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Forkwell調査

IT業界のジェンダーギャップ:20代のリーダー経験の差が賃金格差に繫がる可能性

IT業界のジェンダーギャップ:リーダー経験の差と賃金格差の関係

bgrass社とのイベントレポートをお送りします。調査レポートのハイライトや洞察に加えて参加者の皆さんからの質問や意見にも積極的にお答えしました。ジェンダーギャップの解消は重要なテーマです。より包括的で公正な環境を作り上げるための一歩を踏み出しましょう。

2023年 世界ジェンダーギャップ指数、日本は過去最低

西岡:2023年に発表された最新のジェンダーギャップ指数では、日本は146カ国中125位と、先進国で最低レベルです。残念ながら、昨年度(116位)より順位を落としています。これは、各国で進んでいるジェンダーギャップのスピードより、日本が遅いことを示しています。日本は、教育と健康は格差が少ないのに、全体の順位が低いのはなぜ?と思われる方もいらっしゃると思います。これは教育と健康は他国でも格差が減っており、一方で経済と政治分野ではバラツキが大きく、かつ日本の順位が低いため、総合ではかなり低い順位になると考えられます。 私たち・IT業界に関わることですと、将来的に報酬が高く、重要性が高まると言われているSTEM分野(Science, Technology, Engineering and Mathematics)において、女性の割合が低いことが世界的な課題として挙げられています。このギャップをいかに埋めていくかは、私たちが取り組むべき課題と認識しています。一緒に考えましょう!

リーダー経験、なぜ20代の男女差が大きかったのか

だむは:「女性はリーダーになりたがらない」というバイアスや、「女性はライフイベントの影響を大きく受ける」といった仮説は、以前から存在しましたが、実際に可視化されたデータを見て驚きました。普段からジェンダーについて探究している私たちも、明確な原因の特定はまだ進んでいないのですが、*職場シーンにおいて「組織のリーダーは男性の⽅が向いている」と回答する割合が男女ともに20%を超えるというデータから、ジェンダーバイアスの影響が大きいのではないかと仮説立てています。

リーダー経験の差が賃金格差へ繋がる

西岡:当然ながらリーダー経験のある方がキャリアアップしやすく賃金アップも狙えるでしょう。「そうはいっても、女性がリーダーになりたがらないんでしょ?」という言葉をよく耳にします。しかし女性だけの問題でしょうか。20代のうちから管理職研修を受講させる、女性に昇進を打診する際には複数回の声かけをするなど、企業、これからリーダーを任命する役職者、私たち女性自身にできることを考えてみましょう。実際にメルカリでは以下の取り組みを実施しているそうです。

昇進を打診する時には、(女性は管理職を躊躇する傾向が強いので)男性が1回だとしたら女性には3回は声をかけるようにもしています。

参照元 「男性中心の会社のままでは絶対に成長が止まる」メルカリ創業者が抱いた危機感の正体

男女で異なる自己効力感

だむは:日本は手を挙げた人に管理職を任せる文化が割と強いと思うのですが、男性は募集要件の60%程度でも手を挙げる傾向があり、女性は100%マッチしないと手を挙げない傾向が強いそうです。

女性は日頃から無意識のうちに、自分を過小評価する癖がついていることが明らかになっています。研究でも、男性は仕事の成果を実際より高く見積もる傾向があるのに対し、女性は低く見積もる傾向があることがわかりました。

引用元:リーン・インが教える11の考え方 2. Sit At The Table (同じテーブルに着く)

つまり女性は自身の自己評価や自己効力感(目標を達成するための能力を自らが持っていると認識すること)を厳し目に判定する傾向にあるのです。こうした男女の根本的な考え方や捉え方の違いを理解すると「手を挙げた人に任せる構造」も改革の余地があるのでは無いでしょうか。

職場における自己効力感の性差についての研究は複数存在しますが、一般的な傾向としては、男性の方が女性よりも自己効力感が高いという結果が報告されることがあります。下記は参考ソースの一部です。

参照元:LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲

参照元:The Relationship Between Teachers’ Self-Efficacy Beliefs and Job Satisfaction Levels: A Meta-Analysis Study

参照元:When Grades Are High but Self-Efficacy Is Low: Unpacking the Confidence Gap Between Girls and Boys in Mathematics

育児をきっかけに、女性はキャリアを一度止め、男性はキャリアを追求する

だむは:男性はこれから育児にかかる負担をカバーするためにキャリアアップを追求する一方、女性は家庭内労働に専念する傾向にあります。つまり、育児をきっかけに、またもや男女間のキャリアに差が生まれてしまうのです。「男は外で働き、女は家で家事育児」という昔ながらの役割分担が現代でも根強く残っていることに驚きを感じながらも、これは男性の家庭進出を仕組み化することで改善できるものと考えています。

西岡:例えば、もっと社会全体で「長時間労働をやめよう!」と声をあげることもひとつですよね。育児のために時短を選択せざるを得ない状況を脱却するすべを考える必要があります。

だむは:「賃金の少ない方が家事育児をした方が良いのでは」とコメントが来ていますね。基本的に女性の方が賃金が少ない傾向にあるので、そうすると「女性が家事育児」の体制から抜け出せないのではと思いますが、いかがでしょうか。

西岡:そうですね、賃金の高さも、人生の選択において重要な要素の1つではありますが、今後のキャリア形成・育児を含む時間の使い方など、たくさんの要素の中で、パートナーとお互いに納得する選択ができるよう、話し合って決めていくのが良いのではないでしょうか。

性差別的な発言には、はっきり「NO」を

だむは:職場でジェンダーバイアスのかかった発言を聞いたとき、女性の40%以上が転職・異動を希望することがわかりました。こうした発言をきっかけにその会社でのキャリアを諦めてしまうことは本当にもったいないです。企業には相手の立場で物事を考えられる環境づくりが求められます。こうした発言を受けたときに個人ができる対策方法って、何かありますか?

西岡:もちろん根本的にジェンダーバイアスのかかった発言をしない、させない環境が大切ですが、あえて個人ができることを考えてみました。

私も含めてジェンダーバイアスのかかった発言をされた際、愛想笑いでその場をやり過ごすことが多いと思うんです。でも発言した相手は 愛想笑い= 受け入れてもらった と錯覚する可能性が高いので、しっかり言い返しましょう。それが難しければ、無表情で接してみたり、相手にしっかりNOを伝えることが大切です。

だむは:男性からもこんな話を聞きます。男性が「家事育児をやるぞ!」と意気込んでも、会社が「昇進できなくなるぞ」「キャリアに影響が出るぞ」と足を引っ張るケースもあるとか。これは絶対にやってはいけないことです。こうした環境は変えていきたいですね。

サステナブルに働くヒント

だむは:持続的にIT業界で働くことをサステナブルと定義して、考えてみます。もし自分の会社でジェンダーギャップを感じたとき、どう行動すべきでしょうか。その会社が好きで今後も働きたい、ジェンダー配慮のないことだけが懸念点だという場合は、草の根活動をしてみることをおすすめします。地道ですが草の根活動がトップまで届いて会社が変わった事例もあります。それでもダメなら思い切って環境を変えましょう。当たり前を疑うことも大切です。

西岡:社内のジェンダーバランス(執行役員の割合など)を視覚化して、みんなの問題として話し合う機会を設置できると良いですよね。

だむは:利益を得られるから、経営に有利だからダイバーシティを実現しましょうではなく、当たり前のことだと思うんです。これからは「同質性が高すぎる企業ってダサいよね」という時代が来るはずです。今から手を打って選ばれる企業になっていくことが重要です。

「女性エンジニア」と呼ばれることに違和感を覚えます

だむは:これはよく論争になりますよね。

今の時代は、あえて「女性エンジニア」と呼ぶことも必要だと思っています。そもそも男性の多い業界で、女性向けのイベントやコミュニティを見つける難しさもあるからです。ただ将来的には無くなればいいですよね。

西岡:そうですね。モヤモヤする気持ちは理解できますよね。

赤川:技術コミュニティを運用していても、よく耳にします。男女分けずにイベントを開催すると「来場者に男性が多く行きづらい」という声もありますし、女性向けイベントを開催すれば「わざわざ女性向けのイベントタイトルを付けるのはいかがなものか」という声もあり、難しい課題ですよね。

だむは:女性だけで開催することでジェンダーギャップやジェンダーバイアスのない場を提供できるメリットもありますよね。

女性の少ない職場でジェンダーの話題を出しにくいです

— 男性が責められていると感じないように伝える方法を知りたいです、とのことです。

だむは:私も女性起業家でありエンジニアでありマイノリティ側にいるので、非常に分かります。プロダクトについて説明するときやジェンダーギャップ、ダイバーシティなどの課題感を話すときに、、社会構造上の問題であることを伝えたにもかかわらず、どうしても男性には男性を責めているように聞こえてしまうんですよ。「男性のせいではないんですよ」を何度も言うよう気を付けていても、どうしても対立に聞こえてしまうんです。

西岡:女性ひとりでは持ち出しにくい話題ですよね。一方でどこが刺さるのかは言ってみないとわからない部分もあるので、小出しにしてみるのはどうでしょうか。ただしハッキリ伝えたいことは言うべきだと思います。

だむは:一人で戦うのはつらいので、仲間を作ることもポイントです。草の根活動は必ずしも同性である必要はありません。

顧客や発注先の男性に下に見られることが多いです

だむは:スキルに関係なく女性が下に見られることが多いのは、ジェンダーバイアスですよね。

強く交渉する女性は印象が下がるというデータがあるのですが、女性自身が無意識にそれを感じ取っている可能性はあります。だから単価交渉しづらく感じるのでしょうね。

西岡:先ほどと重複してしまうのですが、ひとりで戦うよりも味方を探すことですね。先方には「女性」というだけで下に見られている可能性があるので、仲間の「男性」に自分自身が適任であることを先方に伝えてもらうのも、1つの手かもしれません。

変化の激しいIT業界で育休取得する難しさ

西岡:二児の母として、ブランクを心配する気持ちは、ものすごく理解できます。IT業界の変化の激しさを心配する気持ちも理解できます。でも思い出してみてください。この業界に入ったときは知識も経験も真っ新だったはず。それでもこの業界で生き抜いていることに自信を持ってください。あとはお互いのキャリアをどうしていきたいのか、パートナーとしっかり話し合いすることが大切です。こちらは子育てとキャリア、どう両立していくかを考える時におすすめの本。パートナーと対話する必要性をひしひしと感じますし、対話の観点も載っているので実用的です。

デュアルキャリア・カップル――仕事と人生の3つの転換期を対話で乗り越える

赤川:確かにエンジニアとしてブランクになるでしょうし、多少の変化はあるかと思います。ただ育休中の1-2年で社内のシステムがすべて別の言語に書き換わってしまうとか、そこまでの大きな変化はないのかなと。4-5年になるとまた変わってくるとは思います。

西岡:とある企業の話では、ブランクがあっても戻る意思のある方は意欲が高いので、むしろ採用したいと。ちょっと探す難しさはあるかも知れませんが、そういった企業を探すのも方法かと思います。

ジェンダーギャップ是正のために女性を優遇すべき?

だむは:私たちの取り組みに対し、特別扱い・女性優遇なのではという声もあるのですが、私たちは平等ではなく公平にするためのポジティブアクションと捉えています。下記は、平等 vs. 公平を表す有名な図解です。全員を平等にすると左側の図になります。ただし今は「平等」にジェンダーバイアスがかかっている。これまでの社会構造では、ダメだったということなんです。

西岡:本当に平等な社会になれば、ポジティブアクションは不要になります。暫定的な措置ともいえますよね。

ジェンダーについて理解を深めよう!おすすめの書籍 6選

おすすめの書籍 1

西岡:紹介していた興味深い本が3000円オーバーでひるんでます…。
給料はあなたの価値なのか――賃金と経済にまつわる神話を解く

おすすめの書籍 2

西岡:まずは入門的に知りたい方はこちらよくある疑問とその答えがホップステップジャンプ形式で書かれていて、受け取りやすい。全人類向けです。
ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた――あなたがあなたらしくいられるための29問

おすすめの書籍 3

西岡:どんな言葉がジェンダーバイアスなんでしょうか?を知りたい人にはこちらをオススメ。 早く絶版になってほしい
早く絶版になってほしい #駄言辞典

おすすめの書籍 4

西岡:ジェンダーバイアスから、身を守る方法を知りたい方はこちら。面白く学べます。ハシビロコウが好き。
モヤる言葉、ヤバイ人~自尊心を削る人から心を守る「言葉の護身術」

おすすめの書籍 5

西岡:もっと学術的な観点から知りたいって方はこちら。実験結果なども沢山書かれていて、事実として受け取りやすいです。そして、どう仕組みを変えていけばいいかの糸口が見つかります。
WORK DESIGN(ワークデザイン):行動経済学でジェンダー格差を克服する

おすすめの書籍 6

西岡:子育てとキャリア、どう両立していくかを考える時の本。パートナーと対話する必要性をひしひしと感じますし、対話の観点も載っているので実用的。

デュアルキャリア・カップル――仕事と人生の3つの転換期を対話で乗り越える

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