目次
■ライフワークとメンタルヘルス
2023.10.10 2024.06.19 約4分
エンジニアのメンタルリスクは一般職の3倍といわれます。「エンジニアの処方箋」シリーズでは、ITエンジニアが抱えるメンタルヘルスの問題に焦点を当て、キャリア不安や技術プレッシャーを軽減するために、医師や専門家による信頼性の高いアドバイスをお届けします。
身体の疲れは容易に自覚できますが、心の疲れは理解しにくいものです。過度な仕事のプレッシャーや将来に対する不安が積み重なると、心の疲れが体調不良を引き起こすことがあります。このような状態を「蓄積疲労」と呼びます。蓄積疲労とは、エネルギーが枯渇している状態。このエネルギーの補給とケア方法を理解することで、より健康で充実したエンジニアライフを送るための一歩となれば幸いです。
私たちは普段、平坦な道で転んでも、すぐに立ち上がれます。しかし疲労が蓄積している状態では、同じレベルのストレスでも、その影響と回復期間が通常の2〜3倍になることがわかっています。
転んでもすぐに立ち上がれる状態
私たちは社会生活の中で、嫌な人や嫌な仕事にも我慢しながら対処しています。この我慢にはエネルギーが必要です。疲労が蓄積していると、我慢の限界が来てしまい、イライラが爆発してしまいます。
頑張れば1段階までジャンプできてしまうため、本人も周囲も体調不良や心の疲れを把握できていないことがあります。この状態で仕事を続けてしまうと、心がポッキリと折れてしまうこともあるので、大変注意が必要です。
2段階疲労:職場で起こること
|
いわゆる「鬱状態」になることもあります。自責の念が強くなり、不安や無力感が増し、極度の疲労感や負担感を感じます。このような状態が続くと、仕事に対する恐怖や苦手意識がトラウマのように記憶されてしまう可能性があります。
3段階疲労まで進み、うつ状態になると、仕事へ復帰するまでに最低でも半年はかかります。自分自身のキャリアのためにも、心が折れないよう対策が必要です。
落ち込み期 | 3 – 6ヶ月 |
底期 | 1 – 2ヶ月 |
回復期 | 1 – 3ヶ月 |
リハビリ期 | 1年 |
元気なときには無意味だと理解できる「死にたい」という感情に制御が効かなくなります。風邪やインフルエンザと同じで「咳をしたら周りに迷惑だよな」と頭で理解していても、それで病気が回復するわけではありません。論理では変えられないのが “症状”です。では、どうすれば良いのでしょうか。それは疲労から抜け出すことです。
「仕事は楽しい」「そんなに大変な仕事じゃない」と考えるエンジニアもいるでしょう。しかし、楽しくても疲労は蓄積されます。しっかりと睡眠をとっていても、たまの徹夜やクレーム対応で疲労が「借金」として蓄積されることがあります。この「疲労の借金」は、すぐに返済される場合もあれば、蓄積される場合もあります。この「借金」が一定のレベルを超えると、心の健康に影響を与えます。
実際にハードワークのエンジニアに話を聞いてみると、その背後には仕事以外の要因が存在することも多いです。家庭やパートナーとの関係、そして特に情報過多の現代社会が、感情の消耗という形で疲労を引き起こしています。感情の消耗はエネルギーを大量に使用します。この点が実は最も大きな疲労の原因である可能性があります。特にSNSや動画コンテンツは、感情を高ぶらせる要素が多く、いわゆる「ステルス疲労」を引き起こします。このような微妙な疲労が積み重なると鬱状態に陥るリスクが高まるのです。
エネルギーを使う行為には、一見ポジティブに見える要素も含まれます。素晴らしい上司や同僚に認められたいという気持ちは、モチベーションを高める一方で、オーバーワークにつながるリスクもあります。自分自身に過度なプレッシャーをかけることで疲労が蓄積されたり、高い期待値に応えようとするあまり自分自身の限界を見失いがちです。良い環境であればあるほど、自分自身の疲労やストレスレベルに気を付ける必要があります。
キャリアの不安を解消しませんか?
キャリアにお悩みの方は、「Forkwell エージェント」をご活用ください!私たちが、無理に転職を勧めることはありません。エンジニアが転職のプレッシャーから解放され、自信を持って新たなキャリアを歩む手助けをお約束します。どの部分を強化し、どのように弱点を克服するのか、魅力的なポートフォリオの作成方法などをアドバイスいたします。
Forkwell エージェントに相談してみる(無料)自宅での仕事がダラダラと続くと、疲労が蓄積します。自分の時間管理に気を付け、必要な休憩と睡眠時間を確保することが大切です。
ストレス発散には大きく2種類存在します。自分が何に癒され、エネルギーを使わずにリラックスできるのかを見つけることが重要です。
癒し系 | ハシャギ系 | |
種類 |
|
|
メリット |
|
|
デメリット |
|
|
癒し系の活動を数日間続けることで、心と体のエネルギーを回復できます。この「おうち入院」は、疲労の借金を返す方法として有効です。
人間のサーカディアンリズム(生体時計)に基づく平均的な睡眠時間は約8時間15分です。この時間を確保することで、パフォーマンスが維持されることが研究で示されています。逆に、6時間しか睡眠を取らないと、パフォーマンスは2日間徹夜した場合と同等に低下します。しかし驚くべきことに、1日6時間しか睡眠を取っていない人は、自分が1日8時間睡眠を取っている人と同等のパフォーマンスを出していると自覚しています。これは非常に危険な状態であり、睡眠の重要性を再認識する必要があります。
多くの情報があふれている今、睡眠についての「こうあるべき」が多すぎます。その結果、期待値が高くなり、実際の睡眠時間がそれに届かないとストレスが増えることがあります。
熟睡した感じがしなくても、翌日活動できているならば、必要な睡眠は取れています。不安やストレスが高まると、眠りが浅くなることもありますが、それは体が自分を守ろうとしているサインです。
昼寝も全体の睡眠時間に含まれると考え、8時間近くの睡眠を目指しましょう。
特に年を取ると、睡眠の必要時間や質が変わることがあります。そのため、一概に「これが正しい」とは言えません。
誰かに自分の気持ちを話すこと、相談することは、重要です。エンジニアはしばしば自分一人で問題を解決しようとする傾向がありますが、鬱状態になると解決能力が低下します。その結果、極端な選択肢しか考えられなくなり、中間の選択肢を探るエネルギーがなくなります。
鬱状態になると、不安や対人恐怖が増し、相談すること自体が負担に感じられたり、デメリットばかりが目につき、相談することのリスクが過大に評価される傾向にあります。
状態 | 相談する | 相談しない |
自殺念慮あり | 26.1% | 73.9% |
自殺未遂経験あり | 48.9% | 51.1% |
鬱や自殺の男女比を見てみましょう。女性の鬱発症率は、男性の倍であるのにも関わらず、自殺数は男性よりも少ない傾向にあります。これは女性の方が「相談」が多い傾向にあるからです。
状態 | 男性 | 女性 |
鬱 | 1 | 2 |
自殺 | 2.5 | 1 |
*厚生労働省| 2007年国民健康・栄養調査より
2段階、3段階の状態にある人が感じているストレスや感情は、抑え込むだけで多くのエネルギーを消耗します。そのエネルギー消耗がさらなる精神的負担となり、悪循環に陥る可能性が高いです。
相談 = 問題解決 ではなく、感情のケアです。気持ちを吐き出すことが大切なのです。
問題が全く解決しなくても、感情を吐き出すことで「ストレスのコップ」が少しでも軽くなれば、その後の行動や思考が変わる可能性があります。たとえ5%しか軽くならなくても、その5%が「動ける」違いを生むことが多いです。水が溢れそうなコップから、ちょっとでも水を捨てることで、表面張力のように「動けない」状態から「動ける」状態に変わることがあります。この小さな変化が、結果として大きな効果をもたらすことがあります。
元気なときから、信頼できる人を見つけておくことが重要です。信頼できる家族、友人、同僚、先輩、カウンセラーなどを見つけておきましょう。
相談相手の価値観を理解しておくことで、相談がスムーズに進む可能性が高まります。例えば、何でも自助努力で乗り越えてきた人に相談しても、恐らく気合を入れられるだけで、逆に傷が深まる可能性があります。日頃から「人に対する価値基準」が自分と合うのか見極めておきましょう。
バーチャルな関係も有用ですが、生身の人との関係性が、特に厳しい状況で心の支えとなります。
日頃から人を助ける気持ちを持ち、行動にうつしておくと、いざ自分が相談側に回ったときも「前に助けたことがあるからな」と、相談ハードルを下げられます。
人間関係や仕事のトラブルが起きたとき、人間は自分の能力不足を疑ってしまいます。しかし「考え方を変えよう、何かをしよう」という発想を一旦保留し、エネルギーの回復に専念しましょう。
― ― 鬱の方から相談してもらうスキルや方法を教えてください。
A:アドバイスを控える
|
A:まず「不眠」に注意
|
― ― 過剰な要求、厳しい納期などエンジニア特有のストレスに対する解消方法はありますか?
A:仕事以外のすべてを楽にする
|
A:1週間程度、業務から離れて休む
|
A:物理的に環境を変える
|
― ― うまい立ち振る舞い方、気持ちの持ち方はありますか?
A:必要最低限のコミュニケーションでOK
|
― ― ダントツで優秀なエンジニアが昇進を機に鬱っぽくなり、彼の部下も立て続けに退職。組織としてどうすべきでしょうか。
A:上流で仕事量をコントロール
|
キャリアの “健康診断” しませんか?
あなたが自信を持てるようにサポートします!
無理に転職を勧めることはありません。まずはお気軽にご相談ください!
Forkwellエージェントに相談する(無料)