2023.06.14
2024.06.07
約6分
幸福度のピークは、アンガス・ディートン教授が受賞した2015年のノーベル経済学賞によって明らかになりました。その研究によれば 幸福度のピークは、75,000ドルとのこと。
アメリカのITエンジニアの平均年収は、幸福度のピークを超える 約104,566ドルであり、実際に 87% ものエンジニアが「仕事が刺激的で楽しく給与が高いため幸せ」と回答しています。
一方、日本のITエンジニアの平均年収は、女性 562万円 男性 619万円と、幸福度のピークには大きく及びません。
そこで今回は Forkwell 会員259名を対象に、直近1年間の年収の増減と人生の幸福度を調査しました。
サマリー
直近1年間の年収が「上がった・変わらない・下がった」の3パターンと、年収の増減によって幸福度が「上がった・変わらない・下がった」の3パターンを組み合わせた9つのグループを作成し調査しています。
年収の上がったグループ
アンケート対象 259名 のうち、67.6% は 直近1年間の年収が上がったと回答しました。
▲年収が上がったグループの年収分布
A:年収↑ 幸福度↑ キーワードは「楽しさ、自由な時間」
「幸福度が上がった」と回答した Aグループ 101名 のデータ
幸福度 7.2 、平均年収 619万円 、平均昇給額 117万円(中央値80万円)
- 仕事が楽しい。人間関係のストレスや残業もなく自由な時間が増えた (20代女性:サーバーサイド)
- 自由な時間を確保し、趣味の時間を作ることが出来た (40代男性:RPA)
- 自由に使用できる時間が増えた (50代男性:サーバーサイド)
- 使えるお金が増えた (30代男性:フロントエンド)
- 生活に余裕ができ、趣味に使えるお金が増えた (30代男性:フルスタック)
- 育児にかける費用を増やすことができ、負担が少し減った (20代男性:フロントエンド)
- リモートワーク中心となったため、自由に使える時間が増えた (30代男性:サーバーサイド)
- 気持ちに余裕ができた (40代男性:フルスタック)
- 副業も本業も良いフィードバックがあった (30代男性:サーバーサイド)
- 自由な時間が増え、仕事も選べるようになった。収入も増えた (30代女性:データ)
- 年収が上がるとともにやり甲斐のある仕事ができている (30代男性:PM)
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単純に収入がアップしたことだけでなく、リモートワークや転職によって得た自由な時間や、仕事の楽しさが幸福度に大きく影響しているようです。
B:年収↑ 幸福度→ 変化のない理由は、昇給額?
「幸福度に変化なし」と回答した Bグループ 62名 のデータ
幸福度 6.7 、平均年収 627万円、平均昇給額 77万円(中央値50万円)
年25万円程度の昇給は、幸福度を向上させない
Bグループのうち 22名 は、幸福度に変化のない理由を「昇給額」と回答。彼らの直近1年間の昇給額は 平均 25万円(中央値13.5万円) で、全体平均よりもやや少ない傾向です。
- 生活に影響するような額ではない (30代男性:フロントエンド)
- 幸福度が上がるほどのアップではない (30代男性:ネイティブアプリ)
- 幅が少ないから幸福度は変わらない (40代男性:フルスタック)
- 年収が上がったのはいいが、年収の上がり幅が少なく不満 (30代男性:フルスタック)
- 増加額が微々たるもので変化なし (20代男性:フロントエンド)
- 金額的にそこまで変わらないから (30代男性:フロントエンド)
- 年収0.6万アップ。無いより良いが、ほぼ変化はない (30代男性:セキュリティ)
- 大きな年収アップには達していないため (40代男性:サーバーサイド)
- 50万程度のアップで、使える金額が変わらない (20代男性:フロントエンド)
- 変動幅がそれほど多くなかった (40代男性:フロントエンド)
- 仕事やお金は私の人生のほんの一部に過ぎないから (30代男性:フルスタック)
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年100万円以上の昇給は、業務量やストレスが増える傾向
Bグループのうち 16名 は幸福度に変化のない理由を「業務量・ストレス額」と回答。彼らの直近1年間の昇給額は、平均 109万円(中央値100万円)。「年収と共に幸福度が上がった」と回答した Aグループ の平均昇給額 117万円 と比べ、昇給額に大きな差はありませんが、職場環境には大きな差があるようです。
- 仕事が増えた (30代男性:データサイエンティスト)
- 責任範囲が増えた分、楽な仕事が減った (20代男性:フルスタック)
- 年収は上がったものの、業務と比較すると釣り合っていない (30代男性:サーバーサイド)
- 求められる責務が変わった (20代男性:サーバーサイド)
- 給与や働き方には不満がないが、周りのメンバーのレベルが低すぎて辟易 (40代男性:インフラ)
- 単純に労働時間が増え自由時間が減り、疲労・ストレスが溜まっている (40代男性:サーバーサイドア)
- フルタイム本業+大学院+副業で常に余裕がない (30代男性:サーバーサイド)
- 年収が増え安心感はあるが休みが減り身体に負担が出た (30代男性:フルスタック)
- お金は貰えたが睡眠不足になった (30代男性:フルスタック)
- 業務のプレッシャーや忙しさが増加しプライベートな時間が減少した (20代男性:フルスタック)
- プレッシャーが大きい (40代男性:インフラ)
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転職や昇給で大幅な年収アップを実現させたITエンジニアは、自身の精神的・肉体的ストレスケアに気を配ってみてください。
C:年収↑ 幸福度↓ 「割りに合わない、時間がない」
「幸福度が下がった」と回答した Cグループ 12名 のデータ
幸福度 5.3 、平均年収 608万円、平均昇給額 57万円(中央値38万円)
実際の声を見てみると「自分の時間がない」「割りに合わない業務」と感じている人が多く、Bグループと似た傾向であることがわかります。
- 業務内容の割に年収が低い (30代男性:サーバーサイド)
- 転職したばかりだが会社に対して不信感を持つ出来事があった (20代男性:フルスタック)
- 業績が良くないので昇給の上がり幅が小さい (30代男性:ネイティブアプリ)
- 仕事時間が長くなった (20代男性:インフラ)
- 副業してる分、週1稼働とられるのが辛い (30代男性:サーバーサイド)
- 自分の時間が少なくなった (20代男性:フロントエンド)
- 働く時間が増加し家族との時間が取れない (30代男性:フルスタック)
- 転職したてで慣れていないため (30代男性:サーバーサイド)
- 残業が増え自分の時間が無くなった (40代男性:PM)
- 休みが取れない (30代男性:ネイティブアプリ)
- 家族と食べる夕食に勝るものはない (30代男性:フロントエンド)
- 残業の分、自由時間が減る (30代男性:フルスタック)
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Cの全員が「現状を打破したい」と回答
Cグループ の特徴は「今後、どのような生活を送りたいか」という問いに、12名全員が「現状を打破したい」と回答している点です。注目すべきは「年収を下げてでも、働く場所、時間に縛られず働きたい」という声。コロナ収束と共にオフィス回帰の動きが高まりますが、通勤のストレスはメンタルヘルスに大きく影響します。自身で働き方を選択できるハイブリッドワークの導入など、企業側の早急な対策が求められています。
- 能力のない上司の下で働くのが耐えられない (30代男性:ネイティブアプリ)
- 早期リタイアして、趣味でコードがかけるようにしたい (30代男性:サーバーサイド)
- 早期リタイアして、たまに副業で小銭を稼ぐ生活に憧れる (30代男性:フルスタック)
- 年収を下げてでも、働く場所、時間に縛られず働きたい (40代男性:PM)
- もう疲れたので休みたい (30代男性:ネイティブアプリ)
- リモートが良い (30代男性:フルスタック)
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年収が下がったグループ
アンケート対象 259名 のうち、7.7% は 直近1年間の年収が下がったと回答しました。同じグループ内でも明暗の別れる結果に注目です。
▲年収が下がったグループの年収分布
D:年収↓ 幸福度↑ ポジティブな理由は、幸福度を上げる
「幸福度が上がった」と回答した Dグループ 3名 のデータ
幸福度 8.3 、平均年収 450万円、平均昇給額 -173万円(中央値 – 200万円)
サンプル数の少なさは否めませんが、Dグループ の幸福度は、今回のアンケートで最も高い結果でした。平均年収はやや低めながら、夢や生きがいのためなら一時的に年収が下がっても幸せだという声は、なんとも考えさせられる結果なのではないでしょうか。
- 自由な時間は減ったが、満足な職場で楽しく仕事できている (20代男性:フロントエンド)
- 独立で収入は激減したが、誰かに使われる閉塞感が無くなった (30代男性:サーバーサイド)
- 育児中。仕事をせずにお金が入るのはありがたい (30代女性:データサイエンティスト)
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E:年収↓ 幸福度→ 降給理由に納得しているか否か
「どちらでもない・変化なし」と回答した Eグループ 8名 のデータ
幸福度 6.3 、平均年収 600万円、平均昇給額 – 81万円(中央値 – 75万円)
年収が下がっても降給理由に納得感を覚えていたり、降給によって自由な時間を得た場合などは「どちらでもない・変化なし」と捉える人が多いようです。
- 前職では役職定年による減収が確実だったが転職先では活躍できそう (50代男性:フルスタック)
- 下がり幅として許容できる範囲で、ある程度現状に満足している (40代男性:QA)
- 残業代が減ったが生活はできる (30代男性:サーバーサイド)
- 自身の成長を感じられれば一定の収入源は許容できる (40代男性:サーバーサイド)
- やりたい仕事に集中でき、自由な時間もあるので、幸せ (30代女性:フロントエンド)
- 子供と過ごす時間が増えプライベートは幸せ。仕事は給料が減りやる気も減った (30代女性:インフラ)
- とくに変化はないが不自由なく生活できている (30代男性:フロントエンド)
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F:年収↓ 幸福度↓ ネガティブな理由は、幸福度を下げる
「幸福度が下がった」と回答した Fグループ 9名 のデータ
幸福度 3.3 、平均年収 500万円、平均昇給額 – 77万円(中央値 – 40万円)
Fグループ の幸福度は、今回のアンケートで最も低い結果となりました。
「年収が下がったのだから、幸福度も下がるだろう」と推測のとおりで、意外性に乏しい結果ではありますが、業績悪化や体調不良などネガティブな理由で年収を下げた場合は、幸福度も大きく低下することがわかりました。
- 体調を崩し、勤務時間を抑制したため (30代男性:PM)
- 会社が赤字のため、賞与が出ず年収が下がった (40代男性:ネイティブアプリ)
- 給与体系の変更により実質給与の減少 (20代男性:サーバーサイド)
- 会社の査定フローのミスで、年収が下がった (30代男性:フルスタック)
- 案件がなくなり、年収ダウン (40代男性:フロントエンド)
- よりGAFAMに近い企業で働くため転職したら年収が下がった (30代男性:フロントエンド)
- 本業で高いパフォーマンスが出せなかった (40代男性:PM)
- 休職のため、一年近く働いていない (30代男性:研究開発)
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年収ダウンにより、ストレスや仕事の疲れがたまりやすいといった問題だけでなく、自己実現のための趣味や娯楽を楽しむ時間や余裕がないといったことも生じるかもしれません。
年収に変化のないグループ
アンケート対象 259名 のうち、24.6% は 直近1年間の年収に変化なしと回答しました。
▲年収に変化のないグループの年収分布
G:年収→ 幸福度↑ 変化なし=恵まれている?
「幸福度が上がった」と回答した Gグループ 18名 のデータ
幸福度 6.7 、平均年収 561万円
コロナでリモートワークが浸透し自由な時間が増えたことや、コロナ渦にあっても「待遇に変化のないこと = 恵まれている」と感じる人が一定数いました。また待遇は変わらなくとも、自身のスキルアップやキャリアアップが望める環境にある人は、幸福度が高い傾向でした。
- コロナ禍で減収している人も多い中、待遇が変わらないため (30代男性:フルスタック)
- フルリモートになった (30代男性:フロントエンド)
- リモートになり、働く時間をコントロールできるようになった (40代男性:フルスタック)
- 可処分時間が増えた (50代男性:フルスタック)
- 自由時間を自由に取れるため動きやすくなった (20代男性:フルスタック)
- 待遇は変わらないが、やりたいことが出来るようになった (20代男性:フロントエンド)
- やりたい業務に携わることが出来た (40代男性:PM)
- 成長が期待できる環境 (40代男性:データサイエンティスト)
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H:年収→ 幸福度→ 幸福度に変化なしの理由は?
「どちらでもない・変化なし」と回答した Hグループ 37名 のデータ
幸福度 6.2 、平均年収 555万円
- 変わり映えしない業務且つ決定権もなく給与もこれ以上は望めない (30代男性:フロントエンド)
- 働き方と年収バランスの取れた働き方ができているため (30代女性:QA)
- もっと稼ぎたい (30代男性:サーバーサイド)
- リモートで幸福度はあがったが、キャリアやスキルが追い付けていない (40代男性:ネイティブアプリ)
- 同年代に比べ年収は高いが、他者との交流が少ない (30代男性:フロントエンド)
- 定年退職後エンジニアに戻り好きな分野の開発に従事 (60代男性:ネイティブアプリ)
- ハッピーというには少し足りない感じ (50代男性:フルスタック)
- 年収は変わらないが、リモート勤務なので満足している (30代女性:ネイティブアプリ)
- 去年と同じ仕事内容のため (40代男性:フルスタック)
- プライベートは充実しているが勉強の時間があまり取れていない (20代男性:フロントエンド)
- 大きな不満がなく暮らせている (60代男性:サーバーサイド)
- 業務内容相応の収入だがもっと力を伸ばしたいから (40代答えたくない:フロントエンド)
- 収入は高くないが、困ることもない (20代男性:PM)
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I:年収→ 幸福度↓ 物価高がダイレクトに影響
「幸福度が下がった」と回答した Iグループ 9名 のデータ
幸福度 4.7 、平均年収 450万円
年収が上がる見込みもないうえ、円安による物価高の影響で、使えるお金が減っているという切実な声が大半を占めています。このグループの 55.6% は 年収 400 万円以下 であり、物価高の影響が生活に直撃しているようです。また「変化のないこと = 評価されていない」と感じる人もいるようです。
- 年収が変わらず、上がる見込みもない (20代男性:サーバーサイド)
- 年収が上がらないと仕事のモチベが上がらない。経営不振で将来が心配 (30代男性:フルスタック)
- 変化がないのは評価されないのと同じ (30代男性:組込み)
- 物価の値上げで支出が増えた。自由な時間は増えたが、やり甲斐が減った (40代男性:フロントエンド)
- 同年代に比べ年収は高いが物価高の影響あり。業務過多で自由時間が取れない (30代男性:インフラ)
- プレッシャーばかりで年収が変わらない (30代男性:社内SE)
- 年収は変わらないのに値上げ等で出費が増えた (30代男性:サーバーサイド)
- 年収に変化は無いものの、このままだとスキルアップがのぞめない (40代女性:サーバーサイド)
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企業はワークライフインテグレーションの促進を
「高い年収を提示してもITエンジニアを採用できない」とお悩みの声を、しばしば耳にします。今回の調査では、自身の夢や家族のために時間を有効に使えること、また職場に自身のスキルアップを望める環境がある場合は、年収に関係なく幸福度の高い傾向が見られました。「仕事もプライベートも生活の一部であり、両方が充実することで人生が豊かになる」という考え方のもと、リモートワークやハイブリッドワーク、フレックスタイム制度の導入など柔軟な働き方を導入し、ワークライフインテグレーションを促進することで、優秀なITエンジニアの採用につながるのではないでしょうか。ぜひ、今回の調査結果を採用のヒントにしていただければ幸いです。
まとめ:定性的な回答に基づく調査の傾向
年収のみで幸福度を測ることはできない
- 最も幸福度の高いグループの平均年収は 450 万円
- 最も幸福度の低いグループの平均年収は 500 万円
昇給額のみで幸福度を測ることはできない
- 年間 25 万円程度の昇給は、増加の体感が少ない
- 年間 100 万円程度の昇給は、業務量やストレスが著しく増える
ポイントは、リモートワーク・自由な時間・仕事の楽しさ
- 個々の評価基準や目標に合わせた挑戦や満足感が重要
- リモートワーク・自由な時間・仕事の楽しさは、幸福度へ大きく影響
幸福度への貢献が最も大きいのは「転職」
参考までに、年収・幸福度へ影響する事象をまとめたデータを掲載します。幸福度への貢献は「転職」「育休」「副業」「残業」の順に続き、「本業の査定結果」は、意外にも 5位でした。
▲「年収の変化に最も影響を与えた事象はなんですか?」のアンケート結果
年収への貢献が最も大きいのは「フリーランス」
年収への貢献は「フリーランス」「副業」「転職」の順ですが、フリーランス化による年収アップを実現したのは、わずか 4名。全体の母数としては「転職」が最も多い結果でした。
「生活の変化とお金の使い道に関するアンケート」調査概要
調査手法 |
インターネットでのアンケート |
調査対象者 |
Forkwell に登録する 20〜60代までのエンジニア300名 |
有効回答数 |
259件 |
男女比率 |
男性:230名
女性:25名
未回答:4名 |