エンジニアの生き様をウォッチするメディア

「エンジニア採用『だけで』大事なことはない」安立沙耶佳(株式会社ヌーラボ)~採用担当×採用メディア×採用コンサル三者から見たエンジニア採用裏話

先日、株式会社grooves主催で「採用担当×採用メディア×採用コンサル 三者から見たエンジニア採用裏話」というイベントが開催されました。

第二回となる本記事では、株式会社ヌーラボの採用担当・安立沙耶佳さまの「エンジニア採用『だけで』大事なことはない」というテーマについてのレポートをお届けします。

▼第一回はこちら
「フロントエンドが足りないって、本当?」難波由夏(株式会社grooves)~採用担当×採用メディア×採用コンサル三者から見たエンジニア採用裏話

内定承諾率94% 採用単価は50万円

株式会社ヌーラボの安立と申します。WebではAngela(アンヂェラ)と名乗って活動していまして、同僚でも私の本名を知らない者は多いと思います。なので、今日は私が何者なのか、ヌーラボという会社はどういう場所なのかをお話しできれば幸いです。

私はリクルートキャリアで営業を経験した後、当時、新規事業として取り組んでいた「CodeIQ」というエンジニア向けのサービスサイトを作っていました。当時からForkwellさんはベンチマークとして、社内で拝見していました。

まずは簡単ではございますが、ヌーラボの説明をさせていただきます。ヌーラボは「Backlog」「Cacoo」「Typetalk」というサービスを提供しています。社員数は全体で約130名、日本に3拠点、海外に3拠点を置いており全体の6割が日本人、4割が外国人という構成です。日本では私1人が人事をやっていて、もう1人の人事がニューヨークにいるというちょっと変わった会社です。こういう配置なので全員が顔を合わせての打ち合わせは難しく、基本的にリモートで打ち合わせを行っています。

昨年、HR NOTEさんでこのような記事を掲載いただきました。

ヌーラボ「未経験人事」が、過去最多の採用数・内定承諾率94%・採用単価53万を実現できた理由
https://hcm-jinjer.com/media/contents/b-contents-saiyo-nulab0509/

こちらの記事では「94%の内定承諾率を保つ中途採用の秘訣」とあり、そもそも何人を獲得したのかという部分は秘密なのですが、割合としては、バックオフィス・マーケティング・エンジニアを1:1:3で採用していました。

だいたいどの年も、内定後に選考を辞退される方は年間で1〜2名しかいません。

創業メンバーや現開発部長が、JavaのフレームワークのSeasar2のコミッターだったので、使用言語はJavaが多いです。そのような背景もあり、社員にはサーバーサイドの人たちが多く、ここ数年でやっとフロントエンド専任の人材も採用したという状況ですね。そして、組織拡大に備えてバックオフィスも強化した、というのがここ3年ぐらいの状況です。

気にしているのは「内定承諾率」と「1分の1」

数字について取り上げていただくことが増えていますが、正直に申し上げますと数字は重視していないです。KPIはありませんし、KPIを報告しろと言われたこともありません。語弊がありますが、「自由に設計して採用活動を進めている」感じですね。

私が気にしているポイントは2つしかありません。1つは、内定承諾率です。承諾率は、高ければ高いほどいいですよね。そもそも内定を出す時点で、入社が決まっていないのは双方にとって時間の無駄だと思います。
 
もう一つは、1分の1ということです。よく「母集団形成」という言葉が使われますが、私はこの言葉が好きではありません。毎週、エンジニアと人事で採用ミーティングを行なうのですが、そこでも母集団がどうといった話はしないです。なので、ヌーラボのエンジニアも「母集団」という言葉を知らないかもしれません。

今日はエンジニア採用に特化したお話ということだと思いますが、個人的に思うのは、「エンジニア採用だけに大事なこと、ということはない」ということです。

売り手市場の今だからこそ、基本となる正しい情報を、正しい方法で、正しい相手に届けることが大切だと思います。

前職で営業をしていたときは、TMPが大切だと教えられてきました。

T:ターゲッティング
M:メッセージング
P:ポジショニング

この3つをちゃんと伝え、ちゃんとやりきる。基本に立ち返ることが大事だと思い、今までやってきています。

良い会社を作れば、採用活動はうまくいく

ヌーラボの採用プロジェクトですが、エンジニア採用がほとんどであり、採用面接はエンジニアにも見てもらうこともあり、私はエンジニアと毎週ミーティングをしています。

その採用活動の中で共通認識になっているのは、この優先順位です。

1.良い会社を作る
2.良い方法で伝える
3.良い採用活動をする 

基本的に、この順番通りに進めることが、採用成功への近道だと考えます。なので「採用活動から頑張る」「採用活動だけ頑張る」というのは違和感がありますし、そういうことはやりたくないね、と話しています。

採用活動自体を頑張ることには即効性がありますが、そこだけに注力してしまうと、選考の辞退率が上がったり、入社後の退職が増えてしまったりということもあります。また、そもそも良い会社じゃないと人は採れないと思います。

良い会社を作る、というのはすごく難しいことです。しかし、良い会社を作れば勝手に採用もうまくいくと思います。そのように長期でしか成果が出なさそうな取り組みであっても取り組ませてもらえるヌーラボには、とても感謝しています。

現在は採用の専任担当はいないので、採用広報から募集、受け入れまで、採用の全フローを人事が担当しています。開発部長もつきっきりで一緒にプロジェクトに取り組んでくれます。

「御社にとっての良い会社」を定義づける

では、良い会社づくりとは何でしょうか? これは会社によって定義が異なることだと思いますが、「御社にとっての良い会社」をきちんと定義づけることが大事だと思います。

これを決めること自体はめちゃくちゃ時間がかかりますので、あすからでもできる手っ取り早い施策をご紹介します。まずは、めちゃくちゃTwitterを見るということです(笑)

ヌーラボでは、とにかくTwitterを見ることが仕事です。仕事中も見ていますし、社内チャットよりTwitterのほうがリプライが早いということもあります(笑)

あとは、社内コミュニケーションをしっかり取ることです。エンジニアと毎日話しているのですが、彼らは生々しい情報をくれるんですね。最近、A社からスカウトがきたよ、など、情報は意外と社内にあります。

Twitterを見ていると、採用選考での体験談なども流れてきます。クレームも然りです。そこから、「求職者はこういうことを嫌う」という情報を得ています。人事でTwitterをやる方も最近は増えていますが、身元を明かして発信している人は多くないように見えます。ここをやるだけでも、かなり差別化できるのではないでしょうか。

Twitterを見ることで、他社情報を集めることができます。他社の情報を知って、自分たちの方向性を決め、微修正し、自分たちにとっての「良い会社」を言語化していくことが大切です。

社員全員がタレント化するような流れを作る

採用広報と言われている領域では、差別化がすべてだと思います。では、差別化とはどういうものでしょうか?それは、「情報の背景を伝える」ということだと思います。

「働きやすい」などの、聞こえの良いワードだけ入れて、その理由・背景である「なぜそれが実現できているのか」を書かない会社さんは多いのでしょうか。

背景の情報がなければ、「それは本当なのか」と思ってしまいますよね。実質的にウソと同等になってしまうぐらいだと思いますので、基本的にヌーラボはその背景の情報についてもめちゃくちゃ書き込んでいます。

例えば「フラット」という事実を伝える場合。この言葉だけだとあいまいですね。「経営陣とよく話ができる」とかなんですが、ヌーラボはそれに加えてフラットにするための会議体であったり、フラットを実現するためのチームもありますので、そういう部分を説明するようにしています。

背景情報の発信について使っているのは、ブログがメイン主です。Techブログについては私がディレクションしています。エンジニアは約70名ほどいますので、週一回1人を出すだけで1年かかります。今は、ヌーラボ内のBacklogを使って内でやりとりを行なっていますね。

発信のポイントを増やすことにも、ヌーラボはこだわっています。海外や県外の登壇費用をすべて支援するほどお金はないですが、登壇費用を補助する等の支援しています。 

また、社員が登壇することが決まったら、会社のブログやSNS等で広報し、社員全員がタレント化していくような流れを作るよう心がけています。

逆に、あえてやらなかったことは「社員インタビュー」です。タイトルで「ああ、こういうことが書いてあるんだろうな」ということがわかってしまうので、結果的にそれほど読まれないんですよ。人が増えてきた今だからこそ、注力してみようと思い始めました。

「面談だと思ったら、志望動機を聞かれる」問題

最近Twitterでよく見かけるのが、「面談だと聞いて行ったのに、志望動機を尋ねられた」というクレームです。ありがちですよね。おそらく、人事担当者と面談を担当する方のコミュニケーションミスで、ちゃんと連携ができていないんだろうなと思います。

ヌーラボはこのコミュニケーションにも気をつけています。週に一回、社員の誰もが参加できるミーティングを行ない、ミーティングの議事録も社内で公開しています。

また、ヌーラボの面談はすべてオンラインのみにし、省力化しています。実際にヌーラボに来社をお願いすると、往復1時間かかる方もいらっしゃいます。そうすると「そこまで話す内容が無いのに(1時間かけて来たので)もったいなくて長居をしてしまう」ということが起きます。双方にとって時間のロスになりますので、面談は基本的にオンラインで進めます。

逆に、技術面接については準備と実施にかなりの時間をかけています。面接時間は2時間です。また、前後30分ほどエンジニアと人事で集まり、「この人にはどういうことを、どういう角度で聞いて行くか」を打ち合わせしています。今は、このくらい準備をしないと不安で面接できないというくらいです。

最後になりますが、「どこの会社にとってもいいとは限らない変なこだわり3つ」と「断固として避けていること2つ」をご紹介して終わります。

●ヌーラボの変なこだわり(1):リファラルは頑張らない 

ヌーラボは、エンジニア採用に関しては直接会社のホームページからの応募の他は、ForkwellさんとWantedlyさんからしか採っていない状況です。

●ヌーラボの変なこだわり(2):面談のあとの選考フローをショートカットしない

●ヌーラボの変なこだわり(3):チャネルは増やさない

●ヌーラボが避けていること(1):母集団形成を避ける

●ヌーラボが避けていること(2):人事の〇〇専任担当を置かない

採用や採用広報にせよ、組織開発にせよ、会社のどの部署で誰がどのように仕事をしているのかわからない状況ではうまくいきません。

人事の一部の機能だけを専任して動くのではなく、全てのフェーズがわからないと採用もうまくいかない、という頑固なスタンスで(笑)進めています。今後、私以外の人事の方が入社したとしても、専任とかフェーズを分けたりせずに一緒にやっていこうと思っています。