目次
■キャリア戦略
2025.04.02 約6分
こんにちは。Forkwell の赤川(@Akira_Akagawa)です。ITエンジニアのキャリアや年収分について分析・登壇することを生業にしています。
本レポートは、DataChainのEM 新田さん(@t_shinden)から分析リクエストをきっかけに、調査したものです。
赤川さん、こんにちは!ITエンジニアの転職学、今回も楽しかったです。
1つ知りたい情報があって相談です。
エンジニアの年収の上がり幅について、よく平均や中央値だけで書かれたものは見るのですが、実際はリードエンジニアやEMなどのハイレイヤーの方が激化していて、上昇率が高いのでは?という仮説を持っています。
こうした情報はお持ちではないでしょうか。つまり、全体平均も上がっているだけでなく、上位層の上昇率の方が高かったりしないのか?を知れると嬉しいです🙏
筆者自身も興味あるテーマでしたので、さっそく調査してみました。その結果、この仮説は全年代で支持されていることがわかりました。特に40代のハイクラス層において顕著な伸びが見られました。一方で、ITエンジニアは市場価値が上がり続けていると言われることが多いものの、上位層でなければその恩恵を得ることが難しい構造があることも明らかになりました。
現代のIT業界でのキャリア形成を考える上で重要な示唆が得られましたので、ぜひお読みいただければ幸いです。
本レポートは、2018年から2024年にかけてのITエンジニアの市場価値(年収)の変化を年代別(20代、30代、40代)・パーセンタイル層別(上位5%、上位25%、中央値、下位25%、下位10%)に分析したものです。調査にあたって、2025年3月時点で Forkwell に登録するIT/Webエンジニアの匿名データのうち約1万7千人分を利用しました。
本レポートから得られた主要な発見と示唆は以下の通りです。
市場価値が継続的に上昇するエンジニア層と、あまり上昇しないエンジニア層の格差が拡大しており、スキルや専門性による分断が顕著になっていました。具体的には
特に20代上位層の市場価値が近年急速に上昇していました。具体的には
以下、具体的な調査内容です。
本調査は、ITエンジニアの市場価値がどのように変化しているかを定量的に把握し、キャリア戦略立案のための基礎データを提供することを目的として実施しました。特に従来分析されていなかったパーセンタイル層別の動向も含め、市場全体の構造変化を詳細に分析することで、より包括的な知見を得ることを目指しています。
ITエンジニアが転職サービス Forkwell に登録した際の年代別・年収データを2017-2019年、2020-2022年、2023-2025年の3期間で三ヶ月移動平均として収集し、同一年代・同一パーセンタイル層の市場価値(年収)の変化を分析しました。このデータは同一エンジニアの経時的な変化を追跡したものではありません。
※注記:本レポートで示す「年間平均上昇額」は、個々のエンジニアの昇給額ではなく、特定の年代・パーセンタイル層(例:20代上位5%)に属するグループ全体の市場価値の変化を表すものです。つまり、2018年時点での「20代上位5%」と2024年時点での「20代上位5%」は異なる人材で構成されている可能性が高く、この差分から算出した上昇額を、市場全体における各層の価値変動を示すものと解釈しています。
分析対象は以下の15グループです。
各グループの2018年から2024年にかけての市場価値(年収)の推移を分析した結果、以下の変化パターンが明らかとなりました。
グラフ1: 各グループの年間市場価値上昇額(2018-2024年)
表1: 各グループの年間市場価値上昇額(2018-2024年)
グループ | 2018年市場価値 | 2024年市場価値 | 6年間の上昇額 | 年間平均上昇額 |
---|---|---|---|---|
40代上位5% | 1000万円 | 1300万円 | 300万円 | 50万円/年 |
40代上位10% | 950万円 | 1100万円 | 150万円 | 25万円/年 |
40代上位25% | 800万円 | 900万円 | 100万円 | 16.7万円/年 |
40代中央値 | 605万円 | 700万円 | 95万円 | 15.8万円/年 |
40代下位25% | 500万円 | 540万円 | 40万円 | 6.7万円/年 |
40代下位10% | 400万円 | 420万円 | 20万円 | 3.3万円/年 |
グループ | 2018年市場価値 | 2024年市場価値 | 6年間の上昇額 | 年間平均上昇額 |
---|---|---|---|---|
30代上位5% | 950万円 | 1050万円 | 100万円 | 16.7万円/年 |
30代上位10% | 800万円 | 930万円 | 130万円 | 21.7万円/年 |
30代上位25% | 650万円 | 760万円 | 110万円 | 18.3万円/年 |
30代中央値 | 510万円 | 600万円 | 90万円 | 15万円/年 |
30代下位25% | 450万円 | 472.5万円 | 22.5万円 | 3.8万円/年 |
30代下位10% | 360万円 | 400万円 | 40万円 | 6.7万円/年 |
グループ | 2018年市場価値 | 2024年市場価値 | 6年間の上昇額 | 年間平均上昇額 |
---|---|---|---|---|
20代上位5% | 700万円 | 800万円 | 100万円 | 16.7万円/年 |
20代上位10% | 600万円 | 700万円 | 100万円 | 16.7万円/年 |
20代上位25% | 500万円 | 588万円 | 88万円 | 14.7万円/年 |
20代中央値 | 400万円 | 480万円 | 80万円 | 13.3万円/年 |
20代下位25% | 350万円 | 400万円 | 50万円 | 8.3万円/年 |
20代下位10% | 300万円 | 320万円 | 20万円 | 3.3万円/年 |
分析から、20代で上位5%、10%に属するエンジニアの市場価値は年間約16.7万円のペースで上昇していることが確認されました。これは同年代の下位のパーセンタイル層より高い上昇率です。特筆すべきは、40代上位5%層は年間50万円、同じ40代の上位10%層でも25万円と大きく伸びていることが明らかとなりました。一方、下位10%層はいずれの年代でも上昇率が低く、20代と40代では年間3.3万円にとどまっています。
※注記:ここでの「市場価値の上昇」とは、各パーセンタイル層に属するグループ全体の市場価値の変化を指し、個々のエンジニアの昇給を直接表すものではありません。例えば「40代上位5%層の市場価値が年間50万円上昇している」とは、40代上位5%という層の市場評価が年々高まっていることを意味します。
また、年代別・パーセンタイル層別の特性として、以下の点が注目されます。
同一年代内における上位層と下位層の市場価値格差の推移を分析した結果、以下の変化が確認されました。
表6: 同一年代内における上位層と中央値の市場価値格差
年代・比較対象 | 2018年の格差 | 2024年の格差 | 変化 |
---|---|---|---|
40代 上位5%vs中央値 | 395万円 (1000万円 – 605万円) | 600万円 (1300万円 – 700万円) | +205万円 |
40代 上位10%vs中央値 | 345万円 (950万円 – 605万円) | 400万円 (1100万円 – 700万円) | +55万円 |
30代 上位5%vs中央値 | 440万円 (950万円 – 510万円) | 450万円 (1050万円 – 600万円) | +10万円 |
30代 上位10%vs中央値 | 290万円 (800万円 – 510万円) | 330万円 (930万円 – 600万円) | +40万円 |
20代 上位5%vs中央値 | 300万円 (700万円 – 400万円) | 320万円 (800万円 – 480万円) | +20万円 |
20代 上位10%vs中央値 | 200万円 (600万円 – 400万円) | 220万円 (700万円 – 480万円) | +20万円 |
この分析から、40代上位5%層と中央値層の市場価値格差が著しく拡大している(+205万円)ことが確認されました。一方、30代や20代では上位層と中央値層の格差拡大は比較的小さいものにとどまっています。
各年代の上位層の市場価値を比較すると、興味深い格差の変化が確認されました。
表7: 上位5%層における年代間の市場価値格差の変化
比較対象 | 2018年の格差 | 2024年の格差 | 変化 |
---|---|---|---|
40代vs30代 | 50万円 (1000万円 – 950万円) | 250万円 (1300万円 – 1050万円) | +200万円 |
30代vs20代 | 250万円 (950万円 – 700万円) | 250万円 (1050万円 – 800万円) | 変化なし |
40代上位5%と30代上位5%の市場価値格差が急速に拡大している(+200万円)一方、30代と20代の市場価値格差は250万円と一定を保っていることが明らかとなりました。
表8: 上位10%層における年代間の市場価値格差の変化
比較対象 | 2018年の格差 | 2024年の格差 | 変化 |
---|---|---|---|
40代vs30代 | 150万円 (950万円 – 800万円) | 170万円 (1100万円 – 930万円) | +20万円 |
30代vs20代 | 200万円 (800万円 – 600万円) | 230万円 (930万円 – 700万円) | +30万円 |
上位10%層では、年代間の格差拡大は比較的小さく、40代と20代の間でも50万円の拡大にとどまっています。これは、上位5%層の格差拡大(+200万円)と比較して顕著な違いです。
表9: 下位10%層における年代間の市場価値格差の変化
比較対象 | 2018年の格差 | 2024年の格差 | 変化 |
---|---|---|---|
40代vs30代 | 40万円 (400万円 – 360万円) | 20万円 (420万円 – 400万円) | -20万円 |
30代vs20代 | 60万円 (360万円 – 300万円) | 80万円 (400万円 – 320万円) | +20万円 |
下位10%層では、年代間の市場価値格差はわずかな変化にとどまっており、40代と30代の間では格差が縮小(-20万円)さえしています。このことは、下位層ではキャリアの進展や経験の蓄積による市場価値の向上が限定的であることを示唆しています。
本調査結果から、各年代のエンジニアに対して以下のキャリア戦略が示唆されます。
20代で上位5%に属するエンジニアにとって、市場価値は毎年約16.7万円のペースで上昇しています。この傾向がいつ飽和して止まるかはわからないものの、労働人口不足からしばらくは続くことが予想されます。
※この「市場価値上昇」は市場全体における20代上位5%層の評価の変化を表すものであり、個人の昇給を直接約束するものではありません。しかし、この層に入り続けることができれば、市場の評価に応じた高い年収を獲得できる可能性が高いことを示しています。
現在20代で上位5%に位置するエンジニアは、以下の点に注目すべきです。
20代でまだ上位5%に達していないエンジニアにとっては、特に上位25%層(年間14.7万円上昇)と中央値層(年間13.3万円上昇)でも市場価値の上昇が見られるため、スキルアップによって上位層へ移行する取り組みが重要です。逆に下位10%層(年間3.3万円上昇)ではキャリア初期段階から大きな差がついてしまうリスクがあるため、早期の対策が不可欠です。
30代で上位5%に属するエンジニアは、市場価値が年間約16.7万円のペースで上昇していますが、40代上位5%層の年間50万円と比較するとまだ伸び代があります。市場価値をさらに高めるためには、以下の戦略が考えられます。
30代で中央値以下に位置するエンジニアは、30代下位25%層(年間3.8万円上昇)、下位10%層(年間6.7万円上昇)と、上位層との差が拡大していく傾向があります。この状況を打開するためには、以下の対策が効果的と考えられます。
40代で上位5%に属するエンジニアの市場価値は年間約50万円という顕著なペースで上昇しており、これは他のどのグループよりも高い水準です。ミドル後半のハイクラスなエンジニアの獲得競争は激化しており、市場価値が他の世代と比べても大きく上がっています。このグループに属するエンジニアは
40代で中央値以下に位置するエンジニアについては、特に深刻な状況が明らかとなりました。40代下位10%層の市場価値上昇は年間わずか3.3万円であり、上位5%層(年間50万円)との差は15倍にも達します。この層のエンジニアには以下の対策が緊急に必要です。
本調査の結果からは、パーセンタイル層ごとに異なる特徴と対策が導き出されます。
本調査の市場価値データからは、ITエンジニアのキャリア全体を通じた重要な示唆が読み取れます。
筆者は、今回のレポートのような、ITエンジニアの年収やキャリアを分析した動画を多数公開しています。興味を持たれた方は、ぜひ次のコンテンツもご視聴ください。
「ITエンジニアのための転職学 – 年収800万円の壁・1000万円の壁」
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「ITエンジニアのための転職学 – 年収800万円を超える能力値の振り方」
キャリアアップに必要な6つの具体的能力と、役割別の最適な能力バランスについて知りたい方に。伸び悩むパターンとその克服方法も詳しく解説しています。
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20代のうちに収入アップを実現する具体的手法と、年収を最優先したキャリア選択が、中長期的にどのような影響を及ぼすのか、実際の事例を交えて紹介します。
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