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■ライフワークとメンタルヘルス
2024.06.20 約4分
エンジニアのメンタルリスクは一般職の3倍といわれます。「エンジニアの処方箋」シリーズでは、ITエンジニアが抱えるメンタルヘルスの問題に焦点を当て、キャリア不安や技術プレッシャーを軽減するために、医師や専門家による信頼性の高いアドバイスをお届けします。
秋葉原にある「秋葉原内科Saveクリニック」の医師、鈴木です。ゲーマーで最近の楽しみは、スプラトゥーンのアップデートです。クリニック名の「Save」というのはゲームの「セーブポイント」から来ていて、安心や回復の拠点として機能したいという思いから名付けました。コロナ以降は、患者さんの8割から9割が心療内科の診療を受けています。PTSDの重い方、多重人格や解離性障害のある方なども診ています。メンタルヘルスに関する本をいくつか執筆しており、最近では「心療内科医が教える本当の休み方」を出版しました。ありがたいことに、ちょっと売れています。
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Forkwell エージェントに相談してみる(無料)エンジニアのメンタルヘルスは一般職の3倍と言われるほど、ハイリスクです。パーソルのリサーチによれば、ITエンジニアのキャリア不安には、他の職種に比べて「スキルの陳腐化」や「新しい技術を習得しなければならないというプレッシャー」が非常に多いことが挙げられます。IT分野は技術の進化のサイクルが非常に早いため、技術的なプレッシャーが大きく、キャリア不安に影を落とします。
本日は私が診察するなかでよく目にするエンジニアのストレス反応を4つ解説します。
オンライン会議やリモートワークに起因する疲労全般を指す “Zoom疲労”が、2020年代からアメリカで注目されています。例えば、ズームアップされた表情は人に認知負荷をかけ、圧迫感や恐怖感を与えることがあります。人間は生き延びるために無意識に他人の顔や表情に注目する本能があるため、ギャラリービューで多くの顔を見ているだけで疲労が増します。またオンラインは対面に比べ、神経学的に親しみを感じにくいこともわかっています。オンライン環境によるタイムラグが1200msを超えると、会話がぎこちなくなり、集中力や理解力、相手への親近感が低下するという研究結果もあります。
女性の方がZoom疲労を感じやすいことも明らかになっています。疲労度調査によると、男性よりも女性の方が約15%強く疲労を感じていました。大きな要因として「鏡の不安」が挙げられます。自分の顔が映り続けることがストレスとなり、認知コストを使ってしまうのです。
鏡の不安は、画面オフやミュートを活用することで負担を軽減できますが、こうすると今度はファシリテーター側の負担が増えるわけです。今、喋っていても、ウケてるのか滑ってるのか全くわからない(笑)虚空に言葉を投げているような徒労感があるんです。あらゆる点で「リモートワークはラク」は実は誤解であり、リモートワーク特有の疲労感を対策することが大切なのです。
「HSP」や「繊細さん」という言葉が流行したこともあり、繊細さ・過敏であることへの関心は高まっています。ここでいう「過敏である」というのはいろいろな捉え方があるのですが、今日はざっくり2つに分けて説明します。
他人の表情や顔色の変化などにとても敏感で、ちょっとしたことで傷つきやすい性質のことです。他人が怒られたり悲しんだりしているのを見ると、苦しく感じることがあります。また、周りの人が考えていることや望んでいることを雰囲気で感じ取ることができる人もいます。このような状態を「共感疲労」や「過剰共感性」と呼びます。つらい気持ちに共感しすぎたり、ピリピリしている人の近くにいることで、知らず知らずのうちに自分の心が疲れてしまうことがあるのです。
聴覚過敏は、身の回りの音が日常生活に支障が出るほど大きく聞こえてしまうことです。私もいま調査中なのですが、エンジニアやデザイナーは、どうもこの聴覚過敏の方が多い傾向にあるようです。聴覚過敏は、聴力のフィルターの機能不全によって生じると考えられています。他人が自分の耳の近くで話すと耳がキーンとなることがありますが、それよりも近い距離にあるはずの自分の声ではそのようにはならないのは、聴覚のフィルターが正常に働いているからです。しかし、ストレスや先天的な要素など、様々な要因でこのフィルターが調整不全になると、本来は危険を感じる必要のない音にも過敏に反応するようになります。大きな物音や特定の男性の声が苦手な人は、何らかのトラウマ的な背景があることが多いとされています。身体が危機モードやストレスモードに入っていると、周囲の些細な音にも非常に敏感になります。聴覚過敏があると、日常生活やコミュニケーションの中での疲労度が非常に高くなります。聴覚過敏の状態で電車に乗ると、疲労感が倍増します。
このような自律神経の調節障害が原因の聴覚過敏は、専門のセラピーやプログラムによって大きく改善することがあります。例えば、特定の音楽を聴くことでフィルターの調整不全が改善される治療プログラムがあり、エビデンスもあります。当院でもそのようなプログラムを提供していますが、症状が改善する人もおり、「こんなにうるさい世界で生きていたんだ」と感動する方もいらっしゃいます。
環境や周りからの要求や期待に完璧に応えようとすることを、過剰適応といいます。自分の内的な欲求を抑圧し、他人のニーズを優先しつづける状態ですが、こうした客先常駐など、アウェイな環境に適応しないといけないエンジニアの方は、こうした状況に陥りやすいのではないでしょうか。
過剰適応は、外的適応(周囲の期待に応えること)に対して、内的適応(自分自身のニーズに応えること)が著しく不足している状態を指し、日本人の2〜3割がこの過剰適応を経験しているとされています。強い責任感を持ち、自己犠牲的で優等生的な振る舞いをする人、完璧主義で他人の評価を気にする性格の人が典型的です。これは「メランコリー親和型性格」とも呼ばれ、うつ病になりやすい性格ともされています。過剰適応傾向が強まると、思考が硬直し、視野が狭くなります。本当は助けを求めた方が良いのに、それが見えなくなり、ますますストレスがたまることがあります。そして、最終的には心身の限界に達し、バーンアウトやうつ病に至ることがあります。
ファーストキャリア(初めての職業経験)における適応障害の背景にも、この過剰適応の問題があるでしょう。「学生」から「社会人」への急激な環境変化への適応を求められます。その過程で、仕事に一生懸命取り組みすぎて、過剰適応傾向が強まると、視野が狭まり、助けを求めることができなくなります。100%の努力をしなければならない、さぼったら評価が下がるといった恐怖が増し、ストレスがたまることでさらにパフォーマンスが上がる一方で、心身の限界に達し、最終的にはバーンアウトやうつ病に陥ることがあります。
過剰適応を繰り返してしまう心情の背景には、「フォーン反応」があることが珍しくありません。「フォーン(fawn)」は「小鹿」を意味し、小鹿のように相手の機嫌をうかがってへつらうことを指します。相手の要求に応え、喜ばせることで環境への適応を図るトラウマ反応の一種です。フォーン反応を持つ人は非常に優しく、親切な人と見られることが多いですが、内心では常に相手にとっての正解を探し、非常に緊張しています。
フォーン反応は、身の安全が他人の機嫌に左右される環境で育った人に見られることが多いです。例えば、機嫌の変化が激しい親、ちょっとした一言で怒る親、頻繁に喧嘩をする両親、アルコール依存症の親などのもとで育った子供は、自分の気持ちよりも周囲の大人の機嫌を優先するようになります。これは正当で合理的な防衛反応です。
自らの内的ニーズを無視して周りからの要求や期待に完璧に応えようとする態度は、職場においてとても重宝がられます。とりわけ、日本の「察する文化」は、この傾向を助長します。特に女性の方が、察する能力を求められる社会的要請がまだまだ高いと言えるでしょう。実際、女性の方が過剰適応傾向が強いという報告があります。
怒られることや批判されること、間違うことへに対する恐怖にがんじがらめになっているケースもみられます。実際に起こりうるリスクに対して、恐怖が過剰に大きい場合は、背景にトラウマティックな経験が隠れていることが多いのです。間違えたことに対し激しく怒られた経験、パワハラ、教育虐待的な厳しすぎる指導などがあると、その恐怖は体に刻み込まれ、何かミスをしてしまうかもしれない状況に置かれたり、業務上必要なフィードバックであっても、その刺激をきっかけに大きすぎる恐怖が引き出されてしまうのです。
もし、このような状態が長期間続き、同じテーマで苦しんでいる場合は、専門的な介入が必要かもしれません。内在化された監視者の存在によって、自分を過剰に追い詰める状況から解放されるためには、専門的なサポートが効果的です。
▼感情コントロールとトラウマの関係についての著書も参考にしてみてください。
では、ストレスとは悪なのでしょうか。
刺激が少なすぎて退屈な仕事ばかりやっていると、効率が非常に低下します。自分が本来持っているポテンシャルが発揮されず、退屈なことをやらされるのは大きなストレスとなります。この状態を「アンダーストレス」と呼びます。ハイパーストレスとアンダーストレスの両方を合わせて「ディストレス」と呼び、よろしくないストレスの状態を指します。ストレスは気圧のようなもので、適度にあると良いものです。適度な刺激がある状態が最もパフォーマンスが高くなるため、この点をぜひ覚えておいてください。
就活トラウマを抱えている人にとって、エージェントのサポートは非常に重要です。Forkwell エージェントは、適切なタイミングで休憩を勧めたり、安心感をご提供します。応募者がプレッシャーから解放され、自信を持って転職活動を進める手助けをします。エージェントのサポートがあることで、精神的な負担を軽減し、より良い結果を得ることができるのです。
キャリアチェンジの阻害要因として多いのが、度重なる不採用や圧迫面接などといった過去の就活における傷つき体験が影響しているパターンです。単なるマッチングの問題なのですが、何度もお祈りメール(不採用通知)を受け取ることで、「自分の存在そのものを拒絶されたかのような」感覚を積み重ねてしまう方も不思議ではありません。明らかにブラックな環境にいるのに辞められなかったり、休職中に資格の勉強などはできるのに、再就職のためのエントリーや面接に進むと一気にダウンしてしまう人などがいます。「またあのときのようなつらい体験を味わいたくない」という防衛反応が働くのです。このような「就活トラウマ」の影響を受けている人は少なくありません。その存在に気付かずに誤ったサポートを提供すると、かえって悪化させることがあります。
今回はカジュアル面談を含め長期に渡っていたので、正直疲れてくることもありました。お祈りメールが来たときなんかは素直に凹みますよね。Forkwell エージェントの赤川さんは「たくさん受けましょう!」「早めに行きましょう!」という提案ではなく、「行き詰まったら一旦休んだりすることも大切ですよ。」とアドバイスをくれたので、本当になんというかパートナーのように安心感がありました(笑)
引用元:転職エージェントガチャ、LR級 - Forkwell エージェント体験 Vol.2
▼鈴木先生の関連レポートもぜひ参考にご覧ください。
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