。本日はいくつかピックアップしてご紹介します。

第2章 Linuxカーネル

sat:Linuxカーネルの紹介だけでなく、少しハードウェア的な話もあったりします。一部で話題のCPUアーキテクチャ、RISC-Ⅴや、一部の人を虜にしている(悪いオタクのおもちゃにされがち) eBPF についても触れています。このあたりに触れる書籍は珍しいのではないでしょうか。

第3章 シェルとスプリプト

sat:3章は、少しマニアック。 fish シェルについて説明しています。fish シェルは bash などと根本的に使い方が異なり、互換性的なものは捨て、代わりに使いやすさを再定義したものです。あとは、ターミナルマルチプレクサについても紹介しています。これは端末エミュレータを終了させてもセッションを残しておいたり、複数セッションを同時に使えるツールです。本書では、screen ではなく tmux を使いましょうとアドバイスしています。推しツールに Rust製が多く、Rust 愛を感じる部分は面白いポイントです。

第6章 アプリケーション、パッケージ管理、コンテナ

sat:多くの既存本は「だいたい debパッケージと rpmパッケージがあります」といった紹介に留まりますが、本書は flatpak / snap / apk など、珍しいものをたくさん紹介しています。コンテナについては Docker以外のツール(ontainerd / podman / buildah / skopeoなど)を豊富に紹介しています。実際に使用するかは置いておき、これらのツールを知っておくことは意義があるかと思います。

第7章 ネットワーク

大岩:7章は、ネットワークの基本(TCP/IPスタックやIPヘッダなどのパケット構造)や DNS について詳しく触れています。また高度なトピックとして、Wireshark や tshark、他のネットワークのツールについて書いています。 ip_local_reserved_ports について書籍で触れているのですが、出版後にたまたま顧客から「再起動を繰り返すと、たまにネットワーク通信ができないときがある」という問い合わせがあり、本書の内容を参考に解決できました。非常に実践的なトピックになっていると思います。

第9章 高度なトピック

sat:9章は「エンドユーザは絶対に直接触らんだろ」という異様にマニアックなネタが盛り込まれていて、気に入っています。

  • Firecracker: AWS発の仮想化ソフトウェア
  • bottlerocket: AWS発のコンテナを動かすためのOS

なんでこんなマニアックなネタを紹介しているんだろうと思ったら、著者がAWSの人だったんですよね。だから身近かつ尖ったネタを盛り込めたのではないかと思いますが、このあたりも面白いですね。

「入門モダンLinux」の前後に読むと良い本

sat:ここでは2種類の本に分けておすすめします。

  1. 本書を読むためのステップアップ
  2. 本書を読んだ後のステップアップ

本書を読むためのステップアップ

Linuxを「使う」ための最低限の知識を得られる

Linuxを「管理する」ための最低限の知識を得られる

 

本書を読んだ後のステップアップ

Linuxカーネルや基本ツールについて詳しく解説

Linuxカーネルが動作するしくみについて図解

おまけ: Rust愛 溢れるあなたへ

sat:2種類の紹介と言いつつ、実は3種類目もあります。著者のただならぬ Rust愛 を感じ取り、おまけにこの本を。これは既存言語で開発をしている方、開発経験が豊富な方向け(プログラミングを一から学ぶ本ではない)です。 余談ですが、Rust ってユーザー数の割りに書籍が多く「Rust を使いたい・広めたい」という思いの強い方が多いなぁという印象です。

まとめ

  • Linux関連の最新状況の概要を手短に学べる
  • 原書を翻訳するだけでなく豊富な訳者補が付いている

大岩:最近は、Web検索で答えが出てくるような仕事をしていないので、あまりWebを頼りにしていなかったんですが、「入門モダンLinux」は、英語版ですらサクサクと楽しく読めました。前半は既に把握している基礎的な内容が多く、復習的な意味合いで楽しめましたし、後半はモダンな技術が紹介されていて、それも楽しい。本当に全体を通して楽しめる内容でした。頑張って翻訳したので、ぜひ手にとってくださると嬉しいです。

Linuxはサーバ、組み込み機器、スーパーコンピュータなどにおいて存在感を示してきました。近年では、オンプレミスのシステムだけではなく、クラウドサービスでも広く使われています。本書前半では、Linuxを使いこなすうえで必要な基本知識を、後半では最新情報をまとめています。Linuxの知識を体系的に整理したい、最新動向が知りたい、運用を改善したい、効率的に開発を行いたい、などの要望をかなえる内容です。時代の変化に柔軟に対応できるLinux技術者を目指すなら必読の一冊です。

 

Q:昔に比べ、Linuxが大きく変わったところは?

— ここからは訳者へ直接質問できるQ&Aコーナーをお送りします。まずは「昔を比べてLinuxが大きく変わったところはありますか?」との質問です。

sat:昔はおもちゃ的なパソコン用のOSみたいなところがありました。それがサーバや組み込みに伸びながら適用範囲を広げていき、分散システムを前提としたところで使われるようになっていったのが、ここ10年ぐらいの大きな変化でしょうか。

大岩:私もだいぶ昔から……「Red Hat Linux 9」の時代から使っているんですが、その頃は日本語入力も全然できなかったんですよね。それが最近は普通に入力もできるし、デスクトップとして使いやすくなりましたね。最近はカーネルも含めて品質が高いので安心して使えます。

Q:気になるディストリビューションは?

sat:私は頭を使わずに、ある程度使える Kubuntu ですね。10年ぐらい前は凝って自分でビルドしてましたが「なんかもういいかな」みたいな……気持ちが枯れてきて Kubuntu になりました。

大岩:私は、仕事で使用する Fedora と Ubuntu ですね。

Q:翻訳プロセスを教えてください

大岩:DeepL は参考までに使用していたという感じですね。

sat:ツールは使用してましたが、出力結果をそのまま使うのではなく、参考にしつつ自分で訳しました。一般的な文章だと DeepLは翻訳の質が高いのですが、やはり専門的な文章の翻訳には向かないです。いま流行りのChatGPT、とくにGPT4を使った場合はそこそこうまく翻訳してくれますね。

Q:「監視」の解説はありますか?

sat:はい、第8章で解説してます。Prometheus などのツール紹介や、トレースやログ、メトリクスなどをダッシュボードでみる話なんかも書いてます。

大岩:1章まるまる監視について触れていると考えて良いと思います。

Q:SELinuxは、もう不要ですか?

sat:私は普段使いはしませんが、もう使わないってことは全然ないかと。ガチガチにセキュリティを固めて、誰が何をできるかをしっかり決めたいような場合、SELinux は必要でしょうね。

Q:普段は Win / Mac / Linux どれを使ってる?

— おふたりは Linux ではないかと思いますが、いかがですか?

sat:私は Windows なんです。Hyper-V で Linuxのゲストを使ってます。画面は Windows だけど、やってることは SSH で Linux に繋いでる感じですね。

大岩:私もそうですね。

Q:ChatGPTの進化によって、本は不要になる?

大岩:GPTは信頼性の部分で不安な印象はあります。実用性を考えると、もう少し時間がかかりそうですね。

sat:GPTは自信満々で大嘘つくので、すぐすぐは厳しいでしょうね。将来的には本やWebの代替になる可能性はあるかも知れませんね。

大岩:「わかりません」とか「信憑性は20%です」とかそういった返事があれば良いんですけどね。

動画はこちら

 

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フォークウェルプレス編集部

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本サイト掲載の全て記事は、フォークウェル編集部が監修しています。編集部では、企画・執筆・編集・入稿の全工程をチェックしています。

sat
『入門モダンLinux』訳者

兵庫県出身。姫路工業大学(現 兵庫県立大学)大学院工学研究科物質系工学専攻修士課程修了。2005年に入社した富士通株式会社において、エンタープライズ向けLinuxの開発、サポートに従事。2017年に技術顧問としてサイボウズにジョイン。2018年からは正社員としてcyboz.comのインフラ刷新プロジェクトNecoの開発に携わり、分散ストレージシステムCephの調査、開発に従事。プライベートでは、Linuxカーネルに関する著作の執筆や雑誌への寄稿を手掛ける。

大岩 尚宏
サイバートラスト株式会社 /『入門モダンLinux』訳者

サーバ向けや組み込み向けのLinux において、ユーザ空間、カーネルを問わず、調査や不具合の解析をしている。 共著書に『Debug Hacks』(オライリー・ジャパン)、『LinuxカーネルHacks』(オライリー・ジャパン)、 共訳書に『デバッグの理論と実践』(オライリー・ジャパン)、 技術監修書に『Effective Debugging』(オライリー・ジャパン)、 『HTML5 Hacks』(オライリー・ジャパン) などがある。