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「アウトプットじゃなく、アウトカムを出したい」北野勝久(株式会社スタディスト)〜Forkwell エンジニア成分研究所

「伝えることを、もっと簡単に。」をミッションに掲げ、現在はビジュアルSOPマネジメントプラットフォーム「Teachme Biz」を開発・提供している株式会社スタディストさま。

※SOPとは:標準作業手順書(Standard Operating Procedures)

「学ぶ」「研究する」「人」という名前の由来に違わず、エンジニア陣にも学習意欲・向上心の高い人が多くそろっていました。

計4名のシリーズとなる初回は、SREマネージャーである北野勝久さん(@katsuhisa__ )に登場いただきます。

BtoBの業務改善プラットフォームを提供している会社です

――まずは、スタディストさんの会社紹介をしていただけますでしょうか?

北野 まず社名の由来から説明いたします。「スタディ=学習する、勉強する」という意味の言葉と、人を表す接尾辞の「イスト」。それを繋げて、「スタディスト」という社名になりました。

創業メンバーは全員が業務改善コンサルティングの会社にいて、製造業などのコンサルティングをする中で、内容を最終的に手順書というフォーマットに落とし込んで納品する仕事をしていました。

ただ、紙の手順書って読まれないし、使われないし、改訂もされにくいんですね。改訂するにしても、印刷のコストがかかる。

「オンラインで全て完結する、手順書のプラットフォームサービスが必要だろう」ということで、2013年にTeachme Bizをローンチしました。手順書を作ったり、共有したり、そうすることで、お客さま企業により大きな成果をもたらすBtoBのプラットフォームサービスです。

――今、どれくらいの企業さんに導入されているんですか?

北野 約2,600社に導入いただいています。大手企業様にも多く導入いただいていて、飲食・小売業界でよく使われているプロダクトです。

例えば全国に複数店舗あった時に、A店舗で作った手順書をB店舗、C店舗でも使いたい場合、Teachme Bizであれば、常に最新版の手順書がどこからでも見ることができて便利…といった利用シーンですね。

――デモ画面を拝見していますが、料理の作り方の手順とかも、動画でも表示されていますね。これはめちゃくちゃ効率が良いですね。

SRE(サイト・リライアビリティ・エンジニア)とは?

――北野さんは2016年8月に入社とのことですが、今はどういったお仕事をされていますか?

北野 SREチームのマネージャーをしています。

――SREとは「サイト・リライアビリティ・エンジニア」の略称ですが、具体的にどういう仕事なんですか?

北野 一言でいうと、サービスの運用をソフトウェアで改善することによって、信頼性を維持・向上していく仕事です。

例えば、従来の運用業務って、不具合が起きた時に「再起動が必要だ」「サーバの台数を増やそう」といった手動の対応で乗り切ったりすることが多いのですね。サービスが成長していくと、手作業の量がサービス規模に対して線形増加するわけです。そういった問題をソフトウェアで、効率化・自動化していくのがSREの役割のひとつですね。

――なるほど。サービスが大きくなっても、運用の手間は大きく増えないわけですね。その中で、北野さんはチームマネージャーをされているそうですね。

北野 はい。SREの開発タスクをどこからやるかの優先順位決め、あとはもちろん採用とか、メンバーの評価だったりとか、そういったところを担当してます。優先順位決めには、例えば、チームの最重要事項をOKRとして設定することをリードすることなんかも含まれます。なので、マネジメントの専門知識だけでなく、技術面での専門知識も活かすことができる仕事です。

また、SREチームは、信頼性向上によりお客さまに価値提供するだけでなく、運用業務を効率化するツールの開発を通じて、社内にいる開発者に対しても価値提供をします。なので、SREに閉じずに、開発チーム一丸となって、新しい文化を作ることにも取り組んでいます。

――新しい文化を作る?

北野 分かりやすいものだと「リリースの頻度を細かくしていきましょう」といったことですね。

例えば、デプロイ作業を手動でやっていたとしたら、リリースの度に作業依頼のやり取りが必要なため時間がかかりますよね。また、開発者の数が増えると、人の手がかかるのでスケールしづらい。リリースを自動化することで、開発者が作業依頼をせずとも自分たちでリリースをすることができます。結果、リリースを行いやすくなり、リリース頻度が増えるわけです。そして、顧客価値は積分なので、リリース頻度を上げることは、最終的にお客さまへ大きな価値を提供することにつながります。こういった一連の流れは、開発チームの文化が変わっていくことだと思うんですよ。そこに面白さを感じますね。

SRE本の日本語版(オライリー・ジャパンより出版されている『SRE サイトリライアビリティエンジニアリング――Googleの信頼性を支えるエンジニアリングチーム』)が発売されたのが2017年です。日本で本格的に話題になり始めたのは、まだまだ最近の話なのかなと。もちろん、それよりも早くSREの考え方を取り入れている企業様もいらっしゃいますが。日本でもまだ盛り上がりつつある段階だと個人的には思っているので、情報交換が活発なのもSREの仕事に携わっていて面白い点かもしれないですね。

前職で培った仕事への向き合い方

――大学時代に無機材料の結晶成長の研究を経て、新卒でインドのIT企業に勤められたとか。

北野 そうです。2014年から約2年間、インフラ・ミドルウェアのエンジニアをしていました。そこでは、ERPのシステム構築に携わっていました。

――その中で北野さんは、具体的にどういうことをやられていたんですか?

北野 まずは、システムの構築に関する全般の実装作業ですね。ミドルウェアのインストールにはじまり、データベースのパラメータを設定したり。

また、単に構築するだけでなく、システムの信頼性に問題がないかを検証することにも重点を置いていました。例えば、実際にデータベースに問題が発生した際に、正しく復旧できるかの動作検証を行ったり、システムの負荷検証を行ったりですね。

他には、周辺システムとしてバッチジョブの仕組みを構築したり、特定の運用業務を自動化するためのシェルスクリプトの開発なんかにも携わりました。

――「これが大変だったな」っていうエピソードってありますか?

北野 実際の業務に慣れるまでは、一つ一つの実装の背景理解に時間がかかり、仕事に時間がかかってしまうこともありました。今思い返すと、その時期はたいへんだったかもしれません。ゴールの見えないものと闘っている感覚というか。「yak shaving」という言葉もありますが、まさにそんな感じです。一方、エンジニアの仕事をしていると、この手の問題からは、避けては通れないのかな、とも思っています。なので、仕事への向き合い方を身につけるという意味でも、すごく良い経験でした。

当時のメンターがすごく面倒見の良い方で。すごくお忙しい方だったにも関わらず、毎朝、時間を使ってシステムの背景や技術知識についてレクチャーをしてくださったので、乗り越えることができました。

ソフトウェアで運用を改善する、という考え方がしっくりきた

――スタディストさんに転職しようと思われたきっかけは、何でしたか?

北野 2016年に、スタディストのメンバーとたまたま食事する機会がありました。その時にTeachme Bizのお話を聞いて、すごく面白そうだなと思って。また、代表の鈴木との面談で、自分が外から見て感じたTeachme Bizの課題を何個もぶつけたのですが、すべてに的確な回答をいただきました。そういった点に興味を持って入社をしたという流れです。

――前職に特に不満があったわけではなく?

北野 はい。まったくありませんでした。ただ、前々からスタートアップで働くことに興味がありましたし、BtoB SaaSにも興味があったという背景もあり。あとは、挑戦するチャンスを見つけたから、飛び込んでみただけ、という感じですね。 

――入る前と入った後で、スタディストさんのイメージに違った部分はありましたか?

北野 大きなギャップは無かったかもしれないですね。入った2016年当時は、「思ったよりもちゃんとしてるな」と感じたことを覚えています。表現を選ばず言うと、スタートアップって、もっとぐちゃぐちゃかと想像していたので。スタディストの場合は、私よりも前に入社したバックオフィスのメンバーがすごく優秀だった点が良かったのだと思います。

――その中で今SREチームに所属ということなんですけれども、SREに目覚めたきっかけはどういうところだったんですか?

北野 現在も、スタディストの技術顧問をしていただいている萩原さんとお話した時に「SRE」について教えていただきました。

スタディスト入社後は、Teachme Bizのバグ改修や新規機能開発をやったりと、ソフトウェアの実装にずっと関わっていました。なので、SREのソフトウェアで運用を改善する考え方がすごくしっくりきたんですね。当時、インフラに関わる業務を私が引き継いだばかりで、すごく苦労してたんです。だったらソフトウェアで運用、改善していくのに力を入れてやってみようと思いました。

「開発した結果、お客さまがどう変わったか」が大事

――業務を行なう上で大事にしているモットーや好きな言葉があれば教えてください。

北野 好きな言葉は、「確固不抜」です。意志を強く持って、決めたことをやり抜くという意味を持つ言葉です。

開発に限らないんですけど、業務って突然の割り込みだったり、いろんなイベントが起こるじゃないですか。そこに振り回されすぎると、いつまでたってもチームとして真に為すべきことに向き合えない。そのためにも、まず自分の意志を固く持つことを大切にしています。

――「半年後にこうなっていたい」という理想像はありますか?

北野 直近で、SREチームとしてはプラットフォームチームになることを志向していて。そこに向かうために、開発者自身で、運用までできるように、ツール群の開発だったりを行なっています。

そうすることによってSREチームはソフトウェアの実装に集中できますし、開発者自身が運用をすることで、お客さまへの価値提供によりオーナーシップを持ちやすくなる。そうすることにより、開発者の生産性を引き上げて、チームをより良い状態に持っていきたいなと。

あとは個人で言うと、チームを良い状態に保ち、改善を続けることにこだわってやっています。良い状態のチームって、仕事を実行していくサイクルと、新しいことを学んでいく学習のサイクルが良い循環で回っていると思っていて。そのリズムがあるか?をよく意識しています。

――ご自身の成長のために日々行っていることがあれば教えてください。

北野 大前提として、自分が成長したい方向性は時期によって意識して変えています。現在は先ほどお話しした良いチームを作るために、自分に不足していることのインプットに時間を使っています。

Re:Work」という、Googleが彼らの働き方に関する情報を提供しているサイトがありますが、「優れたマネージャーの要件を特定する」ことについて書かれたページがあるんですね。例えば、そこを参考にしながら自分に足りてないものを勉強したり…ということをやったり。

Googleに関する話でいうと、彼らの働き方やマネジメントについて書かれた『How Google Works』という本も、最近よく読み直しています。

あとは『ライトついてますか?』という、問題発見について述べられている書籍も、自分が何回も読み直している本ではありますね。

――87年の本なんですね。特にどういうところがお気に入りなんですか?

北野 仕事って、最終的に成果を出すことが大事だと思うんですよ。よく社内で話しているのは、アウトプットを出したいんじゃなくて、アウトカムを出したいってことです。

例えば開発をめちゃくちゃ速くこなすことも大事なんですけど、そうじゃなくて「開発した結果、お客さまがどう変わったか」がより大事だと思っていて。

そこのアウトプットとアウトカムの差にあるのは何かっていうと、課題を正しく発見して、定義して、アプローチできているか。『ライトついてますか?』には、そのための問題発見のエッセンスが書かれているので、良いなと思っています。

「どのチームも最高」って言える環境で働きたい

――ここからは、北野さんが働く上で大切にしていることについて、「事業内容」「仲間」「会社愛」「お金」「専門性向上」「働き方自由度」の6つの項目から合計20点になるよう、点数を振り分けていただきます。

・仲間:5

良いチームを作ること、良いチームで働くことを重視しています。なので、一緒に働く仲間は最重要です。良い仲間に囲まれたチームにいると学ぶ機会が増えるので、最終的にそれが専門性の向上にも繋がるんじゃないかと。

・事業内容:5

仕事で新しい技術的なチャレンジをするには、お客さまがちゃんと増えていったりだとか、事業がちゃんと成長していることがすごく大事だと思っていて。事業が世の中の役に立って、お客さまに価値提供できていないのに、とりあえず技術的なチャレンジをしようということには、たぶんならないと思うんですよ。お客さま・事業が、主にあると思っています。なので事業内容は5にしています。

・会社愛:4

会社という言葉自体はただの概念だと思っているのですが、会社愛っていうのは、他のチームへのリスペクトだと読み替えてスコアをつけました。そうすると、良いチームであること、良いチームで働きたい気持ちとかなり近いところにあるなと思っていて。それで、会社愛も同じように高く配分しました。せっかくどこかの組織に属するんだったら、どのチームも最高って言える環境で働きたいなと。

・働き方自由度:2

・専門性向上:2

・お金:2

逆にその他の項目は自分にとっては最重要じゃないというか、後からついてくるものだと思っているので、残ったスコアを配分しました。

――お金も働き方自由度もそれくらいと。

北野 優先順位の問題なんですけど、自分としては仲間、事業がより大事だなと。

――お金については最低限あればいいみたいな。

北野 それは言い過ぎかもしれないですが、そうですね。必要な人のところに必要な分のお金が配分されていることが理想だな、とは思いますけどね。

――自由度に関しても、別にそんなにリモートワークをしたいとかは思わない?

北野 はい。でも、できる方がいいなとは思いますけどね(笑)

――最後に、キャリアに迷うエンジニアの方に向けてメッセージをいただけますでしょうか。

北野 自分の方向性を定期的に考え直すのは良いかなと。自分が置かれた業界や業種、社会変化にまで視点を広げると、自分の立場を客観的に見られて良いかもしれません。

――自分のキャリアを見直す時に、北野さん自身はひとりで考えますか? それともいろんな人とディスカッションしますか?

北野 意思決定する前後だと、ひとりで考えるかもしれないですね。ただ、いろんな人と会話したことに影響を受けているはずで。なので、情報量が足りていないと感じる方は、人と話すことは第一歩として大事なんじゃないかな、と思いますね。

<了>

ライター:澤山大輔


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